自転車とリテラシーと企業文化とDX
自転車という便利な道具が登場しました。なんと素晴らしい発明だ、これでどこへ行くにも楽に行けるぞ、と誰もが感動しました。そんな自転車の価値を多くの人は理解できましたが、そんな自転車の価値を活かすには、自転車に乗る体力と技能(スキル)が必要です。
「自転車=テクノロジー」と「体力と技能=リテラシー」が、揃って始めて、その価値を活かすことができます。
自転車があり、それを使いこなすための体力と技能がある。それが特別なことではなく、当たり前の日常となり、毎日の通勤や通学に使う。自転車があることが前提の日常を私たちはいま生きています。これが文化や風土です。
デジタル・テクノロジーがあり、デジタル・リテラシーがある、それが前提の日常であり、仕事の進め方やお客様との関係、働き方もまた、デジタル・テクノロジーを使うことが当たり前として、誰もが受け止め考え行動する。そんな企業の文化や風土へと変えてゆくことが、DXなのでしょう。
自転車を使うことが当たり前の社会ならば、その価値をもっと簡単に、多くの人に、気楽に、あるいはどこでても使ってもらいたいと思うのは当然のことです。そんな発想から生まれてきたのが、「シェアバイク」サービスです。
自転車以外にも移動に役立つ便利なテクノロジーはいっぱいありますから、それらを簡単に組み合わせて使えるようにしたら、もっと便利じゃないかと考えます。予約も決済も、ルートの検索もひとつのアプリでできるようにすればいいではないかとの発想から、MaaS(Mobility as a Service)が生まれました。
このような発想の連鎖が生まれてくるのは、その前提となるリテラシーがあるからです。
デジタル・テクノロジーとデジタル・リテラシー、それが当たり前の文化や風土があるからこそ、それを活かした新しいビジネスが登場する。DXとは、そんな会社に変わることなのだと思います。
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー