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「セカンドライフ」が日本の本格サービス開始して来年で20年

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 本のために以下の二つの記事を書いたので、その流れでメタバースの元祖である「セカンドライフ」が衰退した理由と現在、将来について考えてっみた。


「セカンドライフ」が日本で本格サービスを開始して、来年で20年になる(2006年9月日本語クライアント提供)。

 久しぶりにセカンドライフに入ってみたら、レスポンスも良くコミュニティや場所への移動操作もわかりやすくなっていた。日本や世界のリアルな観光地が再現されており、以前よりも楽しめそうだ。

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 セカンドライフよりも前にも3D仮想空間はあったが、以下の4点で特別だった。

・ゲームのような特定用途ではなく、参加者が目的を決められる汎用的な空間

・利用者が3Dモデリングツールを駆使して、アバター、建物、アイテムなどを作成し、著作権を持ち、販売できる

・土地を自分の資産として購入、売買ができる

・仮想通貨(リンデンドル)を採用し、現実の通貨と交換できる本格的な経済システム

 現実の世界と連携しながらも、その制約を超えて仮想空間で活動できる、自由度と経済システムにより、2006年から2009年にかけて「メタバース」という概念を一般に知らしめた社会現象となった。

 また、トヨタ、ソニー、パナソニック、IBMなどの大手企業や、CNN、ロイターなどの主要メディアがバーチャル支店を開設したことによりビジネスや情報発信の最先端の場として認識され、ブームはさらに加速。

 私もIBM時代に世界中の施設やイベントに参加していた。以下は2008年にこのブログに書いた記事だ。

「セカンドライフ」を利用した社内全体会議でスピーチしてみた ~会場に入れない!

<セカンドライフ衰退の理由>

 セカンドライフは2009年をピークにブームが衰退した理由は、

  1. パワフルなスペックのパソコンが必要
  2. 何をすれば良いかわからない
  3. 企業にとっては人が集まらない(マーケティング効果がない)

 だと良く言われる (生成AI曰く)。

 確かにその通りだが、私が当時感じたのは、

1. SNSの登場

2. 3D FPSとしての期待への反動

 である。

<セカンドライフからSNSへ>

「世界中の人との新たな出会い、つながり」を求めてセカンドライフに入った人は非常に多かったように思う。しかし期待したほど新たな出会いはなかったし、確かにコミュニティはあったが、気軽にコミュニケーションできるものではなかった。そしてコミュニケーションする時にアバターを利用する意味に疑問を感じたのだ。

 当時、すでに日本では「mixi」というSNSが浸透していた。セカンドライフよりも、このmixiでの出会い、つながり(学校や広くても国内の狭い世界だが)の方が、よほど活発にコミュニケーションできた。

 そして、セカンドライフが活発に利用されているタイミングで、日本に本格的に入ってきた広大な人との交流ネットワークが、

・Twitter(ツイッター):2008年頃に日本でも急速に利用者が増え始めた。

・Facebook:2008年にサービスを開始。2010年から当時急速に普及し始めたスマホ版で利用が拡大

 だった。

 コミュニティのみをセカンドライフに求めていたが失望していたユーザーも、一気にこの「SNS」と呼ばれるプラットフォームを利用するようになった。

<ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)へ>

 セカンドライフというリアルな3D空間での新たなゲームに期待を持っていた人も多くいた。

 しかし、その期待は裏切られ、同時にCall of Dutyのようなリアルでストーリー性が高いFPSが登場することでセカンドライフからは早々に離れていった。

・Call of Duty 4 - Modern Warfare:ハリウッドの戦争映画のような演出と成長要素(レベルアップ、アンロック)を導入したマルチプレイヤーが特長で2008年に大ヒット。

・Call of Duty 4 - Modern Warfare2:ロシアの米国侵攻、ホワイトハウスでの戦闘、テロリストに潜入するミッション、リオデジャネイロのファヴェーラ(スラム街)での戦いなどのセンセーショナルで現実的なな設定により、2009年にメガヒット

<今後のセカンドライフ>

 今では3Dを利用したサービスは個人向、企業向に多数出ている。

 セカンドライフは、ゲームやSNSのように作られたところに参加するのではなく

・「ニッチ」な趣味、「マイノリティ」のコミュニティ

・「アバター」で多数の人が集まる

・個人が作成した「3Dの仮想的なもの」

 の3つの要素が意味をなす場面で、今後も使われ続けるだろう。

例えば、ある分野に特化した、

・展示会、カンファレンス

・ファッションショー

・音楽ライブ、音楽フェスティバル

・ニッチ趣味のコミュニティ

などが現在でもセカンドライフで行われている。

小規模なコミュイティとしては、

・お城好きが集まり、それぞれが城を作り、みんなで一緒に城ツアーを行う

・ニッチだが熱狂的なミュージシャンのファンクラブ向ライブ演奏と交流

・動物になりたい願望の人が動物のアバターで集まるコミュニティ

・特定の病気を持つ人が集まるコミュニティ

・新進気鋭アーチストによる絵画や写真のギャラリーと販売、交流会

・アニメのフィギュアの作成、鑑賞、販売

・デジタルファッションとして服や装飾品の作成、販売および現実世界での販売のマーケティング

・美術館やビル、公園などを設計および内覧会

なども活発だ。

 

 今後はAI機能をセカンドライフに導入していく予定だそうだ。今のようにニッチなコミュニティを維持しつつも、AIと人間が共存する新しい社会の実験場となっていくのかもしれない。

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