人の力が地球を救う、と希望を見出した2021年の幕開け
正月休み、同世代の女性リーダーの友人と語り合っている時に「財団を作りたい」という言葉が出て、天の声が聴こえた気がしました。個人の「次世代、恵まれない人もが幸せに暮らせるように力を尽くしたい」という思いが、世界中で共鳴しています。イベントづくしのこの1月、若者から年寄りまで、また地方から世界までをつなぐ力が、水面に落ちる水滴のように波及効果をもたらしているのを目撃しました。
地域と高校生が一体になる町、社会経済と人の新たな生態系
今週末は2020年度 立命館宇治中学校・高等学校 WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)研究報告会が開催されました。「未来のために現在を犠牲にしない」「未来は現在の延長」「自分の中の幸福度、自発的な学び、一歩飛び出すことを可能にする学校教育を」と、温かくも白熱した議論が続きました。
なかでも印象的だったのが、パネリストとして参加した愛媛県立三崎高等学校の教師、生徒たちの発表でした。それは「学校維持の危機に瀕する我が校が、この1年、高校生と町をつなぐさまざまなチャレンジができ大きな成果を上げた、良いことしかない」「高校3年間の中でこの1年が一番成長した」という、素朴でひたすら明るい声でした。高齢化が進む町の小さな高校に、全国から生徒を集めて新入生41人以上のラインを維持し分校化を回避しながら、地方創生を進めているのです。
分断を超えて、民主主義と世界の再興へ
今週1月20日は米国の第46代バイデン大統領 ハリス副大統領の就任式が開催されました。ちょうど4年前は、前トランプ大統領就任により、混乱と不安に満ちていたのを覚えています。同時期の1月に開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、ダボス会議の報告会でも、希望を見出しづらい重たい雰囲気が伝わってきました。
一転、今年の大統領選の結果と、就任式のスピーチには、未来に向けて違いを乗り越えようと協力を呼びかける力強いメッセージが込められていました。建国来200年の歩みを糧に、暴力や貧困といった不安を取り除き、愛、人道に基づく民主主義で世界に貢献できる国として国民が一致団結しよう、という壮大な展望を示しました。
ダボス会議はというと今年、過去50年の歴史の中で初めて、コロナ禍を避けるべく5月に延期、場所をスイスからシンガポールに移した開催に変更されました。そして1月25日~29日は「ダボスアジェンダ」として、オンラインでの記者会見やディスカッションに切り替えています。20以上のパネルディスカッション、80以上のアクション別セッションが、世界中のメディアに公開されています。
これは、ワールドマーケティングサミット(eWMS 2020)やワン・ヤング・ワールド(One Young World Tokyo Caucus 2020)同様に、世界的な善意の結集と知のムーブメント、「情報の民主化」とも言える、非常に画期的な出来事です。
ダボスアジェンダ開会に先立つ記者会見で、WEF創始者 兼 会長のクラウス・シュワブ氏は、「コロナ(Corona)」「気候(Climate)」「協力(Cooperation)」への注力を呼びかけました。今回、日本は菅首相が参加。世界のリーダーが手を携えてコロナに打ち勝ち、気候変動を止め、分断を無くすための戦略的な連携を推し進めようというメッセージです。GDPや利益一辺倒が見直され、ESG投資の基準の体系化も進行しています。世界の50%の経済を担うアジアの力や、世界でもっとも不公平な状況におかれたラテンアメリカなど、世界のさまざまな挑戦を2030年という目前のSDGsゴールに向けて束ねようとしているのです。
今年のダボスアジェンダに合わせてシュワブ氏は、WEFを代表してこの1年の未曾有の変化を振り返り、「Stakeholder Capitalism(ステークホルダー資本主義) A Global Economy that Works for Progress, People and Planet(成長、人のために機能する世界経済)地球」(英語)を上梓しました。
WEF創始者 兼 会長、「Stakeholder Capitalism - A Global Economy that Works for Progress, People and Planet」(ピーター・バンハム氏共著)を上梓したクラウス・シュワブ氏
これには氏の自伝も含まれています。1945年、ドイツの小学校に入学したシュワブ氏は、世界を巻きこむ戦争の虚しさ、平和の大切さを幼少にして学びました。それから経済復興と冷戦、グローバル化と世界システムの機能停止を踏まえ、コロナを超えてきちんと機能する世界への復興を率いているのです。
財は人のために、人は地球のために
今回、デジタルの力によってようやく会見に参加できたダボスアジェンダを通し、人の思いの無限の力を思い知ります。御年75歳の一個人が、人を巻きこんでWEFを創始し財団を作り、世界を良くする活動をしている。それは人間がつながり、互いを鼓舞し、地球社会を癒そうとするムーブメントの結晶です。
上述のワン・ヤング・ワールドの創始者、一般社団法人One Young World Japan Committee理事長 大久保 公人氏は、世界の若者をつなぐ活動のきっかけを「志をひとつにしてまとめ、託していくことで、若い人が地球を作る後押しをすることでインスパイヤが生まれる」と表現しました。「日本の価値がグローバルに貢献できる」「日本が世界とインスパイアできる」と力強く述べます。
おカネは使い方を間違うと不幸にすらなり得ます。そしてひとり、一組織が持ちうる財には限りがある。
それを世界に役立つ形にしたら、見える景色はまったく異なります。理想郷は創るものです。
人の力が地球を救う、と希望を見出した2021年の幕開けでした。