「新しいことはわからなくて」と言っているようでは相当にまずい
「グーグルの経済学者ハル・バリアンの計算によると、ここ数十年と言うもの世界全体の情報は、毎年66パーセントの割合で増えている。この爆発的な数字を最も一般的な素材、たとえばコンクリートや紙のここ数十年の増加率である毎年平均7パーセントという数字と比べてみればいい。この星のどんな他の製品と比べても10倍速い成長率は、どんな生物的な成長よりも大きなものだ。(『テクニウム』p.384)」
テクノロジーは生物界と同様に、自らが自律的に進化すると説く本書は、テクノロジーの業界に身を置く私にとっても実感として受け止めています。
会社が与えてくれる研修だけに頼っていては、この業界では生き残れません。自分テーマを探し、独学で知識を磨くしかありません。
こういうことは、若い世代にしっかりと教えなければいけないことだと思っています。彼らが、未来を作り、将来を支えてゆくからです。しかし、残念なことですが、それを怠っている企業もあるようです。
例えば、新入社員研修で、「情報処理の基礎」は教えても、「最新のトレンド」を教える企業は、限られています。確かに基礎は大切です。しかし、これほどAIが大騒ぎになっているのに、AIをまともに教えることなく、仮に教えても、一昔、あるいは、二昔前の知識に留まっていることも多いように思います。ChatGPTなどの生成AIを支える基盤モデルも、もう伝えなくては、仕事として困るはずです。ブロックチェーンやWeb3、メタバースや量子コンピューターはどうでしょう。そんないまの常識を何も教えることなく、現場に送り出してはいないでしょうか。
以前、ある新入社員から、次のような本音を聞かされたことがあります。
「お客様のところへ行くのが怖いです。何言っているかさっぱり分からなくて。」
決して、彼に意欲がないわけではありません。意欲はあるけど、言葉が理解できないことへの不安が、ストレスになっているようでした。
かつて、ITの一昔とは1年前、二昔とは3年前のことでしたが、コロナ禍がこのスピードを加速しました。昨今の生成AIに関わる喧騒を想えば、一昔は、もはや数ヶ月、二昔は1年に、短縮されたように感じます。
そんな加速度こそが、この業界の特性です。ならば、新人研修にもそれを教えなくてはなりません。そして、その根底にあるITの本質と大きな可能性を彼らに伝えなくてはなりません。
自分たちが、これから関わる仕事の本質を知り、そこで働くことの意義や可能性を理解させ、ワクワクさせられなければなりません。IT企業の新入社員研修で、この点は、絶対に手を抜くべきではないのです。
もう60年近く前の話です。私が小学校の入学式で上級生の鼓笛隊が演奏していたのが「鉄腕アトム」のテーマ曲でした。いまでもはっきりと覚えています。そんな時代だったからかもしれませんが、子どもの頃から、ロケットや秘密基地を描くことが大好きでした。そして、その中身を透視図にして描くことが日課のようになっていた時期もありました。もしかしたら、そんな時代の経験が、いま自分の根っ子にあるのかもしれません。いまもまだITのトレンドを透視図として描くことが大好きな自分は、子どもの頃から進歩していないのでしょう。それが、いまの私のやっている「最新ITトレンド研修」の原点かも知れません。
ここ数ヶ月で、世界は大きく変わってしまいました。ChatGPTのような生成AIは、突然生まれたわけではありません。しかし、ほんの数ヶ月前は、専門家にしか使えない道具でしたが、それが、誰もが簡単に使えるチャットというカタチでサービス化されたことが、この変化を誘発したのだと思います。それが、瞬く間に広がり、いろいろな人たちが様々な使い方を生み出し、専門家の道具から、誰もが使える道具へと一気に進化し、普及しました。スマートフォンの登場が、私たちの日常を後戻りできないカタチに変えてしまったように、生成AIもまた、後戻りできない変化をもたらすでしょう。
「後戻りできない変化」について、整理してみました。よろしければ、合わせてご覧ください。
> それ以前に後戻りできない転換点:ITの歴史からふり返るChatGPTの位置付け
ITに関わる仕事をしているのなら、この変化の背景に何があるのか、これからどうなるかについての自分なりの言葉を持つべきです。それが、ITプロフェショナルの矜持というものです。
SI事業者の経営者や管理者が、「新しいことはわからなくて」と真顔でおっしゃることがあります。もちろん謙遜のつもりだと思いますが、社員や部下に危機感がないと嘆いておきながら、自分がこれでは、仕方がないかも知れません。
