変革はカタチから入れ、そのカタチは経営者しか作れない
ITの最新動向を社員に学ばせ、新しい事業の機会を生みだしてほしい
最新ITトレンド研修のご依頼を頂くに際し、経営者や研修担当者からこのようなご意向を伺うことがあります。しかし、このような性善説、あるいは他力本願で、いま起きている変化を乗り切ることは難しいでしょう。むしろ、若い人たちが、"真実"を知ってしまい、自分たちの現実とのギャップを知ることになれば、会社へのエンゲージメントを下げてしまい、転職を促すきっかけにもなりかねません。
「まずは、自分たちの会社をどのような方向に向けるかを考えてはどうでしょう。そして、それにふさわしい、組織や人事制度、業績評価基準や事業目的などへと作り直すべきではありませんか。」
このようなことを考えるのが経営者の仕事ですから、他人にとやかく言われる筋合いではなく、僭越なこと甚だしいわけです。ただ、このような議論を抜きにして、最新ITトレンドを一般教養として社員に話をしたところで、実効性がないこともまた明白です。
ITのトレンドやこれからのビジネス戦略についての「いまの常識」を知ることに意味がないとは思いません。ただ、全社員一律である必要はないと思います。向上心を持つ人が、自ら求めてこそ、仕事やキャリアに活かすことができます。ただ、ここで知識を得ても、これを活かせる場を会社が提供できなければ、社員のモチベーションは上がりませんし、変革が進むこともありません。
変革の先陣は、経営者が担うべきです。しかし、漠然と「変革が必要だ」とか「DXに取り組もう」といった精神訓話を語っても、業績の改善にはつながりません。危機感を煽ったところで、「この会社はヤバそうだから転職しよう」となりかねません。特に行き場のある若い人たちは、そうなる可能性は高いでしょう。
具体的な事業施策を示すことです。例えば、時代の変化に即した事業戦略を示し、その上で、それに即した組織の変更、業績評価制度や雇用制度などを変えることです。仕組みを変えて、社員にわくわく感というか、チャレンジすることが自分の成長や仕事の充実感につながることを分かりやすい形で示すことです。何をすれば、自分は評価され、収入が増えるのかをオープンに示すことです。
次のようなことは、そろそろ辞めたほうがいいかもしれません。
- 社員の人数を前提にした工数積算で売上目標を設定する
- もはや価値のなくなった公的資格で会社を箔付けする
- デジタル化とDXの区別が曖昧なままに世間に迎合してDXを叫ぶ
- 人事考課の基準が不透明で、情実で評価する余地を多分に持っている など
2016年、経済産業書は、「2030年までにITエンジニアが最大で79万人不足する」との予測を示しました。確かに、2021年ごろまでは、そのような状況だったように思います。しかし、ここ数年は景気後退やスタートアップ投資市場の冷え込みなどの影響で、エンジニア人材の不足は、それほど深刻ではありません。
また、各社の採用条件についても「何としてでも採用目標人数を必達したい」という2021年ごろまでの状況から「会社のために貢献できる人ならすぐにでも採りたいが、少しでも迷うなら採らない」という企業が増えてきているそうです(エンジニアTypeの記事より)。
私は、いまもエンジニア人材が不足していることは確かだと思います。ただ、それは、絶対数ではなく、「いま必要とされているスキルを持つ人材」ということです。だから、そういう人材を育て、あるいは、そういう人材を活かした事業を進めてゆけば、ビジネスのチャンスはあるわけです。
DX、生成AI、クラウドなどの普及と拡充により、これまでのビジネスを支えてきた前提が変わってしまうことは、もはや避けられません。だからと言って、社員にそれらを学ばせ、自発的な変革を促すなどと悠長なことを言っているときではありません。時代の変化は加速しています。経営者がこの現実を理解し、変革の陣頭指揮に立つことです。そのためには、経営者がまずは、現実を正しく学ぶことです。そして、この現実を真摯に受け止め、自社の道筋を考え、社員にこれを示すことではないでしょうか。
経営者が叫ぶ変革が、あまりにも社員に期待しすぎてはいないでしょうか。社員を変革に向かわせるには、組織や制度、業績目標といった、経営者にしかできない変革から取り組むべきです。その前提としてのパーパスや戦略を時代の変化に合わせて変えることです。
そういう環境があれば、精神論で叱咤激励しなくても、細かく指示や命令を与えなくても、社員は自律的に学び行動します。
「変革」とは、そんな取り組みではないでしょうか。現場に危機感を煽り、新しいことを学ばせたところで、経営者がやるべきことをやらずして、変革などできないことをもっと自覚すべきように思います。
実践で使えるITの常識力を身につけるために!
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日 開講)
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日[水]開講)の募集を始めました。
次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
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ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
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※神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。
- 期間:2025年2月12日(水)〜最終回4月23日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
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- 内容:
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