新入社員には「最新ITトレンド」を教えてあげて下さい
「情報処理の基礎」は教えても、「最新ITトレンド」を教えなくて、実践の現場で、彼らは戸惑わないでしょうか?
「最新のITトレンド」を新入社員研修に最初から組み入れているところは、ほとんどありません。コンピューターや通信の動作原理、バッチ処理やリアルタイム処理と言った処理方式など、情報処理の基礎やプログラミングの方法、自社の関わる製品やサービスについては教えても、AIやIoT、コンテナやマイクロサービス、アジャイル開発やDevOpsなど、もはやビジネスの現場で当たり交わされている言葉を体系立てて教えようとしているところは、寡聞です。
残念なことですが、情報処理の基礎的なことさえも教えずに、コードの書き方だけを教えている企業も少なくありません。確かに「コードを書く」ことで、体験的に情報システムのプロセスを理解できますから、それが悪い訳ではありませんが、そこで終わってしまっていることも多く、これでは、自分たちのやっていることの意義を自覚することは難しいのではないかと思います。
私は、次の理由から、新入社員に「最新ITトレンド」を教えなくてはならないと考えています。
- 現場の実践で交わされる言葉に戸惑わず、自信を持って応対できるようにするため。
- 自分たちの現実と未来を正しく理解し、自分のこれからの仕事の意義を自覚させるため。
- 学ぶべきことが沢山あることを知り、学び続けることの大切さに気付くため。
トレンドとは、生き物です。そして、ビジネスや生活の日常と深く関わっています。ITビジネスに関わる以上、その関係を知っておくことは、挨拶や名刺交換と同様に、ビジネス・マナーです。そうでなければ、お客様と、まともに会話さえできないからです。
そもそも「トレンド」とは何か?
- トレンドとは、「時流」。テクノロジーが生まれてきた過去から現在に至る歴史の流れ。
- トレンドとは、「法則」。テクノロジーの未来に何が起こるかを予測するメカニズム。
- トレンドとは、「構造」。テクノロジーは、お互いに影響し合い、関係を持って役割を果たしている。
PCのディスプレーや雑誌にあふれるキーワードを脳みそにコピペしても、トレンドを理解したことにはなりません。トレンドは、過去から現在、そして、未来に至る時間の流れのなかで繰り広げられる壮大な物語なのです。キーワードを辞書のように並べ解説しても、その繋がりや関係は分かりません。
そもそも、「理解する」とは、ものごとを関連付けて記憶に納める行為です。様々な単語を言葉として「知る」ことに留まらず、「時流」、「構造」、「法則」として、歴史や社会、お客様や世の中のできごとなどに関連付けることです。そうやって、自分の物語として再構成して、記憶に留めることが「理解する」ことです。
トレンドの何を教えるのか?
「物語」を教える。辞書のような解説や情報の断片を、人は記憶にとどめることができません。「歴史的」、「俯瞰的」、「体系的」に整理された物語にしなくては、記憶に留まりません。
「価値」を教えることも大切です。テクノロジーは、手段であり目的ではありません。ビジネスや生活にどのように関わり、変えてゆくかを、その理由とともに教えなくてはなりません。
また、トレンドは、鮮度が大切です。去年使った内容が、そのまま使えることなどあり得ません。もちろん、表面的ないまの流行もあれば、社会や歴史を動かす本質的な変化や流れもあります。両者は分けて、そして関連付けて伝えなければなりません。流行は、常にその時々の新しい言葉を紹介する必要があるのは、当然のことです。例えば、いまいまであれば、基盤モデルや生成AI、Web3やメタバースなどを伝えなくてはならないでしょう。こういう言葉が、実際の現場にどのように存在し、ビジネスや生活に価値を生みだしているのかを伝えなくてはいけないのです。
トレンドを教える講師の心構え
伝えたという自分の満足で終わらせず、伝わったという相手の真実を追求する。
講義でも、商談でも、私はこの言葉を大切にしています。伝わらないのは、自分の伝え方が悪いのだという意識を持ち続けることが、コミュニケーションをうまく機能させる基本です。そのためには、相手の知識や経験の背景を想像し、どういう言葉がふさわしいかを考え、どこまで説明すれば良いかを常に意識しながら、自分の言葉を繰り出すことです。
自分の知っている言葉を語り、語り尽くした自分に自己陶酔しているようでは、講師失格です。
目の前にいる相手を、どうすれば満足させられるか。そんな自覚を持って、行動することも講師の責務だと思います。
いままさに来年度の新入社員研修をご検討の方も多いのではないでしょうか。是非とも「最新ITトレンド」を教えてあげて下さい。自分達の未来を託す彼らに、それを伝えることは、私たちの責務なのです。
【募集中】ITソリューション塾・第42期/2023年2月16日〜
DX疲れにうんざりしている。Web3の胡散臭さが鼻につく。
このような方もいらっしゃるかもしれませんね。では、伺いたいのですが、次の3つの問いに、あなたならどのように答えますか。
- DXとはこれまでのIT化/コンピューター化/デジタル化と何が違うのでしょうか。
- デジタル化やDXに使われる「デジタル」とは、ビジネスにとって、どのような役割を果たし、いかなる価値を生みだすのでしょうか。
- Web3の金融サービス(DeFi)で取引される金額はおよそ10兆円、国家が通貨として発行していないデジタル通貨は500兆円にも達し、日本のGDPと同じくらいの規模にまで膨らんでいます。なぜ、このような急激な変化が起きているのでしょうか。
言葉の背景にある現実や本質、ビジネスとの関係を理解しないままに、言葉だけで議論しようとするから、うんざりしたり、胡散臭く感じたりするのかもしれせん。
ITに関わり、ビジネスに活かしていこうというのなら、このようなことでは、困ってしまいます。
ITソリューション塾は、ITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
- IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん
そんな皆さんには、きっとお役に立つはずです。
- 期間:2023年2月16日(木)〜最終回4月26日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(原則水曜日) 18:30-20:30 の2時間
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
- 内容:
- デジタル・トランスフォーメーションの本質と「共創」戦略
- ソフトウェア化するインフラとクラウド・コンピューティング
- DXの基盤となるIoT(モノのインターネット)と5G
- データを価値に変えるAI(人工知能)とデータサイエンス
- おさえておきたい注目のテクノロジー
- 加速するビジネス・スピードに対処する開発と運用
- デジタル・サービス提供の実践
- クラウド/DevOps戦略の実践
- 経営のためのセキュリティの基礎と本質
- 総括・これからのITビジネス戦略
- 特別補講 *選任中*
詳しくは、こちらをご覧下さい。
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー