新入社員研修で教えなくてはならない3つのこと
毎年、新入社員に最新のITトレンドについて講義をしていますが、講義に先立ち、この研修の目的を十分に説明されているわけではありません。用意された研修プランに従って、粛々とカリキュラムをこなしている人がほとんどです。そんなこともあって、私は講義の冒頭で、この研修の目的について、次の3つのことを話しています。
- お客様の未来に責任を持つため
- 自分のキャリア考える材料を手に入れるため
- 社会人として成長し続けるための方法を知るため
お客様の未来に責任を持つため
「皆さんの提案した製品やサービス、あるいはシステムは、これから3年、5年と使われます。つまり、お客様の3年後、5年後の未来をも支えることになります。あなたは、そんなお客様の未来に責任が持てますか?」
ひとつひとつの製品や技術の進化を予測することは困難です。しかし、どこに向かっていくかについては、ある程度の予測はできます。
毎日のように新しい製品やサービスが、登場しています。私たちが日々目にする表層の変化は激流とも言えるもので、これをひとつひとつ知ろうとしても無理があります。しかし、この激流を生みだしているパラダイムの変化は、蕩々としていています。そんな表層の激流を生みだす深層の流れを知れば、いま起きている変化の行く末は、ある程度予測できます。
そんな深層の流れとは、次のようなことです。
- 不確実性が高まったことで、正確に未来を予測することは困難な世の中になった。そこで、変化を正確に予測する能力ではなく、変化に俊敏に対処できる能力を企業は必要としている。
- ITは、「便利な道具」から「良き相談相手」になりつつある。そして、「信頼して任せることができる相棒」へと、その役割を拡げていく。
- ビジネスは、地政学に支配されている。これまでは、地球的規模での地理的な配置が、地政学的な力関係を支配してきたと言える。しかし、これからは、宇宙やサイバー空間/仮想空間が、地理的な配置と影響を及ぼしながら新たな力関係の原理になる。
1であれば、アジャイル開発やDevOps、コンテナやマイクロ・サービスなどであり、DXもまた、この底流から沸き起こった表層の激流です。
2であれば、昨今話題のChatGPTやBing、Birdなどの生成AIやLLM(大規模言語モデル)、基盤モデルやAGI(汎用AI)などが表層の激流です。
3であれば、IoTやデジタル・ツイン、メタバースやWeb3が表層の激流です。
深層と表層の流れを関連付けることで、大きな変化の潮流を予測することができます。
これらをITについての前提知識のない新入社員に説明するわけですから、それなりの工夫は必要です。ただ、デジタル・ネイティブの彼らは、先入観がないだけに、素直に受け入れてくれます。現実の常識でバイヤスがかかっている人たちよりも、飲み込みが早いように感じています。
自分のキャリア考える材料を手に入れるため
「会社に評価されて満足する人間にならないでください。社会に評価される人間を目指してください。会社の基準に合わせて、自分の評価基準を自分で貶めることは、自分の成長を妨げることになります。社会に評価される存在になれば、会社でも評価される存在になりますから、心配は無用です。」
社会に評価されるとは、会社の名前ではなく、自分の名前で、世の中から声を掛けられるようになることです。そのためには、世の中がどうなっているかに関心を持ち、同じ会社やお客様以外にも、沢山の人のつながりを持つことです。自分のプロフェショナリティを極めることです。そうすれば、自分の人生の選択肢は、確実に拡がります。
最新のトレンドを学ぶのは、会社の常識ではなく、社会の常識を知るためです。会社の目指す方向が、これから起こる社会の変化にどのように向きあっているかを知るためです。それが分かれば、自分のキャリアを考えて行くために、大いに役立ちます。
社会人として成長し続けるための方法を知るため
「社会人の学びは、独学が基本です。会社が与えてくれる学びの機会だけに頼っていては、時代から取り残されてしまいます。もちろん、仕事を通じて学べることはいっぱいあります。ただ、そこでの経験値で満足するのではなく、読書や社外のコミュニティ活動、ネットの情報などを使って磨きを掛けて、その価値を高めてゆくことです。それは、誰かが与えてくれる、お膳立てしてくれることはありません。自分の意志で独学するしかありません。」
そのために、何から始めればいいのかと、よく問われるのですが、私は次のように答えています。
「まずは、時間を作ること。」
毎朝1時間、自分のための時間を作るようにすすめています。1時間早く家を出て、カフェで過ごしてもいいでしょう。リモートワークなら、1時間早く目を覚まし、顔を洗って自分の机につくことです。何をするかではなく、1時間という時間を作ることです。
何をするかは、その時々で、面白そう、やってみたいと感じることをやればいいのです。そうでなければ、長続きしませんから、身につくことはありません。
最初は大変ですが、これをしばらく続けていると、できないことが、辛くなります。毎朝歯を磨かなければ気持ちが悪いように、毎朝出なくても便器に座らなければ落ち着けないように、できないことが苦痛になるような、生活のリズムの一部に組み込むことです。それができれば、これは一生の財産です。わたしはこれを「朝のゴールデンタイム」と呼んでいます。
これを毎日続ければ、毎週1日研修を受講するのと同じです。これを6年間続けば、大学院を卒業するのに必要な時間と同じになります。
