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アメリカンドリームの行方

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いまみなさんは、「シリコンバレー」という単語を聞いて何を思い浮かべるでしょうか? 「IT技術者あこがれの刺激的な土地」という人もいれば、「もうすでに終わった場所」という方もいるかもしれません。ITバブルと大不況という2つの時代を経て、このシリコンバレーも以前とは違った趣を見せ始めています。いろいろな見方はあるでしょうが、個人的感想でいえば、昨今の状況は「シリコンバレーがよりシリコンバレーらしくなっている」ということでしょうか。

私の住むサンフランシスコも、広義でいえばシリコンバレーの一部でしょう。一般には、サンフランシスコ南部にあるサンノゼ周辺を指してシリコンバレーと呼ぶようですが、ことシリコンバレーらしい企業を探すとすると、私の住むサンフランシスコから、その対岸にあるオークランドまで、サンフランシスコ湾を中心とした「ベイエリア」全体にまで散っています。今回ご紹介するSalesforce.comという企業も、サンフランシスコに本拠を構えるシリコンバレー企業です。同社は、2004年夏にIPOを果たし、アメリカンドリームを体現した企業の1つとして名を馳せています。

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アメリカンドリームというと仰々しいですが、Googleとともに、沈没するかに見えた米国IT景気に再び火をつけた役割を考えれば、それほど大げさな表現でもないかもしれません。同社は、私の知る限りエンタープライズ向けASPというビジネス・モデルを初めて成功させた企業であり、現在も急成長を続けています。CRMをASP形式で提供する同社のビジネス・モデルは、ユーザー数が増加すればするほどそれが利益につながるというメリットを持っています。

同時に顧客にとっては、面倒なソフトウェアの導入作業がなく、手軽に素早く利用を開始できるだけでなく、システム運用やトラブル対策にかかるコストや時間的ロスを縮小し、Salesforce.comによって自動的にアプリケーションをアップグレードできるという特典があります。先日は、米ニューヨークで新製品の「Customforce 2.0」に関するローンチ・イベントを開催し、同社CEOのMarc Benioff氏が自ら2005年第1四半期(1-3月期)の純利益が前年比で10倍増加、新たに大口顧客として米Merrill Lynchを迎え、大手SIの米Accentureとの提携を報告しています。CRMの分野では、米Siebelを筆頭に、独SAPや米Oracleなどがライバルとして挙げられますが、ASPという点でSalesforce.comが他を圧倒しています。最近も、各方面から同社の好調ぶりが伝わってきています。

ちなみにですが、ここに掲載した2つの写真は、同社のイベント取材の際に撮影したものです。上が米国のシンボルである自由の女神、下がタイムズスクエアからビルを眺めた様子です。米国をテーマにしたBlogで明るい話題を始めようとしたとき、この2つの写真の組み合わせはなかなかいいものではないでしょうか。

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さて、このSalesforce.comですが、実は私と同社との付き合いはかなり長いです。同社の米本社は1999年設立ですが、2000年に日本オフィスが開設された際、私が以前所属していた@ITとはお隣同士で、オフィススペースを共用していました(同じ投資会社から投資を受けていたのです)。横の連携はあまりありませんでしたが、米Salesforce.comがIPOに成功したときには、古くからの友人が成功した様子を見ているようで嬉しかった記憶があります。現在も、同社オフィスは私の家から徒歩15分程度の立地にあり、直接的なつながりはないとはいえ、身近な印象を受けています。同社は6月21日にサンフランシスコ市内で新製品(Summer '05)のローンチ・イベント開催を予定しており、そちらもあわせて今後も定期的に情報をウォッチしていく予定です。

また先週は、米イリノイ州シカゴで開催されたSupercommと、米Cisco Systemsの紹介でカナダ国内の同社クライアントの事例取材を行ってきました。こちらは通信業界の話ですが、だいぶ景気が回復してきている印象を受けました。特にクライアントの設備投資意欲が盛り上がっており、次世代IPネットワーク構築に向けて売り手側も新製品やサービスを必死にアピールしていました。個人的には、ITバブル崩壊で一番被害が大きかったのが通信業界と、前述の米Salesforce.comに代表されるCRMなどのビジネス・アプリケーション業界だったと考えていますが、こうした動きを見る限り、一時期の悲観的な状況からは脱したのかな、という感じです。


こうした話題が身近にあり、自らがそのアメリカンドリームを体現する一員となる可能性を秘めているのがシリコンバレーの魅力でしょうか。まずは挨拶という感じですが、これからは定期的にニュースを取り上げたり、トレンドを紹介したり、ITには直接関係なくてもサンフランシスコの身近な話題を集めるなど、さまざまな形で楽しんでいただけるものをご用意させていただくつもりです。

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