優秀なコンサルは解決策や具体的な戦略は提案しない
ある有名な大手戦略系コンサルタント(IBCSではありません)のプリンシパルと飲んだ。
大手の製造業では有名な方なのだが、一つ驚かされたのが「優秀なコンサルは解決策や具体的な戦略は提案しない」という言葉だ。もちろん、依頼内容の分野にもよるのが、基本は「何も提案しない」のだそうだ。
彼に出会う前(10年ほど前)の私のコンサルに対する一般的なイメージは、失礼ながら、
・分厚い分析資料を持ってくるが、中身は巷にある情報の寄せ集めで価値がない
・実現性の低い施策を提案
・そのコンサルタントにとって利益になる製品(例えばIT)や取引先(例えばSI会社)に誘導
・プレゼンテーションが上手であるが、はったりが多い
・一般的に良いといわれている戦略や考えを否定して、新しい視点での考えを提供する気づきを与えてくれるというパターンが多いが、絵に描いた餅であることが多い
だったが彼と出会ってからコンサルタントの認識が大きく変わった。
その彼が、「提案、提言はしない」と言うのである。 それではコンサルの意味がないではないかと聞くと(飲んだ席での話なので、正確に書けないが)
・結局、経営者層はコンサルからの提案を受け入れない(表面上受け入れても)
・経営者層がその経験による考え、信念を変えなくてはならない提案になることが多いが、経営者層は、それまで培われてきた成功体験、興味の分野、経営理念などとの食い違いから受け入れない
・提案を受け入れる場合もあるが中途半端にしか実践しない
・それらの経営理念などからの経営者層の判断、感性は、実際には正しいことも多い
・もちろん、経営者層の能力不足から受け入れられなかったり、中途半端にしか実践しないこともある。 結局は成功するかどうかは、経営者層の能力、感性、信念や現場の工夫にかかっている
・提案の論理的な正しさは、必ずしも現実の世界で成功につながるとは限らない
・自分で考えたもの以外は信念を持って実践しない。 関係する社員の工夫と情熱がないところに成功はない。
だから、コンサルとして最も重要なのは(コンサルタント会社や人によりスタイルが異なるが)、
「コンサルの対象となる事業やビジネスエリア(会社全体の場合もある)に関して、正確で、客観的な情報を整理(戦略立案する人にわかりやすい形)し、目を開かせ、クライアント(コンサル対象の企業)自身が情熱を傾けられるような戦略や新商品や事業アイディアを自ら創造し意思決定できる場をファシリテートする」ことだそうだ。
最初の客観的な情報の整理、提供以外にコンサル側で必ずやらなくてはならないものとして、「客観的な数字によるビジネスプラン(収益、投資、リソース計画など)の作成」がある。
「商品や事業の思い入れ、希望的観測、リスク回避の感情を排除した」客観的な数字で収益のForecastを立てたり、投資に必要な金額を算出することが苦手な場合が多いのでここは必ずコンサルとして行う必要がある。思い入れや希望的観測はビジネスプランを駄目にする。
お客様は商品や事業への思い入れや、失敗したときに自分にふりかかってくるやっかいごとへのリスクを回避するために「もっと売れるはずだ(こんなに売れないはずだ)」と言ってきたり、プロジェクトリーダーから「ここの数字がこの程度だと、このプロジェクトがなりたたないので、これぐらいにして欲しい(あるいは、この数字は感覚的に小さすぎる)」とか逆に「こんなに売れるという結果だと売上予算(Target)が大きくなるので小さくして欲しい」という話が出てくるが、コンサルとしては、客観的な数字と、論理的な手法での結果のみを資料として提出する。
また、コンサルにとって、文書化能力(表現力、スピード、整理手法)とプレゼンテーション(コミュニケーション)能力は重要だそうだ。 「どんな素晴らしい分析も、納期に間に合わなかったり、相手が理解できなければ意味が無い」からである。 理解できない相手が悪いのではない。
自分(事業)の置かれている状況を理解させ、自発的に腑に落ちる施策を作らせ、思い入れがあるからこそ出来ない部分を請け負うという考えを聞いて、コンサルタントと言われる人の役割の一部が理解できた気づきの時間となった。
私たちも、コンサルタントの役割、価値をもっと理解すれば、真のパートナーとして、もっと有効にコンサルタントを使え、コンサルタントに対する一部の悪いイメージも無くなっていくのでないだろうか。
p,s, 飲んだ席での話のため、しっかりと咀嚼して書けていませんが、ご了承ください。
*7月9日12:30 スペルミス、漢字の誤変換、誤字脱字を修正しました。