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社内報が伝える 「IBMのDNA」

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「創業以来IBMが大切にしてきた価値、特に「人」、、、、」
 これが、先月発行された日本IBMの社内報(物理的な紙)の書き出しであり、この号のテーマである。

 社内報と言うと、どうも形式的であたり障りのないイメージがあり、いまどき紙であることの意味も無いと思っていた。 しかし、転職組みで会社に対するロイヤリティ(忠誠心)の低い私の琴線に、この社内報は触れた。
 紙面は上半分が日本語下半分が英語で構成されているが、

・会社の魂とも言うべき歴史を現在のIBMers Value*と結びつけて解説
・会社が出している製品ではなく働く人にフォーカス
・会社の最も大きな課題に対しする背景と取り組み内容、意図を紹介

の3つを具体的に魂を込めて書いてあるからである。

 リクルート社が社内の文化作りに社内報をうまく活用していた話を聞いたことがあるが、優良企業には、必ずと言っていいほど良い社内報が発行されている。 その役割をブログが果たし始めているが、まだまだ、紙の効果にはかなわないだろう。 とはいえ、毎月のように紙で発行していては費用もリアルタイム性の面からも問題が多い。 日々、ブログで発信し年に1、2回程度、紙で発行するのが現実線なのだろう。

 さて、話を社内報に戻すと先に書いた書き出しの後、以下のように続く。
「IBMの歴史を紐解くと、IBMers Value*に継承される私たちの価値、DNAとも呼べるべきものを見出すことができます。 私たちはこれらの価値を大切にしながら、時代に合わせたイノベーションを続けてきましたが、これからも、私たち自身の変革にチャレンジしなくてはなりません。 一人ひとりの力が最高に発揮されてこそ、、、」

 通常、自社の歴史を書く場合、往々にして「〇年〇月 ****製品出荷」のような製品を中心になる場合が多いかと思うが、この社内報では歴史を語るときも人にフォーカスしている。

 例えば、社内の様々なところに「THINK」と表示されているが、私は今まで、この由来を知らず「とにかく考えろってことね」ぐらいに思っていた。 これについて以下のように紹介されている。
「、、IBMの創立者となるトーマス・J・ワトソン・シニアは、当時、キャッシュレジスターの会社であるNCRの販売・宣伝部門の責任者を務めていました。 彼は、その販売会議で次のように語ります。

 私たちが抱えている問題というのは、ものごとを十分に考えていないことに原因があります。、、、頭脳による労働で報酬を受け取っているのです。世界のあらゆる進歩は、考えることによって生み出されてきました。一方で『考えていなかった』ということが、この世界では実に多くの損失を生み出してきたのです

 そしてワトソンは、背後のイーゼルに向かって「THINK」と書いたのです。これが、「THINK」誕生の瞬間です。、、、」

 単に漠然と「考えよう」と思うのと、その当時の人の背景、魂を知って「考えよう」とするのでは大きな違いがある。 また、こういったものを写真と印刷された文字で読むことで、より強く訴えかけてくる。

 今、多くの経営者が企業文化の改革のためにVisonを社員に浸透させることに苦労している。 急成長している企業も、歴史のある多くの優良企業においても創業時の理念、文化の伝承に苦労している。 企業の成長が社員それぞれにかかっていることを知っているからこそである。

日本IBMの社内報「こんぱす」を見て、日本IBMの強さの秘訣と広報誌のインパクトを感じた。

 皆様の会社ではどのような広報誌が出ていますか? ブログの導入と共に一度見直してみてはいかがだろうか?

*IBMers Value: 単純に訳すとIBM社員の(お客様に対する)価値となる。 会社によっては社是、ビジョン、行動規範に相当すると思われる。 「IBMers Value」が一般的なものと違うのは、全世界のIBM社員が自分たちの価値がを問い、イントラネット上でディスカッションして社員自らが決定したという部分だろう。

**本記事での社内報(こんぱす)の引用は、社内発行元の承認を得ています。 社内報の写真の一部は社外に公開できないため、宇宙人の筆箱で隠してあります。

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