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ChatGPTが使える3つのこと、使いこなすための3つの技

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ChatGPTに質問すると、流暢な表現で回答してくれる。「なるほどなぁ〜」と感心する。特に、自分にとって不得意な分野だったりすると、「なるほどなぁ〜」感は、相当なものだ。

しかし、「あれ、これ違うよね?」という回答も珍しくない。丁寧でわかりやすい説明ではあるが、堂々とウソをつく。しかし、理路整然としているので、真実であると思いませる説得力がある。

それが分かってきたので、「あれ?」と思ったことは、直ぐにGoogleで調べている。そうすると、やはり間違っていることもあるし、私が間違っていることもある。この結果を踏まえて、さらにChatGPTに質問すると、またそれらしい答えを返す。そんなことを繰り返しながら、自分の頭の中は、納得できるカタチに整理されていく。

いずれにしても、鵜呑みにせずに、疑問に思い、質疑を繰り返すことで、確かな知識が手に入る。

これって、講義や講演でも同じことだ。講師の話をただ聞いているだけで質問をしないというのは、知識を確かなものにするせっかくの機会を失っているわけだ。

まともな講師なら講義や講演は仕事だから、理路整然と筋の通った話をする。もちろん、間違ったことを話せば、評判に関わるわけで、それなりに準備してくるだろうが、それでも疑問を持つべきだろう。間違ってはいないだろうが、他にも解釈があるのではないか?こういう場合は、あてはまらないのではないか?そんな疑問を持ちながら話しを聞けば、自ずと質問のひとつやふたつは思いつく。

ChatGPTのような、対話型のAIツールが、充実してくるだろう。様々なソフトウエアやサービスにも組み込まれてもいくはずだ。そうなると、疑問を持って質問する能力は、人間にとって欠かすことのできないものになるだろう。

残念なことだが、実際の講義や講演で質問を求めても、反応は乏しい。変な質問をして、まわりから顰蹙(ひんしゅく)を買うことを恐れているのかも知れない。あるいは、自分のレベルが低いことを人前にさらして恥をかきたくないのかもしれない。

まあ、そんな美意識もあってもいいと思う。人それぞれだ。その時の疑問や質問をChatGPTに質問すればいい。まわりの評価など気にしなくてもいいから、気が楽だ。しかし、もし疑問や質問が思い浮かばないとすれば、それはちょっとヤバいぞ。AIに置き換えられる、いや、AIにこき使われることになるだろう。

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対話型AIの限界は、データの範囲でしか答えを出せないことだ。しかも、サイバー空間のデータに限られる。サイバー空間のデータには、フェイクも多い。品質保証のない玉石混交のデータを使って、流暢な文章になるように言葉をつなげているに過ぎない。

分野が狭く、見解が統一されていている場合は、かなりいい仕事をしてくれる。さらに、データが充実していれば、回答の品質は高まる。その反対に、分野が曖昧で、いろいろな意見や解釈がある場合、あるいは、あやしい意見がまかり通っているテーマについては、流暢に変な回答をする。DXなどは、その典型だろう。

だからと言って、役に立たないわけではない。適切な質問(プロンプト)を入力すると、それなりに、分かりやすい整理してくれる。資料をまとめる上での下書きとしては、かなり役に立つ。特に、自分の詳しくない分野であれば、新しい気付きを与えてくれることも多い。

しかし、品質の保証はない。品質を担保するには、次の3つを実践することだ。

原典あるいは一次情報に当たり確かめる

二次情報や様々な人の解釈も参考になる。ただ、「参考になる」ためには、原典あるいは一次情報がまずあって、その解釈を補完し、理解を深めるからだ。だから、まずは原典に当たり、できるだけ沢山の関連情報にアクセスすれば、何が正しいのかが、しっかりと浮かび上がってくる。

書籍を読む

私も何冊か書籍を出版しているが、公衆に晒す以上、徹底的に裏をとる。さらに編集者の厳しい指摘がある。そういう品質管理の洗礼を経て、書籍は作られている。それでも、間違える。そう考えれば、品質管理のメカニズムがないサイバー・データに品質を求めるのは難しいことは当然だ。

実践して身体で考える

体験や経験だ。表現を変えれば、人間にしかない「身体性」である。人は、自分が感じたこと、他人と共感したこと、喜んだことや悲しんだこと、好きや嫌いを体験し、それが経験に昇華して、正しいことを直感で見抜く力が磨かれる。AIの決定的な限界は、身体性がないことだが、世界を理解するには、この身体性が大きな部分を占める。身体性があるからこそ、理屈を越えた「こういうことではないか?」という直感が働く。暗黙知とか、経験値とか、形式知化されない部分は、人間が持つ知識の多くを占める。

後半の2つ、書籍と身体は、サイバー空間には存在しない。つまり、品質を担保する強力なツールがサイバー空間には存在しないことを意味する。ここにこそ、人間にしかできないことがある。

知識をネットにだけ頼らずに、沢山の本を読むことだ。考えて妄想して答えを出すのではなく、思いついたら実践して、その結果から考えること。身体を通じた体験の密度を高めることだ。AIには、決してできないことこそ、人間の存在意義である。

ついでながら、対話型AIを含む生成AIのもうひとつの役割として、「創造性の発揮」を上げておこう。つまり、先に述べた「下書きや整理」と「新しい気付きの提供」に加え、「創造性の発揮」が、生成AIのお役立ちだ。

「創造性の発揮」とは、いままでにないことを生みだす能力だ。考えて見れば当然のことで、AIに常識はない。つまり常識に束縛されないアウトプットを生みだすことができる。それは、時にして驚きや感動を与える。言葉を変えれば、いままでに見たこともない画像や動画、音楽や文章を生成してくれる。常識という枠組みがないので、思い切った(?)アウトプットを作れるからだ。

但し、サイバー・データの範囲内でのアウトプットだ。その範囲の中での創造性ではあるが、そこから刺激を受けて、あるいは着想を得て、新たらしいことを生みだすきっかけを、人間に与えてくれる。

AIを使うことに制限をかけようとの動きもあるが、馬鹿げたことだと思う。AIの進化は止まらない。制限すれば、時代の変化に取り残される。ならば、失敗も覚悟で、どんどん使って、体験して、ノウハウを身体に染み込ませるのが賢明だ。

「マシンは答えに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生みだすことに力を傾けるべきだ。」

"これからインターネットに起こる『不可避な12の出来事"の中で、ケビン・ケリーが述べた言葉だ。彼の2016年の言葉は、いま現実になりつつある。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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