『全国高校生SRサミット~FOCUS~』Z世代の高校生から学んだこと
10月、11月はイベントたけなわ、コロナがその勢いをすさまじく加速しています。ワン・ヤング・ワールド「Tokyo Caucus 2020」、ワールド マーケティング サミット(eWMS)に続き、高校生がSDGs課題解決に取り組む『第3回 全国高校生SRサミット~FOCUS~』に参加。Z世代の真価を目の当たりにしました。
Z世代がけん引する地球の課題解決
11月14日~15日 、立命館宇治中学校・高等学校主催『第3回 全国高校生SRサミット~FOCUS~』がオンライン開催されました。2日にわたり国内外65校、370名に上る高校生、70名の社会人メンターやオブザーバーたちと約20名の国際学生が参加。考える力をを伸ばす課題解決型学習、いわゆるプロジェクトベースドラーニング(PBL)を実践。まさにZ世代、瑞々しい高校生コミュニティのPR力が国境を超えて弾けました。世代、国境を超えたグローバル人材のコミュニティ
今年3回目を迎えたFOCUSは「Forum On Creating Unified Societies」の頭文字。 高校生が社会課題に取り組み、様々な人と混ざりながらひとつにまとまる社会を創るための場として実施されています。
初めて社会人メンターとして参加した筆者はさかのぼること7月、運営にあたる先生方に説明を伺いました。 WWL*推進機構事務局/国際センター教諭 水口貴之氏の「当校のゴールは、イノベーティブなグローバル人材育成を目指す教育」「わたしはその二期生として今ここで教鞭を取っています」という言葉に胸を打たれました。
*参照:一般社団法人日本経済連合会 「Society 5.0 に向けて求められる初等中等教育改革 第二次提」P14 コラム10:WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業
とはいえ、最初から運営がスムーズだったわけではない。過去2年かけて形作ってきた学習イベントは、目まぐるしく変わるコロナの状況をにらみながら見直さざるをえず、最終的にすべてオンラインに変更。その間、運営メンバーや学生リーダーたちが学校や講師、参加者の調整はもちろん、地区や国ごとのインフラ環境の違いを超えながら、直前まで四方八方手を尽くして開催にこぎつけます。
そのFOCUS実施前の3週間は、FOCUS WEEKとして多様な外部スピーカー講演を実施。いわば思考回路の準備です。端緒となる10月25日日曜日、MITメディアラボ教授 石井 裕氏(英文略歴)が発する時代や世代を超えたマグマのようなパワーを浴びた後、平日の夜、約4日置きに社会人講師が登壇。タイガーモブ株式会社 代表取締役CEO 菊地 恵理子氏、株式会社リクルート 経営企画室 Ring事務局長 兼 事業開発部部長 渋谷 昭範氏、タクトピア株式会社 代表取締役 長井 悠氏、特定非営利活動法人very50 代表理事 菅谷 亮介氏 が、それぞれの生き様、岐路、痛みや苦労を乗り越えた歩みを吐露。高校生のFOCUSディスカッションに役立つフレームワークなど、知恵を共有しました。
FOCUS本番では、アイ・シー・ネット株式会社の芦田 加奈氏が、プロジェクトとは何か、その定義と進め方を高校生にひも解き、ファシリテーションしました。混ざりあって軌道修正するアジリティ
混ざりあいが強みになる、インクルージョンの実践
FOCUSがユニークなのは、メンバーの混ざり合いです。参加校ごとに社会課題を選び、その解決のための議論および発表に参加するのはバラバラな他校生。各チーム7~8人のうちリーダー以外は、 そもそも「どういう背景、理由でそのトピックを選んだのか」「何を目指し、何がしたいか」の原体験を共有しない状態で集まります。しかも今年は視覚、聴覚など五感の情報が少ないオンライン会議。
わたしが参加した 英語グループ2チームはいずれも、フィリピン各地の高校生とともに社会課題解決の方策を考えます。 時差もある中、 互いの名前、地名もきちんと発音できない、わからないことだらけ。同世代が焦る気持ちを押さえ、手探りでできるところからことからもくもくと準備。学校の合間を縫って日程を合わせてオンライン会議に集まり、プロジェクトの輪郭をつかみながら議論します。
