生成AIで仕事の成果をあげたければ自分の知っているところで使うというのが最も効果的
生成AIとシステム開発については、「簡単に問題のないコードを記述してくれてとても便利」という声がある一方で、「それらしいコードにはなるが、このままでは使えない」という意見もある。ただ、後者であっても、「最初から自分でコードを打ち込むよりは、生産性が上がる」という声もある。
こういう記事を見て、改めて思うのだが、プログラミング言語のこと、あるいはシステム開発について、知識や経験がなければ、いずれの評価もできない。また、どのように使いこなせば、成果に結びつくのかを見つけるにも、実践で試して、結果から議論するのが、最も現実的な解にたどり着きやすいわけで、これもまた、同様の知識や経験なくして、できることではない。
私は、システム開発者ではないが、プレゼンテーションやレポートをまとめるときに、ChatGPTやBardを使うことがある。しかし、自分の知らない分野、表現を変えれば、勘の働かない領域では、仕事には使いづらいことを実感している。
例えば、システム開発などはそのひとつで、自分がシステム開発者としての実践の知見がないので、得られた結果を検証できず、実践上の価値や成果を評価できない。それらしい文章が生成されて、文章表現の体裁を整え、見た目の上では「立派なレポート」を作れても、内容の保証はなく、お金を頂ける仕事にはならない。
一方で、テクノロジーのトレンドやビジネス戦略といった部分で使えば、わりと使える。あきらかに間違っているとか、論理が矛盾しているとか、同じようなことを言っているといったことを、比較的容易に見分けられる。それは、この分野での知識や経験のバックグラウンドあるからだ。それと照らし合わせて、「あれ?なんか違うんじゃないかな」という勘が働く。
それを頼りに、自分の知識が足りないせいなのか、それとも生成された結果がおかしいのかを確かめるために、他の情報を参照したり、その道のプロに意見を求めたりすることで、内容に一定の品質保証ができるので、仕事として使えるわけだ。
結局のところ、こういうツールで仕事の生産性や品質を高めたければ、「自分の知っているところ」で使うというのが、最も効果的であると言えるだろう。
もちろん、自分の知らないことを知る手段として、生成AIを使う価値はある。しかし、それは、情報収集の手段に留まる。
お金を頂く仕事であれば、実務を見据えて、戦略を立て、コンテクストを描き、内容の品質を保証する必要があるが、生成AIがそこまでやってくれるわけではない。
新しい情報を収集する手段は、これまでも検索や書籍、論文、専門家の話などいろいろあったわけで、それらもまた「全てが正しい」わけではない。様々な情報を照らし合わせ、つなぎ合わせ、それらの矛盾や違い、一致を見極めながら自分の知識の枠組みに統合していくことで、「自分なりの理解」にたどり着く。もちろん、それとても絶対に正しいわけではない。
だからこそ、継続的にこのプロセスを繰り返すことで、理解を深め、真理に近づけるわけだ。生成AIもこのプロセスの中のひとつの手段に過ぎない。
もちろんこれまでにない利便性がある。例えば、次のようなことだ。
- 検索結果のリンクを示すだけではなく、網羅的に様々な情報を参照して、わかりやすく要約してくれるので、情報収集の手間が省ける。
- 「知りたいこと」について対話的に質問を繰り返すことで、自分の頭の中を整理する「壁打ち」の相手として使える。
- 自分の知らない新しい視点の提供、あるいは、整理の仕方を示してくれる。
ただ、いずれにしても、生成された文章に品質の保証はないわけだから、ここを入口にして、自分の実践と既存の知見、さらなる情報を照らし合わせて、仕事に使える成果物に仕上げる必要がある。
生成AIは、便利な道具ではあるが、それを使う人間の知恵や工夫、それを続ける自助努力なくして、仕事として使えるレベルにするのは難しい。結局のところ、人間は、これからも学び続けなくてはならないわけで、この普遍の原理原則は、昔も今もこれからも変わらないだろう。
ただ、この普遍の原理を意識して行動している人とできていない人の社会格差は、これまでになく拡大するのではないか。つまり、いまであればAIにできることを、人間は仕事としてやっていたわけだ。しかし、生成AIを使いこなせる人たちが、これを人間に任せないで、AIにやらせるようになれば、そういう人たちの仕事は減ってゆく。結果として、「AIに仕事が奪われる」ことになる。
その変化が緩やかであれば、人間は自らの役割を変えていく余裕もあるが、どうもいまの動きを見ているとそんな余裕はなさそうだ。LLM、マルチモーダルAI、AGIといった流れも加速しているいま、人間にしかできないことの範囲は、急速に狭まるだろうし、想定外のことも起こりうる。それに備える時間的な余裕を持たないいまに、私たちはAIと向きあうことになるのだろう。
面白くもあり、不気味でもある。ただ、このトレンドに抗うことができない以上、面白がって、いろいろと試してみるのが、現実的な答えなのかも知れない。
【参考】システム開発と運用で生成AIにできること・人間にしかできないこと
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八ヶ岳で働いて暮らそう!起業・複業の場所としての魅力と八ヶ岳での働き方について
八ヶ岳エリアで働きながら暮らしている実例も紹介し、地域での起業・複業について、その魅力や具体的な働き方についてお話しします。
近年八ヶ岳エリアは移住先として人気になっていますが移住検討者にとって大きな懸念となるのが仕事です。八ヶ岳移住者の働き方の実例を紹介することで移住後の働き方を具体的にイメージすることができます。
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2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
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