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生成AIに置き換えられる知的力仕事の3つの条件

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先日投稿した「溶けるプログラマー、沸き立つエンジニア」というブログの中で、「プログラマーという仕事は溶けてなくなる」旨のことを指摘した。これに対して、「AIに取って代わられることはない」とのご指摘を頂いた。これについては、私の説明が不明確であり、ご指摘の論点が、うまくかみ合っていないのではないかと想い、自分の整理のためにも、書いておこうと思う。

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まず、私が「溶けてなくなる」と指摘しているのは、「プログラマーと称するコーダー」である。入力に対する出力が明確に定義されている関数あるいはサービス、あるいはそのフロー定義して、プログラム言語を使って記述する業務を行う人たちのことだ。つまり、知的力仕事に関わる労働者と言うことになる。

例えば、膨大な紙の書類に書かれている内容を項目ごとに分けて、システムに入力する。沢山のウエッブを見てまわって、カテゴリーごとに情報をまとめExcelにまとめる。そういうことも知的力仕事であろう。

プログラム・コードを書くことは、かつては知的力仕事の範疇ではなかった。しかし、生成AIの急速な機能の向上により、もはや知的力仕事になりつつある。そんな知的力仕事の条件は、次の3つに整理できるだろう。

  • 作業の目的、あるいは入力と出力の関係が、明確であること。
  • 様式やルールが、明確であること。
  • 成果に対する評価が、客観的であること。

このような特徴を持つ「知的力仕事」は、次の特徴がある。

  • 何をすればいいのかを外部から与えられれば、実行できる。
  • 繰り返し作業により、スキルの習熟が見込める。
  • 成果が定量的に評価できるので、習熟の度合いや改善点を明示的に知ることができる。

このような業務は、コーディングに限らず他にもあるわけだが、この類の作業は、学習データの量と強化学習によるフィードバックによって、能力を高められる。また、コーディング作業は、「最適な言葉のつながりを見つける作業」であるとも言え、LLM(大規模言語モデル)の基本となったアルゴリズムであるTransformerと相性がいい。

以上の理由から、将来的には、「プログラマーと称するコーダー」の仕事は、AIに置き換えられると考えた。

しかし、だからと言って、「システム開発」における人間の役割が、AIに取って代わられることはない。上記の「知的力仕事の3つの条件」に当てはめて考えてみると、このことがよく分かる。

  • 作業の目的、あるいは入力と出力の関係の明確化は、人間しかできない。
  • 様式やルールの明確化は、人間にしかできない。
  • 成果を評価する基準は、人間にしか決められない。

つまり、ビジネスの課題や要請、それが何に役立つかは、人間が持つ常識や価値観、夢や理想という、定量化しがたい知性が必要となる。

LLMによって生成されたモデルは、意味や知性を反映したものではなく、言葉の出現確率に基づくベクトル値に過ぎない。そもそも人間の知性とは言語だけでできているわけではない。感覚器や運動からのフィードバックによる信号、内分泌系の変化などの身体性も知性の源泉である。従って、生成AIに人間相当の知性をもとめることは、原理的にできない。

確かに「システム開発」、つまり、「目的や達成目標の定義」、「戦略の策定」、「手段の決定」という一連のプロセスの中の「手段のひとつ」である「プログラム・コーディングの作業」は、置き換えられるとしても、人間の知性が必要とされるそれ以外の多くの作業が、置き換えられることはない。従って、「システム開発」の全てが、AIに取って代わられることはない。

むしろ、社会のデジタル化が進む中で、そんな社会に適応できなければ、企業が生き残ることは難しくなる。従って、デジタルを前提に、ビジネス・プロセスやビジネス・モデルを作り変える需要が、今後ますます拡大する。ビジネスのソフトウェア化が進むわけで、「システム開発」のテーマはますます増えていく。

そうなれば、知的力仕事に相当する部分は、極力AIに委ね、人間の知性でしかできないところへと、人間の役割をシフトしてゆくことは、社会のニーズに合致する。これは、知的力仕事である「プログラム・コーディング」をAIに任せるための機能やサービスの拡充を後押しする原動力となるだろう。

もう何十年も昔の話ではあるが、文章を手描きで書いて、これを清書するためにタイピストに仕事を任せていた時代があった。もはやタイピストはワープロとプリンターに置き換わり、文章を書く人が清書もしている。

これと同じ話で、何をしたいかを考えて、SI事業者にシステム開発を依頼しているが、生成AIの登場により、何をしたいかを考え、それを明確に言語化できる能力があれば、プログラムコードはAIが生成してくれるようになり、「(コーダーと言われる)プログラマー」の需要は、なくなってゆくことは想像に難くない。

しかし、ワープロやプリンターの性能がいくら向上しても、価値のある文章、人を感動させる文章、人を動かすことができる文章をワープロやプリンターが勝手に作ってくれることがないのと同じで、価値のあるプログラム、役に立つプログラム、世の中を変えるプログラムをAIが勝手に書いてくれるわけではない。

いい文章を書くにも、価値あるプログラムを書くにも、社会や人との関わり、その背景にある常識や仕組み、それを理解する人間の感性や知性なくしてできることではない。

生成AIの発展は、人間にしかできないこととの範疇を狭めることになるが、それは、人間の仕事をなくすことではなく、人間にしかできないことにこれまで以上に、意識や時間を傾け、その能力に磨きを掛け、あたらしい可能性を拡げることであり、夢や理想の実現のハードルを下げることになるのだろう。

AIが人間に取って代わるのは、「知的仕事」である。「知的創造仕事」の領域が、AIに置き換えられるのは、まだまだ先の話しであろう。

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斎藤昌義 著
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目次

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  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
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  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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