【図解】コレ1枚でわかるDevOpsとSRE
第1章 DevOpsとは?
~ビジネスを加速させる「協力の文化」~
1-1. DevOpsを一言でいうと?
DevOps(デブオプス)とは、「開発(Development)」と「運用(Operations)」が密接に連携し、協力し合うことで、システムやソフトウェアの価値を「より早く、より確実」にユーザーへ届けるための取り組み(手法や文化)のことです。
単なる技術的なツールの導入だけでなく、組織のあり方やマインドセットを変革することを指します。
1-2. なぜDevOpsが必要なのか?(アクセルとブレーキの関係)
これまで、多くのIT現場では「開発チーム」と「運用チーム」の間に、目に見えない「壁」がありました。
- 開発チーム(Dev)のミッション: 新しい機能をどんどん作り、ユーザーに届けたい。「変化」を求めます(車のアクセル)。
- 運用チーム(Ops)のミッション: システムを安定して稼働させ続けたい。トラブルの原因になる変更を嫌がります。「安定」を求めます(車のブレーキ)。
この「変化」と「安定」という相反する目的のために、両者の対立が起き、リリースの遅れや品質低下を招くことがありました。
DevOpsは、この壁を取り払い、「ビジネスの価値をユーザーに届ける」という共通のゴールに向かって、アクセルを踏みながらも安全にハンドル操作を行うための仕組み作りです。
1-3. DevOpsの真の目的:変化への即応性
DevOpsの最大の目的は、「ビジネススピードの向上」、すなわち「俊敏性の獲得」です。
現代の市場は変化が激しく、ユーザーのニーズは日々変わります。1年かけて完璧な巨大システムを作るよりも、「まずは動くものを作り、ユーザーの反応を見ながら毎週改善していく」ようなスピード感が求められます。
- 従来: 3ヶ月に1回、大規模なアップデートを行う(失敗した時のリスクが大きい)。
- DevOps: 毎日、少しずつ改善をリリースする(失敗してもすぐに直せる)。
このように、市場の変化や顧客の要望に対して「俊敏(アジャイル)」に反応し続けることが、企業の競争力を維持するために不可欠となっています。
1-4. アジャイル開発・クラウドとの関係
DevOpsを語る上で欠かせないのが、「アジャイル開発」と「クラウド」です。これらは三位一体の関係にあり、どれか一つが欠けてもビジネススピードは最大化されません。
- アジャイル開発(思考・計画): 「何を」作るかを柔軟に変えながら開発する手法。変化に対応する「頭脳」の役割。
- DevOps(実行・配送): アジャイルで作られたものを、自動化された仕組みで「即座に」ユーザーの手元へ届ける手段。スピードを実現する「手足」の役割。
- クラウド(基盤・環境): 単なる「場所貸し」ではありません。クラウドの本質は、インフラ構築を「コード(プログラム)」として記述・管理できる点にあります(これを IaC: Infrastructure as Code と呼びます)。 サーバーやネットワーク構成をコード化することで、ボタン一つで複雑な環境を自動構築したり、全く同じ環境を何度でも正確に再現したりできるようになります。これがDevOpsの自動化を支える「土台」となります。
アジャイルで素早く計画しても、届ける仕組み(DevOps)がなければユーザーは待たされます。そして、DevOpsで自動化しようとしても、それをコードで制御できる環境(クラウド/IaC)がなければ、結局は手作業が残りスピードは出ません。これらが揃って初めて、真のスピードが生まれるのです。
第2章 SREとは?
~「信頼性」と「スピード」を両立する具体策~
2-1. SREを一言でいうと?
SRE(エス・アール・イー)とは、Site Reliability Engineering(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング/サイト信頼性エンジニアリング)の略称です。 Googleが提唱したシステム管理の手法であり、一言で言うと「Webサイトやアプリが『当たり前に使える(信頼性・安全性)』状態を保ちながら、新しい機能を『素早く(俊敏性)』届けるための仕組み」のことを指します。
2-2. DevOpsとSREの関係
よくセットで語られるDevOpsとSREの関係は、以下のように整理できます。
- DevOps(思想・文化): 「開発と運用が対立せず、協力して価値を届けよう」というスローガンや文化。
- SRE(実践・実装): 「じゃあ具体的にどうやるの? エラーバジェットや自動化ツールを使ってこうやろう」という具体的な実装方法。
Googleは「SREとは、DevOpsの実践方法(クラス)である」と表現しています。つまり、DevOpsという理想を実現するための具体的な手段の一つがSREです。
2-3. SREのアプローチ:門番から「ガードレール」へ
第1章で触れた「開発(攻め)」と「運用(守り)」の対立を、SREは根本から変えます。「変化を止める」のではなく、「安全に変化し続けられる仕組み」を作るのです。
自動車(F1)で例えるなら:
- 開発: より速く走るために、最新のエンジンに載せ替えたいドライバー。
- 運用: 事故を恐れて「スピードを出すな」と言うのではなく...
