ITの観点から見たDXの「あるべき姿」/私はいま何をしているのか 私はどこへ行くのか
今週は、"ITの観点から見たDXの「あるべき姿」"と題して、考えを巡らせてきました。ITに関わる仕事をされている方たちにとって、この「あるべき姿」を知ることは、自分の仕事の尊厳、あるいは、プライドに関わることだと感じたからです
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
フランスの画家ポール・ゴーギャンが1897年から1898年にかけて描いた絵画のタイトルとして、ご存知の方も多いのではないでしょうか。このような深遠な問いに、人は容易に答えを出すことはできません。
我々はいま何をしているのか 我々はどこへ行くのか
せめて自分がいまやっていること、それが自分たちの未来にどのような「あるべき姿」をもたらすのかについては、考えるべきでしょう。
ITかどうかにかかわらず、いまやっていることが、自社の経営や社会に、どのような影響をもたらすか、そもそも何のためにやっているのかを知るか知らないかでは、気合いの入り方も違うはずです。また、いま自分は何を学び、どんなスキルを磨けばいいのかを考える機会を与え、自分の成長やキャリアの道筋を見出すことにも役立つでしょう。
DXという言葉が登場し20年が経ち、ビジネス界隈でも盛んに使われるようになって10年ほどが経ちました。そんな時間を経た言葉にもかかわらず、いまだに「IT化」や「デジタル化」と区別されずに使われています。この現実に疑問を持ち、「自分ならこう答える」と言い切れることが、「DX」という言葉を他人に語れる最低限の条件であり、矜持であろうかと思います。
ITに関わる仕事をしているならば、さらにITという視点から、この言葉を正しく理解しておくべきは当然のことです。
ITは、手段に過ぎません。しかし、その手段は極めて強力です。だからこそ、それを任されている人は、その役割や価値を正しく理解し、適切に使うための思考力と判断力が問われているのです。誤った使い方をすれば、「プッチンブリン出荷停止事件」に見られるような経営を左右するほどの大問題にも発展しかねません。自分が、何のために、何をしているのか、それが事業や経営に与える影響はどれほどのものなのかを考え、その答えを追い求めることは、仕事を任されているものの責務でもあるのです。
もちろんそれは、そのITを使用する当事者もそうですが、その使用を支援する外部のITベンダーやコンサルもまた同様の責務を担うことは言うまでもありません。
確かに、ITに関わるテクノロジーの発展や適応範囲の拡大に追いつくことは、容易なことではありません。DXもまたその洗礼を受け続けており、最適な「ITという手段」も新しいものに置き換えられ続けています。ただ、いかなる「あるべき姿」を目指すのかについては、大きくぶれることはありません。本連載で伝えたかったことは、この点です。
改めて「あるべき姿」の要点を整理すると次のようになります。
リアルタイム・フィードバック・ループを完成させること
不確実な時代には、企業は計画的な成長に頼るのではなく、変化に即応できる「俊敏性」を身につける必要がある。そのためには、リアルタイムな状況把握と即時の対応・改善を繰り返す「リアルタイム・フィードバック・ループ」が不可欠であり、その中核となるのがERPシステムである。周辺技術としてIoTやデジタル化、AIが有効となる。
ビジネスをITの制約から解放すること
従来のアナログ時代の業務手順を前提としたレガシーシステムは、最新テクノロジー活用や迅速な環境適応を妨げる。これを打破するには、コンテナー、サーバーレス、マイクロサービスなどを用いたモジュール化と、アジャイル開発、DevOps、クラウドを活用した新陳代謝の高い「モダンIT」へと再構築し、変化に柔軟に適応する能力を獲得する必要がある。
これが絶対の正解かどうか分かりません。ただ、この問いかけを自分なりに批判し、考察して、自分の言葉で再定義することで、自分なりの答えを探し求めることが大切なのだと思います。
私はいま何をしているのか 私はどこへ行くのか
あなたはこの問いにどう、答えられるでしょうか?これを問い続けることは、プロとしてお金を頂くもののプライドであることを忘れるべきではありません。
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