プレゼンテーションの基礎「PREP編」
私の会社での自分の存在価値、他人に負けない5つのコンピテンシー(現実の世界で実行可能な能力)の一つは「わかりやすく整理して口頭で相手に伝える力」=プレゼンテーション能力であると考えている。
私は他人より能力が劣る面を非常に沢山持っているが、プレゼンテーション能力を含めた5つのコンピテンシーでそれをカバーしている。
しかし、先日、Lotus Spring Forumで午後一番にセッション講師をしたが、私としてはかなり悪い出来であった。たった5つしかないコンピテンシーの一つが発揮できなかったのだ。 その理由は明白である。 必ず守っている基本を忘れていたからだ。
その基本が「PREP」だ。 これは皆さんが企画書や提案書の説明をするときにも役立つはずだ。
<PREPとは>
「PREP」は皆様もご存知の「Preparation (準備)」の略でなない。 P・R・E・Pの順に説明をするのだ。
P=要点、結論(Point)
R=理由、背景、根拠、効果(Reason & Reality)
E=具体的な事例、仮説(Example)
P=結論の再確認(Point)
ちょっとした説明や説得でも、P,R、E、Pの順に説明すると相手もわかりやすく
なる。
プレゼンテーションでは、最初にPで要点をはっきりさせることで、どのような視点・分野の話をするかが明確になり、視聴者は、その後の話しを、そのポイントに結び付けて頭の中で整理でき、
また「おそらく、こんなことを言うんだろう」と予測させ、予測したもの以外のものだけを覚えてもらうようにすることが出来るのだ。
また、Eの事例はとても重要である。これには3つの効果がある。
○説明内容を頭でイメージ出来ることで理解が助けられる
○P、Rで、どんなに素晴らしい論理を展開しても「絵に描いたモチ」と感じてしまう場合が多いが、例示により実現性を立証し、リアリティ(現実感)が醸成される
○経験を共有できることで、信頼関係が高められる
このように、視聴者に受け入れ態勢を作らせ、興味を持続させ、視聴者自身に内容を整理させ、実現性を確信してだくためには、PREPは非常に有効な方法である。
例えば(あまりいい例ではないが)、以下のように展開する。
P「今回は、Web2.0型コミュニティーの導入をご提案します」
R「貴社の今年の経営方針としている"自由闊達な企業への変革によるビジネス環境への柔軟な対応"と"社会的責任を果たせる経営のための現場の状況の見える化"を解決できる唯一の手段だからです」
E「例えば、○○社では、昨年、営業、商品企画、開発部門が、顧客の声を吸い上げて、それに対して自社の技術で商品化で可能かどうかを検討するSNSのコミュニティが作られ、1年間で5商品、11億円の売上げ向上を達成いたしました。 また△△社では現場の声を日報形式でブログに書いていただくことで返品された不良品がそのまま再利用されている問題や、組み立て工程における改善点が明確になりました」
P「このように、現在考えられる最良の手段は、ブログやSNSなどWeb2.0型コミュニティの導入が最良の手段であると確信しています。」
上記の例は思いつきで書いたが、それでも、PREPを使えば、それなりに説得力が出る。
<プレゼンテーション作成におけるポイントの明確化と時間の削減>
PREPにあてはめてプレゼンを作成するときには、ポイントを3つ程度に絞ることが重要になる。
ストーリーを一から考えながら作成しなくともPREPの順番で作成することで、作成時間も短縮されるはずだ。 PREPにそってその中身だけを考えれば良いので、中身も濃いものになる。
<PREPで説明時のプレゼン枚数と時間配分>
プレゼン全体を「PREP」の順に行うのだが、プレゼンが長時間の場合には、3つのポイントを最初に話して、それぞれのポイントの説明を「PREP」の順で話をすることもある。
その場合、パワポなどプレゼン資料はP,R、E、Pそれぞれ1ページ(一つのポイントで4ページ)とするのが基本だ。ちなみに、1ページの説明時間の目安を3分として考えると良い。
1時間程度のプレゼンの場合、PREPの前に"o"(オープン=挨拶、導入部)があり、ここで5分必要となり、締めで5分必要となることから、45分、50分のプレゼンではポイントを3つに絞るべきであることがわかる。 1時間のプレゼンでもポイントは3つか4つに絞るべきだろう。
プレゼンの基礎はPREPだということを説明したが、次回はプレゼンテーションが個性的で興味深いものとなるテクニックの基本である「+I、J」についてご紹介したい。