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ITトレンドには2つの大きな流れがある

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「コロナはサルベージ作業の爆薬のような効果を及ぼした」

『世界史の構造的理解・現代の「見えない皇帝」と日本の武器 - 2022/6/21 長沼 伸一郎・著』にこのようなことが書かれている。

「一般に沈没船を引き上げるサルベージ作業では、海底の沈没船に空気を吹き込むなどして船を浮上させるのだが、船底が海底の泥にがっちりつかまっていると、たとえ浮力が十分になっても浮いてこられないことがある。そういった場合には、水中で爆薬を爆発させて船体を揺すってやると船は泥から引きはがされていっきょに海面に浮いてくるのである。

何が言いたいかと言うと、 コロナ等の衝撃は、今まで潜在的に社会の底にくすぶっていた問題を一気に表面化させる力を持っており、それこそがしばしば災害そのものの直接的な影響より重大な問題になると言うことである。」

コロナ禍をきっかけとして、リモートワークが定着し、アナログに頼っていた様々な業務や手続きをデジタル化する動きが加速している。クラウド利用も増えている。

しかし、その背景には、コロナ禍以前からの深層の流れがあった。働き方改革やワークスタイルの多様化といった社会的圧力、人手不足の中でビジネス・プロセスをデジタル化しなければならないという課題意識、クラウド・サービスの充実などの流れである。コロナ禍という爆発によって川底が揺さぶられて、深層の流れが表層に浮かび上がり、その流れが加速したことが、IT需要を拡大させた背景にある。

そんな表層の流れは、いずれも目新しいものではない。それはこれまでも深層の流れによって、ゆっくりと確実にもたらされてきた変化である。しかし、本来ならばもっと時間がかかったはずだったが、コロナ禍という爆薬が、時間を加速し、その期間を縮めたのだ。

アジャイル開発やDevOps、コンテナやマイクロサービスなどの表層の流れは、圧倒的なスピードを手に入れなければ、企業が生き残ることはできないとの危機感が、その深層の流れにある。

私たちはいま、VUCA(変化が速く、将来の予測が困難な状況)の時代に生きている。半年先の未来さえ正確には予測できない時代だ。ならば、いまの変化を直ちに捉え、いまの最適は何かの仮説を立てて、それを実践で試して、直ちにフィードバックを得る。その結果から議論して、高速に改善を重ねながら、変化に適応していくといった「圧倒的なスピード」が、企業が存続する条件となっている。そんな「アジャイル(変化に俊敏に対応できる)企業」になることが、存続の条件となった。

ここでITは重要な役割を果たすわけだが、ITもまた「圧倒的なスピード」が必要だ。このような深層の流れが、上記のようなメソドロジーやテクノロジーとして、表層の流れを生みだしている。深層の流れのスピードが、益々加速しているわけだから、表層の流れもまた、スピードを上げて充実するだろうし、普及していくことになるだろう。

DXについても、触れておきたい。DXとは何かということについて、腑に落ちていない、胡散臭いと感じる人は、少なからずいるように思う。その背景にあるのは、DXを表層の流れだけで捉えているからではないか。DXは、深層の流れと一緒にして捉えるべきだろう。

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かつてデジタルは、リアルを支援する便利な道具だった。しかし、もはや、私たちの社会や日常は、デジタルを前提とするものに変わってしまった。例えば、旅行へ行こうとすれば、まずはネットで旅行先を探し、ホテルを予約する。その上で、リアルな旅行という体験を楽しんでいる。つまり、リアルとの接点、あるいは入口がデジタルとなり、リアルはデジタルに包括される時代となった。

当然企業は、そんな世の中の変化に適応しなければ、生き残ることはできない。だから、デジタルがリアルを包括する社会に適応するために会社を作り変えなくてはならない。それは、単にデジタル・テクノロジーを使えばいいと言うことではない。ビジネス・モデルや業務プロセス、働き方、企業の文化や風土を作り変える必要がある。そのための変革の取り組みが、DXである。

つまり、DXとは、デジタル前提の社会に、適応しなければならないという企業の危機感であり、それに対処しようというモチベーションとして、深層の流れを生みだしている。その奔流がデジタルの積極的な活用という表層の流れになっている。

ところが、その表層の流れだけを捉え、それをDXと解釈している人たちが少なくない。結果として、デジタルを使うことが目的化してしまい、深層の流れとは無関係に「デジタルを使うこと=DXの実践」が行われる。これは、カタチだけの「DXごっこ」であり、労力とお金を浪費する行為だ。

DXは、腑に落ちないとか、胡散臭いと感じるのは、深層の流れを理解せずに、表層の「デジタルを使うこと」に終始し、結果として、成果をあげられないからではないか。

デジタルのトレンドもまた、表層だけを見れば、激流である。しかし、その深層の流れは蕩々としており、そこから、なぜ表層の激流が起こっているかが分かるし、表層と深層を行ったり来たりすることで、トレンドの未来を予見できる。

表層の流れだけを追いかけるのではなく、深層の流れとともにその大きな構造を理解する。トレンドを予見するには、そんな態度が必要となるだろう。

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DX疲れにうんざりしている。Web3の胡散臭さが鼻につく。

このような方もいらっしゃるかもしれませんね。では、伺いたいのですが、次の3つの問いに、あなたならどのように答えますか。

  • DXとはこれまでのIT化/コンピューター化/デジタル化と何が違うのでしょうか。
  • デジタル化やDXに使われる「デジタル」とは、ビジネスにとって、どのような役割を果たし、いかなる価値を生みだすのでしょうか。
  • Web3の金融サービス(DeFi)で取引される金額はおよそ10兆円、国家が通貨として発行していないデジタル通貨は500兆円にも達し、日本のGDPと同じくらいの規模にまで膨らんでいます。なぜ、このような急激な変化が起きているのでしょうか。

言葉の背景にある現実や本質、ビジネスとの関係を理解しないままに、言葉だけで議論しようとするから、うんざりしたり、胡散臭く感じたりするのかもしれせん。

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ITソリューション塾は、ITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

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  2. ソフトウェア化するインフラとクラウド・コンピューティング
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【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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