高校生と何十歳も年の離れたメンターの私ですら「えーっ、どう進むんだろう」「どこでまとめるんだろう...」と不安を覚えながら伴走。一方で疑問もありました。 生徒の発言や質問に棒読みが多い。社会人講義ではプロジェクトの「型」を教える時間が比較的多く、「頭でっかちにならないか」という思いが頭をよぎったのです。
戦略や技を磨いた上で、最終的には人間が人間を動かすマーケティングやPRの現場では「フレームワーク使ってるとダメになるぞ」が合言葉。 手段に走りゴールを見失う、本末転倒にならないか、という警告です。スマートなデジタルネイティブ世代は、戸惑いながらもツールはスムーズに使いこなす。そんな姿を見ると、心や感性の成長がついてきているのか最初は不安になる場面もありました。
もうひとつ気になったのが、依然として高い日本の言語の壁。英語チームのメンバーですら、「英語は日常語でない」「英語が不安」と漏らします。高校生の時点で、一歩日本の外のコミュニティでは、日本語が通じないということを痛いほど思い知るのです。
大人の杞憂、Z世代の希望
しかしFOCUSは素晴らしかった。
それは大人の杞憂でした。「守破離」という言葉のとおり、高校生たちは教わった型やパターン、テンプレートを使って、それぞれの時間をやりくりして課題を深掘り。複合的な社会環境を踏まえて、 他者の視点を取り入れ、どれも素敵なプレゼンテーションを成功させました。 高校生の6分間プレゼンテーションに、周りから2分間質疑応答の真剣勝負でした。
わたしがいちメンターとして本番前日から当日にかけ、見守り役として高校生たちに伝えたのは、「答えなんてない、楽しんで」「英語でこまったらAIでも使って、大切な時間はディスカッションや発表準備、肝心なことに使って」「棒読みしない、情熱を表現して」といった点。限られた時間の中でも、守から破に進化してもらえたらという思いからでした。そんなわずかなアドバイスでも、各チームは鮮やかに自走して、拍手が湧く発表を聞かせてくれました。
Z世代の真摯さ、柔軟さが端的に表れたのは、課題設定から発表までそれぞれのジャンプ。一方は最初のテーマを ブレずに 突き通し、実体験に基づくきめ細かいハッとするようなプレゼンをしたチーム。他方は、課題をブレイクダウンしてもっともインパクトの強い点に絞り、まったく違う最終発表に転換させたチーム。ひとつひとつのチームが輝いていました。
最後に、FOCUSを支援する大人同士からの学びも大きかった。高校生がプレゼンテーション作成中、2時間の教職員セッションに参加。探求学習について議論、成果の取りまとめのワークショップを行いました。教育という長期投資、人間相手の真剣勝負がライフワークの教職員からは、まさにその共通項を持つPR会社、ビジネスコミュニケーションという異分野に身を置く自分自身が、人として吸収する点が多くありました。やはりどの道でも真摯なプロフェッショナルから学ぶことが多い、と実感しました。
そんな個性がいかんなく発揮されるよう、閉会式の後に設けられたPRタイム。この炸裂ぶりは激熱でした。数週間前まで棒読みをしていた高校生たちが、生き生きと自分の声を取り戻し、ほとばしる熱量で「はいっ、はいっ!」 「インスタフォローお願いします」「いいねしてください」 と自校の取り組みをアピール。メンターからも高校生に向けた熱いエールが共鳴。筆者も忘れずに応援の声を上げました。
今後また、プロジェクトの進捗を発表するオンライン イベント「AFTER FOCUS」が企画されています。
世代、組織、国を超えた社会課題解決、マーケティングとPRの実践の場が、FOCUSに活きているのです。
Z世代に力をもらう私たち。ひととひとをつなぐ大切な出会いに感謝です。
参考記事:MarkeZine 「人と機械の共生を模索せよ」来年出版されるコトラーの『マーケティング5.0』、共著者が内容を紹介
参考文献:一般社団法人日本経済連合会 「Society 5.0 に向けて求められる初等中等教育改革 第二次提」
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取材協力:共同ピーアール株式会社