大切なことは、「カタチから入れ」です。何かのために決心して、行動するのはなかなか大変ですから、生活のリズムに「朝のゴールデンタイム」を組み入れることから始めてください。そうすれば、「朝のゴールデンタイム」は、人生の財産を生みだします。
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このようなことを新入社員研修の冒頭で話すようにしています。全員が、これを素直に受け止めてくれることはありませんが、何人かは、この言葉を信じて行動してくれる人が現れます。
「朝のゴールデンタイムを続けています。おっしゃったとおり、私の財産になりました。」
10年目にして再会した当時の新入社員が、こんなことを話してくれました。本当に涙が出るほど嬉しくなりました。
ことしもまた、そんな機会に関われることを嬉しく思っています。
【募集開始】新入社員のための「1日研修/1万円」・最新ITトレンドとソリューション営業
最新ITトレンド研修
社会人として必要なデジタル・リテラシーを手に入れる
ChatGPTなどの生成AIは、ビジネスのあり方を大きく変えようとしています。クラウドはもはや前提となり、ゼロトラスト・セキュリティやサーバーレスを避けることはできません。アジャイル開発やDevOps、マイクロ・サービスやコンテナは、DXとともに当たり前に語られるようになりました。
そんな、いまの常識を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くし、不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、いまの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと、この研修を企画しました。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。
ソリューション営業研修
デジタルが前提の社会に対応できる営業の役割や仕事の進め方を学ぶ
コロナ禍をきっかけに、ビジネス環境が大きく変わってしまいました。営業のやり方は、これまでのままでは、うまくいきません。案件のきっかけをつかむには、そして、クローズに持ち込むには、お客様の課題に的確に切り込み、いまの時代にふさわしい解決策を提示し、最適解を教えられる営業になる必要があります。
お客様からの要望や期待に応えて、迅速に対応するだけではなく、お客様の良き相談相手、あるいは教師となって、お客様の要望や期待を引き出すことが、これからの営業に求められる能力です。そんな営業になるための基本を学びます。
新入社員以外のみなさんへ
新入社員以外の若手にも参加してもらいたいと思い、3年目以降の人たちの参加費も低額に抑えました。改めて、いまの自分とこれからを考える機会にして下さい。また、IT業界以外からIT業界へのキャリア転職された方にとってもいいと思います。
人材育成のご担当者様にとっては、研修のノウハウを学ぶ機会となるはずです。教材は全て差し上げますので、自社のプログラムを開発するための参考にしてください。
【募集開始】次期・ITソリューション塾・第43期(5/17開講)
ChatGPTをはじめとした生成AIの登場により、ここ数ヶ月で、IT界隈の常識が一気に塗り替えられた気がします。スマートフォンの登場により、私たちの日常が大きく変わってしまったことに匹敵する、大きな変化の波が押し寄せているようです。ブロックチェーンやWeb3、メタバースといったテクノロジーと相まって、いま社会は大きく動こうとしています。
ITに関わる仕事をしているならば、このような変化の本質を正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様の事業活動に、どのように使っていけばいいのかを語れなくてはなりません。
ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
- IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん
そんな皆さんには、きっとお役に立つはずです。
詳しくはこちらをご覧下さい。
- 期間:2023年5月17日(水)〜最終回7月26日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(原則水曜日・初回のみ木曜日) 18:30-20:30 の2時間
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
- 内容:
- デジタル・トランスフォーメーションの本質
- ソフトウェア化するインフラとクラウド・コンピューティング
- DXの基盤となるIoT(モノのインターネット)と5G
- データを価値に変えるAI(人工知能)とデータサイエンス
- おさえておきたい注目のテクノロジー/Web3と量子コンピューティング
- 加速するビジネス・スピードに対処する開発と運用
- デジタル・サービス提供の実践
- クラウド/DevOps戦略の実践
- 経営のためのセキュリティの基礎と本質
- 総括・これからのITビジネス戦略
- 特別補講 *講師選任中*
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。