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US-VISITと電子パスポートの微妙な関係

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echeckin01 ちょっと古いニュースになりますが、AP通信が6月15日(米国時間)に配信した「U.S. confirms delay in biometrics passport requirements」という記事によれば、電子パスポート導入が予定通りに進んでおらず、さらなる猶予が必要であることを、米司法長官のAlberto Gonzales氏が認めるような発言を行ったというものです。米国では2001年の9・11テロ以降、US-VISITというプログラムの下に、米国への旅行者の出入国管理を厳格に行うということを定めています。最近渡米された方ならわかると思いますが、両手人差し指の指紋と顔写真を撮影するようになったのも、このUS-VISIT導入によるものです。またビザ申請者は、一部を除いて全員が米国大使館での面接が必須となっています。日本人はビザ免除プログラム(Visa Waiver Program:VWP)の対象となるため、一般旅行者にはあまりピンとこない話ですが、シンガポールを除く他のすべてのアジア諸国は観光のためだけでもビザの申請が必要になりますから、US-VISIT導入は米国への入国の大きなハードルとなります

そして次なる課題として米国政府が取り組んでいるのは、パスポートの電子化です。生体情報などを組み込んだチップ入りのパスポートを各国に導入してもらい、それでさらに審査を厳格化しようというものです。技術的な部分は微妙なのでコメントしませんが、少なくとも現行のパスポートよりは偽造のハードルは高くなるでしょう。手始めとして「VWPを使って入国する旅行者は、全員が電子パスポートを所持していること」という指針を立てました。つまり、「いますぐ全部のパスポートをチップ入りのものに交換しろ」といっているわけです。最初のデッドラインは2004年でした。準備期間が1年あるかないかという状態ですから、当然各国は反発します。「じゃ、1年間だけ猶予をあげよう」ということで目標が再設定されました。それが今年2005年の10月26日です。

普通に考えれば、これも無茶な話であることはすぐにわかるでしょう。パスポートの有効期限の残存期間を考えても、5~10年のスパンで段階的に行うべき話です。それを1~2年足らずで完了させようというのですから、必ず無理が発生します。VWP対象国の多い欧州を中心に、多くの国がこれに抵抗しています。現在、米国を対象としたVWP国は全部で27つあります。27ヶ国が完全に歩調を揃えるのは難しいですよね。この記事によれば、欧州側では2006年8月に目標を再設定するように提案しているようです。個人的意見では、これでも難しいと思います。各国ともに、決して消極的なのではなく、現実的な移行プランを見据えているという認識が正しいでしょう。日本でも、指紋や虹彩などの生体情報を記録した電子パスポートの導入に向けて、真剣な話し合いが進んでいる段階です。おそらくは、2007~2008年でようやく……というレベルなのでしょうね。こうしている間にも、現行方式でパスポートが次々と発行されています。

vancouver01 電子パスポートは管理側のメリットばかりが浮かびそうですが、利用者側にももちろんメリットがあります。生体情報を記録しておけば、盗難パスポートの悪用というケースは減るでしょう。記録された生体情報が万能とは思いませんが、2重のチェック機構のように動作させることは可能だと思います。さらにバラ色の未来図を描くなら、空港でゲートを通過するだけで入国審査が完了させることも可能です。電子パスポートに仕込まれたチップがゲートと無線通信を行うことで、ゲート通過中に旅行者の審査を行うというものです。以前にカナダのバンクーバー国際空港を取材した際、こういったシステムの計画があるという話がありました。

ただ、その取材帰りにバンクーバー空港での出入国審査で2時間以上待たされ、あやうく飛行機に乗り遅れかけたり、無駄に長い質問を浴びせかけるような審査風景を見ていると、システム化への道は程遠いのかなという気がします。また、カナダのトロント国際空港でのE-チケットカウンターの利用率が1割を切っているという話を聞いていると、まだまだ効率化への道は険しい気がします。そういえば、先日のSupercomm取材関連でシカゴからトロントへ移動する際、せっかくE-チケットカウンターを使ったのに、パスポートの情報をすべて手入力させられ、さらに「正規の搭乗券は人のいるカウンターで受け取ってください」というメッセージが最後に表示されたときには殺意を覚えました(当然有人カウンターはすごい行列です)。国際線とはいえ、これでは無人カウンターの意味はゼロです。

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