技術の発展に「見猿聞か猿言わ猿」ではお客様を失ってしまいます
- 技術的には無理
- できたとしても、コストがかかりすぎる
- 人間がやったほうが、融通が利く
その通りだと思います。しかし、テクノロジーの進化やサービスの拡充が日増しに加速しているいま、この3つの言い訳も、それに合わせて、常に新しい基準で判断すべきです。
「クラウドを使ったからと言って、安くはなりませんよ。むしろ高くつくこともあります」
あるWebシステムを、所有する場合のシステム構成をそのままに、AWSのEC2でシステムを作ると年額25万円ほどかかったそうです。しかし、AWSのFaaS(Function as a Service/サーバーレス・アーキテクチャ)であるLambdaを使うことを前提にアーキテクチャを最適化したところ、年額900円で使えたそうです。もちろん、全てのケースでこれほど劇的なコスト削減ができるわけではないでしょうが、アプリケーションによっては、こんな使い方も可能であることは、もはや常識です。
このような現実を正しく直視すべきです。そして、その進化のスピードは、加速度を増しています。いずれはできるだろうと高をくくっていると、既にそんなことはできているといったことが起きているのです。
ITに関わる仕事をするということは、そんな進化が急速に進む日常の変化を正しく目利きし、使えるカタチ、つまりや実装技術やサービスへと転換し、お客様のビジネスの成果に貢献することです。
そんなITビジネスの本質的な価値を棚上げし、過去のテクノロジーの上に築かれた自らのビジネスを守るために、お客様に時代遅れを強要することが、正しいことなのでしょうか。例えば、未だ次のようなことが平気で行われています。
- お客様の自前の設備を仮想マシン化し、その構成をそのままにIaaSへ移行することだけでクラウド・インテグレーションと称し、何ら新たな付加価値を生みだすことがないのに、それを売り込んで工数を稼ごうとしている。
- アジャイル開発やDevOpsの本質を正しく理解しないままに、「それらは、しょせん小規模なWebアプリケーションにしか使えないので無理です」と誤った解釈を押しつけ、お客様のIT改革を後退させようとしている。
- お客様はパブリック・クラウドへの移行をすすめたいのに、「それは保証できません」という殺し文句で、お客様を躊躇させ、いままで通りの設備、開発、運用に落ち着かせ、これまでの仕事の守ろうとする。
こんなことを続けていれば、お客様からの信用を失い、別の会社に置き換えられてしまうでしょう。
テクノロジーの進化に「見猿聞か猿言わ猿」を決め込み、いままで通りを押し通そうとするのではなく、進化や変化を先取りして、お客様の未来の先導役となることこそが、ITビジネスの価値であり、魅力ではないでしょうか。
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー