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ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化かの違いから見る日本のDXの難しさ

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「どうすれば、経営者の意識を変えられるでしょうか?」

改革に熱心な若手や中堅の社員から、こんな相談を請けることがある。

「どうすれば、現場に危機感を持たせることができるでしょうか?」

改革を実現したい経営者から、こんな相談を請けることがある。

自ら行動を起こすことなく、お互いに相手に期待している企業の残念な姿だ。このような状況に陥る本質的な原因は、ハイコンテクストな日本の文化にあるのかもしれない。

アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホールは「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」の存在を指摘した。

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ハイコンテクスト文化とは「空気を読む文化」と言い換えることができる。前提となるお互いの文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のこと。コミュニケーションの際に互いに相手の意図を察し合うことで、「以心伝心」でなんとなく通じてしまう環境や状況のことだ。このような文化では、伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう。

一方、ローコンテクスト文化とは、「言葉で伝え合う文化」と言い換えることができるだろう。前提となる文脈や共通の価値観が少ない状態のこと。コミュニケーションの際に、言語で表現された内容が高い価値を持ち、思考力や表現力、論理的な説明能力やディベート力といった能力が重視される。

日本は、典型的な「ハイコンテクスト文化」であり、欧米は「ローコンテクスト文化」であると、彼は指摘している。

DX=デジタル変革という言葉が、世間を賑わしている。変革とは、相手に期待し、調整を積み上げても、前には進まない。本人の強い思いこみとリーダーシップが不可欠だ。「あるべき姿」を描き、なんとしてもそれを実現するという強い思いで、まわりを巻き込むことが、変革につながる。

会社全体をどうにかしようというのは、なかなか荷が重いかも知れないが、まずは目の前にある自分の職責を果たすために、何をすべきかを追求し、リーダーシップを発揮すべきだろう。改革が進まないのは、だれかの責任ではない。自分がリーダシップを発揮できないからだということに気付くべきだ。それは、担当者であろうが、経営者であろうが、同じことだ。

いまのような変化の早い時代にあっては、既存の常識はあっという間に陳腐化する。当然、認識のギャップは、まだら模様になって、社内に拡がっている。まさに、お互いにわかり合えないローコンテクストな社内文化となっている。それを従来と同じやり方、つまり、ハイコンテクスト文化のやり方で対処しようとすることは難しい。だから、調整ではなくリーダーシップ、つまり、積極的な言語と行動により、物事をすすめてゆくことが必要になる。

コロナ禍をきっかけに、DXをすすめなくてはとの機運は高まっている。しかし、DXとは「デジタルを使うこと」ではない。「企業の文化を変えること」だ。デジタルはそのための手段である。では、だれが文化を変えるのだろうか。もちろん、経営者がその先陣を切るべきは言うまでもない。しかし、それを自分事と捉え、自分の職責において、リーダーシップを発揮できなければ、あるいは、そういう人たちが増え、そうすることが当たり前の企業風土にならなければ、DXはただのデジタル化の取り組みになってしまう。

経営者は言葉でビジョンを示し、方向を指し示す。その取り組みにスポンサーシップを発揮することを約束する。しかし、実践のリーダーシップは、現場の役割だ。この両者の思いが一致して、始めて成果が生まれる。しかし、それを受身で捉え、会社や経営者の意図を忖度し、自分なりに解釈し、都合の良いように再定義し直すといったハイコンテクストなやり方では、きっとうまくいかない。

社会が大きく変わろうとしているいま、変革の「のろし」を上げる経営者とリーダーシップを発揮する現場がなければ、あっという間に取り残されてしまう。しかし、何が正解かが分からない。お互いの理解は異なっているかも知れない。そんなローコンテクストな状況であることを受け止め、それにふさわしい行動をすることが大切ではないだろうか。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

12月9日(金)9:30〜 トライアルオープン

オープンを盛り上げてくれるいい対談となりました。録画を公開しましたので、よろしければ、ご覧下さい。

リモートワークやリゾートワーク、メタバース時代の働き方などについて、及川卓也さんと白川克さんと話をしました。とても学びの多い対談になりました。

録画を公開しています。よろしければ、ご覧下さい。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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