富士通の変革プロジェクト:「フジトラ」と人事改革
富士通は2020年10月から、デジタル時代に対応し、IT企業からDX企業へと転換することを目指し、「フジトラ」(Fujitsu Transformation)と呼ばれる全社的なDX・デジタル変革プロジェクトに取り組んでいます。
フジトラは、「事業/顧客」「経営/マネジメント」「オペレーション」「人と組織」の4つの変革領域を軸に、経営のリーダーシップ、現場主導、カルチャー変革をデジタルやデータを有効に活用しながら進めることで、パーパスドリブンな企業への変革を目指しています。
富士通における人事改革の目的と内容
フジトラの4つの変革領域の1つ「人と組織」において、社員一人ひとりの意識改革と行動変容に注力しています。そのために、従来の人事制度を抜本的に見直し、社員の自律性と主体性を促進するため、以下のような人事施策を展開しています。
- ジョブ型人事制度の導入: 職責に基づいた報酬体系を導入し、 グローバル共通の基準で職責を格付けすることで、社員の役割を明確化し、自律的なキャリア形成を促進しています。
- ポスティング制度の拡充: 社内公募制度を大幅に拡大することで、社員に自らキャリアを形成する機会を提供し、挑戦意欲を高めています。
- Purpose Carving(パーパスカービング)の実施: 個人のパーパスと会社のパーパスとの接点を見出す対話プログラムを通じて、社員一人ひとりが自身の仕事の意味や価値を認識し、モチベーションを高めることを支援しています。
- Connect(新たな評価制度)の導入: 従来の目標管理評価制度を見直し、個人の成長と会社のビジョンを一致させることで、社員のやる気を高めるようにしています。
人事施策による成果
これらの施策は、以下のような成果に繋がっています。
- 社員の自律性と主体性の向上: ポスティング制度の拡充により、多くの社員が自らキャリアに挑戦するようになりました。(2024年時点で累計27,000人以上が応募)
- エンゲージメントの向上: Purpose CarvingやConnectの導入により、社員の仕事に対するモチベーションや会社への愛着が高まりました。
- DX人材の育成: 全社員をDX人材へと育成するための教育プログラムを展開し、DX推進を加速させています。
- 新規事業創出の活性化: 新規事業創出プログラムを通じて、社員の挑戦を奨励し、イノベーションを促進しています。
- グローバル人材マネジメントの統一: グローバルで統一された人事制度を運用することで、人材の最適配置と公平な評価を実現しています。
過去の反省を踏まえた今回の施策の特徴
富士通は、バブル崩壊後の1993年に成果主義を導入しましたが、年功序列の文化が残る中で適切に運用できず、社内は混乱し、業績も悪化しました。この経験から、今回は単に制度を変えるだけでなく、社員の意識改革、行動変容を促すための様々なプログラムを導入し、全社的な変革を推進しています。
特に、Purpose Carvingは、社員一人ひとりに自身のパーパスと向き合う機会を提供することで、会社全体の目的意識を共有し、変革へのモチベーションを高めることに成功しています。これは、過去の成果主義導入の失敗から得た教訓を活かし、社員のエンゲージメントを重視した結果と言えるでしょう。
フジトラの今後の展望
フジトラは、富士通をデジタル時代に対応したDX企業へと転換するための重要なプロジェクトです。人事施策は、この変革を支える基盤であり、社員の自律性と主体性を促進することで、持続的な成長とイノベーションの実現を目指しています。
今後、これらの施策の効果をさらに高め、社員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境を整備していくことが、フジトラの成功、そして富士通の未来を左右する重要な鍵となるでしょう。
フジトラから私たちが学ぶべき教訓は、「DXにはデジタル以外にやるべきことがある」ということです。むしろ、「DXを成功させるには、デジタル以外に注力すること」であり、それは、「変革の当事者である社員の自律性と主体性を促進すること」にあると言うことかも知れません。
不確実性の高まる今の世の中で、企業は変化に俊敏に対処できる能力が、求められます。そのためには、組織の意志決定のスピードを上げることも大切ですが、現場に大幅に権限を委譲し、即決・即断・即実行を許容することです。それを支えるのが、社員の自律性と主体性です。フジトラは、そこまでも見据えた取り組みであると言えるのかもしれません。
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