ICT=牛肉がのっかっている牛丼
今週もまたITに関わる「言葉」について、掘り下げてみようと思っています。まずは、「デジタタル」と「IT」と「ICT」というド真ん中の言葉です。
「デジタル(Digital)」とは、「離散量(とびとびの値しかない量)」を意味し、「アナログ(Analog)」すなわち「連続量(区切りなく続く値をもつ量)」と対をなす概念です。ラテン語の「指(Digitus)」が語源で、「指でかぞえる」といった意味から、離散的な数、あるいは数字という意味で使われています。
現実の世界は、全て「アナログ」です。例えば、時間や温度、明るさや音の大きさなどの物理現象、モノを運ぶ、誰かと会話するなどの人間の行為もまたアナログです。しかし、アナログのままではコンピューターで扱うことはできません。そこで、コンピューターで扱えるデジタル、すなわち0と1の数字の組み合わせに変換する必要があります。このプロセスが、「デジタル化」です。
そんなコンピューターを実現するための技術、例えば、半導体やストレージ、センサーや通信回線、アルゴリズムやプログラミング言語などの技術を総称して「Information Technology(IT):情報技術」と呼びます。
ITにはCommunication:通信 の意味も含まれていますが、これをあえて強調するために、ICT=Information & Communication Technology」という表現も使われています。両者は、基本的には同じ意味です。
かつては、省庁によってもIT とICTは使い分けられていました。例えば、経済産業省では、コンピューター製品やその技術に関わる産業を担当するので「IT」を使い、総務省では情報通信産業を担当するので「ICT」を使っていました。ただし、両者には、明確な区別はありません。
2000年に日本政府が「e-Japan」構想を打ち出し、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(通称「IT基本法」)を成立させました。当時は、ITを使っていましたが、2004年に「e-Japan」構想を「u-Japan」構想に改正した頃から、ICTを使っています。
ここからは推測ですが、政府がICTを使うようになったのは、「業界への配慮」ではないかと思います。元々は、「IT基本法」というように「IT」が使われていました。しかし、これでは、経済産業省の管轄の電子機器産業が優遇されているような印象を与えかねません。情報通信産業を管轄する総務省としては、バランスが悪いという印象があったのではないかと思われます。
政府は特定の産業に肩入れすることはできません。そんなこともあって、両者を包括できる言葉として、その後「ICT」に変更されたのではないかと想像しています。
ただ、個人的には、「ICT」は気持ち悪いと思っています。本来、I=Informationを辞書で調べると、「情報、案内、伝言、通知」という意味が記されています。つまり、C=Communicationに相当する概念も含まれています。
CをIとTの間に挿入することで、「通信」の意味を強調しようとしているのですが、これは、「牛肉がのっかっている牛丼」や「トンカツがのっかっているカツ丼」と同様に、冗長ではないかと感じています。
これについては、私の主観にすぎません。ただ、こんな私的な思いこみのせいもあって、「ICT」は使いにくいなぁと、個人的には思っています。
【募集開始】次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)
次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。
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