GitHub CopilotXやOpenAI Codexのデモを一度でもご覧になれば、もはやそんな悠長なことを言ってはいられなくなります。プログラム・コーディングの生産性は劇的に向上し、近い将来、プログラムの仕様やイシューを入力すれば、バグフリーの完璧なコードを生成してくれるのも時間の問題でしょう。そうなったとき、工数を生業にしているSIビジネスは成り立たなくなります。そういう現実がまもなく訪れようとしているのに、「新しいことはわからなくて」と言っているようでは、相当にまずいのではないでしょうか。
先ほども述べたように、「圧倒的な加速度」こそが、ITの本質です。この業界で生き残り続けるには、この本質に向きあわなければならないのだと思います。
【募集開始】新入社員のための「1日研修/1万円」・最新ITトレンドとソリューション営業
最新ITトレンド研修
社会人として必要なデジタル・リテラシーを手に入れる
ChatGPTなどの生成AIは、ビジネスのあり方を大きく変えようとしています。クラウドはもはや前提となり、ゼロトラスト・セキュリティやサーバーレスを避けることはできません。アジャイル開発やDevOps、マイクロ・サービスやコンテナは、DXとともに当たり前に語られるようになりました。
そんな、いまの常識を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くし、不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、いまの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと、この研修を企画しました。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。
ソリューション営業研修
デジタルが前提の社会に対応できる営業の役割や仕事の進め方を学ぶ
コロナ禍をきっかけに、ビジネス環境が大きく変わってしまいました。営業のやり方は、これまでのままでは、うまくいきません。案件のきっかけをつかむには、そして、クローズに持ち込むには、お客様の課題に的確に切り込み、いまの時代にふさわしい解決策を提示し、最適解を教えられる営業になる必要があります。
お客様からの要望や期待に応えて、迅速に対応するだけではなく、お客様の良き相談相手、あるいは教師となって、お客様の要望や期待を引き出すことが、これからの営業に求められる能力です。そんな営業になるための基本を学びます。
新入社員以外のみなさんへ
新入社員以外の若手にも参加してもらいたいと思い、3年目以降の人たちの参加費も低額に抑えました。改めて、いまの自分とこれからを考える機会にして下さい。また、IT業界以外からIT業界へのキャリア転職された方にとってもいいと思います。
人材育成のご担当者様にとっては、研修のノウハウを学ぶ機会となるはずです。教材は全て差し上げますので、自社のプログラムを開発するための参考にしてください。
書籍案内 【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版
ITのいまの常識がこの1冊で手に入る,ロングセラーの最新版
「クラウドとかAIとかだって説明できないのに,メタバースだとかWeb3.0だとか,もう意味がわからない」
「ITの常識力が必要だ! と言われても,どうやって身につければいいの?」
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こんな自分を憂い,何とかしなければと,焦っている方も多いはず。
そんなあなたの不安を解消するために,ITの「時流」と「本質」を1冊にまとめました! 「そもそもデジタル化,DXってどういう意味?」といった基礎の基礎からはじめ,「クラウド」「5G」などもはや知らないでは済まされないトピック,さらには「NFT」「Web3.0」といった最先端の話題までをしっかり解説。また改訂4版では,サイバー攻撃の猛威やリモートワークの拡大に伴い関心が高まる「セキュリティ」について,新たな章を設けわかりやすく解説しています。技術の背景や価値,そのつながりまで,コレ1冊で総づかみ!
【特典1】掲載の図版はすべてPowerPointデータでダウンロード,ロイヤリティフリーで利用できます。社内の企画書やお客様への提案書,研修教材などにご活用ください!
【特典2】本書で扱うには少々専門的な,ITインフラやシステム開発に関わるキーワードについての解説も,PDFでダウンロードできます!
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。