生成AIと「適切なコミュニケーション」をとるために必要な3つの能力とシステム開発
生成AIの進化によって、溶けてなくなるのは、「コーダーと呼ばれるプログラマー」であることを、昨日のブログで指摘し、その理由についても詳述した。だからと言って、「システム開発」における人間の役割が、AIに取って代わられることはないとも述べた。なにも、プログラマーに限ったことではなく、「知的力仕事」というのは、結局のところ、AIに置き換えられる運命にある。
しかし、「知的力仕事」は、AIがこれほどまでに大騒ぎになる以前から置き換えられてきた。例えば、銀行のATMや駅の改札機、飲料の自動販売機、工場の生産ラインなど、手順をルール化、パターン化できる業務は、ことごとく機械に置き換わってきた。
ITで言えば、クラウド・サービスのPaaSやサーバーレス、SaaSのAPIなども同じだろう。
これらインフラやプラットフォームは、「必要かつ重要だけれども付加価値や差別化の対象にならない」領域ではあるが、付加価値や差別化を生みだす仕事ではない。一方で、ものすごく手間のかかる仕事だ。言わば、「知的力仕事」の領域であった。これを人間の手から離し、本来人間が知性を働かせて、付加価値や差別化を創り出すアプリケーション開発の業務へ、人間が意識や時間を傾けられるようにサービスや機能の拡充が、なされてきた。これによって、アプリケーション開発の生産性は著しく向上し、変更への迅速な対応も可能になった。IT業務における生成AIの位置付けも、この延長線上にあると言えるだろう。
ただ、それらと生成AIには、大きな違いがある。それは、「創発」性のあるなしであろう。創発(そうはつ、英語:emergence)とは、本来、生物学や物理学の用語で、「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。」ことを意味している。
これをビジネス用語として援用し、「個人が他者と適切なコミュニケーションを行うことによって個々人の能力を組み合わせ、創造的な成果を生み出すこと。」と解釈されている。つまり、生成AIを他者と見立て、「適切なコミュニケーション」によって、これまでにない新しいやり方に気がついたり、生みだしたりすることができることだ。
そんな生成AIと「適切なコミュニケーション」をとるには、以下ことを人間側ができなくてはならない。
- 目的や目標、あるいはゴールを決められる。
- 根拠や理論を持ち、仮設を作り、回答に基づき仮設を検証できる。
- 上記のような自分の考えを言語化できる。
言わば、知的な壁打ちの相手として、あるいは、相談に必ず応えてくれる(正しい答えかどうかは別にして)専門家として、生成AIと「適切なコミュニケーション」をとり、成果を引き出すことができる。
生成AIを使わなくても、既存のサービスにも、正解が用意されている。また、それを利用すれば、生産性を高められる。しかし、どれが正解かを探すのは、容易なことではない。また、何が正解なのかに迷っていたり、もっといいやり方はないかと悩んだりしても、その答えを与えてくれることはない。
上記の3つの「できること」があれば、生成AIなど使わなくてもこれらの課題を解決できるだろう。しかし、生成AIであれば、さらに、いろいろな視点から相談できるので、自らの思考の整理ができ、より柔軟、的確な答えにたどり着く可能性が高まる。
このような特性を持つ生成AIは、「知的力仕事」の代替に留まらず、「知的創造仕事」の生産性、あるいは、思考の範囲や視点を拡げ、「新しい気付き」をもたらすことに役に立つ。もちろん、「知的創造仕事」も「新しい気付き」も、生成AIが与えてくれるわけではない。これらを引き出せるのは人間である。そのための素材を提供してくれるに過ぎない。
ただ、見方を変えれば、これは凄いことだ。ネットに蓄積された膨大な言語データから生みだされた知識量は、人間にはとてもまねできない。つまり、バカみたいに物知りなのだ(「物知りだから賢い」とは言えないが)。そんな相手を、相手の感情(そもそもそんなものはない)など気にせずに壁打ちの相手にできるのだから、これは、大いに活用すべきだろう。
少々、話しが横道にそれてしまったが、結局のところ、生成AIであっても、それ以前から使われている手段であっても、人間の側に以下の能力がなくては、その価値を十分には引き出せない。
- 目的や目標、あるいはゴールを決められる。
- 根拠や理論を持ち、仮設を作り、回答に基づき仮設を検証できる。
- 上記のような自分の考えを言語化できる。
このような能力は、生成AIを使おうが使うまいが「システム開発」にとっても、欠かすことのできない能力だ。本来「システム開発」は、「業務のデザイン/設計」を行い、これを「プログラミング言語」を使って清書する仕事だ。ならば、その清書作業は、AIに任せてしまったとしても、価値を作り込むのは、「業務のデザイン/設計」の部分であり、生成AIの助けを借りるとしても、取って代わられることはない。
社会のパラダイムが大きく変わる世の中で、新しい「業務のデザイン/設計」の需要は、ますます増えていく。その意味でも、AIに任せられることはできるだけAIや機械に任せて、人間にしかできないことに人間の役割をシフトしてゆくことは、必然の成り行きであるように見える。
「テクノロジーが人間の仕事を置き換える」ことは、いつの時代にもある。生成AIの登場もそんな人間の歴史の1コマに過ぎない。
ブルドーザーやパワーショベルが登場して、人間が諸ヘルで行っていた穴掘りの仕事は代替された。だからといって、人間の必要性がなくなったわけではない。これら道具を使って、これまでにはできなかった土木工事ができるようになり、期間もコストも大幅に減らすことができるようになった。また、都市計画のあり方を変えて、利便性の高い都市空間を生みだした。
生成AIも同様で、私たちは、そんな歴史の変曲点に立ち会い、関わっているのだろう。
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斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
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- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
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- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
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