- SRE: 「ここまでは攻めても死なない」というガードレールや、自動ブレーキシステム(仕組み)を整備する役割。
最大の価値:「相談」から「自律」へのシフト SREを導入すると、明確な安全基準(ガードレール)が設けられます。これにより、開発者は運用担当者に都度お伺いを立てなくても、「基準を守れているから、今すぐリリースしよう」と自律的に判断できるようになります。
2-4. 判断のモノサシ:「エラーバジェット」
「どこまで攻めて良いか」を決める具体的なルール、それが「エラーバジェット(エラーの予算)」です。
「100% 完璧を目指さない」という戦略 SREは「稼働率100%(絶対に止まらないシステム)」を目指しません。コストが莫大になり、新しい挑戦(変化)もできなくなるからです。 代わりに、「99.9%動いていればOK(=0.1%は止まっても許容する)」という目標をビジネス側と合意します。この残りの0.1%を「失敗しても良い予算(エラーバジェット)」として扱います。
- 予算が余っている時: 多少のリスクをとっても、新機能をガンガン投入してOK。(攻め)
- 予算を使い切った時: 新機能の追加はストップ。システムの安定化に専念する。(守り)
このように、「データに基づいて、攻めるか守るかを客観的に判断する」ことで、無駄な議論や忖度をなくします。
2-5. 具体的な活動内容(テクノロジーによる解決)
SREは精神論ではなく、エンジニアリング(技術)で課題を解決します。
- トイル(Toil/苦役)の撲滅と自動化 人間が手作業で行う定型業務(バックアップ確認や再起動など)を「トイル」と呼び、徹底的に嫌います。「同じ作業を繰り返すならプログラムを書く」という精神で自動化し、創造的な業務に時間を使います。
- システムの健康診断(オブザーバビリティ) 「サーバーが動いているか」だけでなく、「ユーザーが快適に使えているか」を常に監視し、異常があれば自動で検知する仕組みを作ります。
- 犯人探しをしない「ポストモーテム(事後検証)」 障害発生後、「誰がミスしたか」ではなく「なぜ仕組みがミスを防げなかったか」を分析します。個人を責めずに仕組みを改善することで、組織全体の心理的安全性と再発防止力を高めます。
2-6. SRE(エンジニア)という専門職について
SREという言葉は、実践手法(Engineering)だけでなく、それを担うエンジニア(Engineer)を指すこともあります。彼らは従来の運用担当者とは働き方が大きく異なります。
- エンジニアとしてのSRE:「ソフトウェアエンジニアリングのスキルを使って、運用の問題を解決するプロフェッショナル」です。手作業でサーバーを守るのではなく、コード(プログラム)を書いてシステムを守る能力が求められます。
- 50%ルール: SREの重要な原則の一つに「50%ルール」があります。 SREは、手作業による運用業務(トイル)を業務時間の50%以下に抑えるべきとされています。では、残りの50%は何をするのか? それは「将来を楽にするための自動化」や「信頼性を高めるための開発」に充てる義務があります。
これにより、SREは「日々の運用に忙殺されて改善ができない」という悪循環に陥ることなく、常にシステムの進化に貢献し続けることができるのです。
DevOpsは、ビジネス価値を最大化するための「企業文化・戦略」であり、SREはその文化を具現化するための「実践手法」です。
- リリースの頻度が上がる = 顧客のフィードバックを早く製品に反映できる。
- 品質が安定する = 顧客の信頼を損なわない。
- 自動化で無駄が減る = エンジニアがより創造的な業務に集中できる。
これらを組み合わせることで、「変化への俊敏性」と「システムの安全性」という、一見相反する要素を両立させることが可能になります。これこそが、現代のITビジネスにおける最強の競争力となるのです。
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