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【図解】コレ1枚でわかるクラウド登場の歴史的背景

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クラウドが、注目を浴びるに至った理由について、歴史を振り返りながら考えてみましょう。

■始まりはUNIVAC I

Remington Rand社(現Unisys社の前身)が、世界で最初に商用コンピューターUNIVAC Iを世に出したのは1951年でした。それ以前は軍事や大学での研究利用がほとんどで、ビジネスで使われることはほぼありませんでした。UNIVAC Iの登場は、この常識を変えるきっかけとなり、当時コンピューターといえばUNIVACと言われるほど、多くの企業で使われるようになりました。

■当時のコンピュータの抱える課題

UNIVAC Iの成功をきっかけに、各社が商用コンピューターを製造、販売するようになりました。しかし当時のコンピューターは、業務目的に応じて専用の機種が必要でした。そのため、様々な業務を抱える企業は、業務毎に異なる種類のコンピューターを購入しなければなりません。その費用ばかりでなく、使われている技術や設計が違い、異なる操作方法を習得しなければなりません。またいまとはちがい、プログラムや接続できる機器類もコンピューターごとに固有のものでした。そのため運用管理の負担も重くのしかかっていました。

コンピューター・メーカーにしても、いろいろな種類のコンピューターを開発、製造しなければなりません。その負担は大きなものでした。

■汎用機の登場

1964年、そんな常識を変えるコンピューターをIBMが発表しました。System/360(S/360)です。全方位360度、どんな業務でもこれ一台でこなせる「汎用機」、いまで言うメインフレームの登場です。

S/360は、商用だけでなく科学技術計算にも対応するため、浮動小数点計算もできるようになっていました。さらに技術仕様を標準化し「System/360アーキテクチャ」として公開しました。

「アーキテクチャ」とは、「設計思想」あるいは「方式」という意味です。この「アーキテクチャ」が同じであれば、コンピューターの規模の大小にかかわらずプログラムやデータの互換性が保証されるばかりでなく、そこに接続される機器類も同じものを使うことができました。

この「アーキテクチャ」により、IBMは様々な規模や価格の製品を、互換性を保ちながら提供できたのです。これにより、企業規模や業務目的が違っても、同じ「アーキテクチャ」の製品が使えることで、利用するためのノウハウやソフトウェアがそのまま使えるようになり、利用する側の利便性が高まり、提供する側も開発コストを抑えることができるようになりました。

また、「アーキテクチャ」が公開されたことにより、IBM以外の企業がS/360の上で動くプログラムを開発できるようになり、IBMに接続可能な機器の開発も容易になりました。その結果、S/360の周辺に多くの関連ビジネスが生まれていったのです。

いまでこそ「オープン」が当たり前の時代ですが、当時はノウハウである技術仕様を公開することは普通ではありませんでした。しかし、「アーキテクチャ」をオープンにすることで、S/360の周辺に多くのビジネスが生まれ、エコシステム(生態系)を形成するに至り、IBMのコンピューターは業界の標準として市場を席巻することになったのです。

このような時代、我が国の通商産業省(略して「通産省」、現「経済産業省」)は国産コンピューター・メーカーを保護するため、国策としてS/360の後継であるS/370の「アーキテクチャ」と互換のコンピューター開発を支援し1974年に富士通はFACOM M190の販売を始めました。

VAX11の成功と小型コンピュータの登場

IBMが絶対的な地位を維持していた1977年、DEC社(現HP社)がVAX11/780といわれるコンピューターを発表しました。このコンピューターは、IBMのコンピュータに比べ処理性能当たりの単価が大幅に安く、最初は科学技術計算の分野で、さらには事務計算の分野へと用途を広げ、DEC社はIBMに次ぐ業界二位の地位にまで上り詰めていったのです。

1980年代、他にも多くの小型コンピューターが出現しました。それが、オフィス・コンピューター(オフコン)、ミニ・コンピューター(ミニコン)、エンジニアリング・ワークステーションと呼ばれるコンピューターです。高価なメインフレームに頼っていた当時、もっと安くて、手軽に使えるコンピューターが欲しいと言う需要に応え、広く普及していきました。

その後、これら小型コンピューターの性能も向上し、メインフレームで行っていたことを置き換えられるようになりました。また、新しい業務をはじめからこれらの小型コンピューターで開発、あるいは市販のパッケージ・ソフトウエアを使って利用するようになりました。このようなムーブメントは「ダウンサイジング」と呼ばれていました。

また時を前後してパーソナル・コンピュータ(PC)も登場します。アップル、タンディ・ラジオシャック、コモドールといったいわゆるPC御三家が、その名前の通り、個人(パーソナル)が趣味で使うコンピューターを世に出します。それらはやがて、表計算や文書作成などのオフィス業務でも使われるようになります。ビジネス・コンピューターの雄であるIBMもこの市場に参入すべく、1981年に Personal Computer model 5150(通称IBM PC)を発売し、ビジネスでのPC利用が一気に加速しました。

IBM互換PCの誕生

様々な小型コンピューターの出現は技術標準の乱立を招きました。この事態を大きく変えるきっかけとなったのが、前節で紹介したIBM PCの登場です。IBMのブランド力によりPCへの信頼が高まり、ビジネスでの利用が広がったことで、IBM PCで動くソフトウエアがそのまま動く互換機が登場しました。その結果、価格競争が促され、その市場が拡大し、IBM PCとその互換機が、ビジネス分野での圧倒的なシェアを持つようになりました。

PCでは後発だったIBMは、市場への投入を急ぐために市販の部品を使い、技術を公開して他社に周辺機器やアプリケーションを作ってもらう戦略を採用しました。コンピューターの中核であるプロセッサー(CPU)をIntel社から、またオペレーティングシステム(OS)をMicrosoft社から調達したのです。

一方で、Intel社は自社のCPUの技術仕様を「インテル・アーキテクチャ(IA: Intel Architecture)」として公開、CPUだけではなくコンピューターを構成するために必要な周辺の半導体チップやそれらを搭載するプリント基板であるマザーボードなどをセットで提供し始めました。さらにMicrosoft社も独自に、このIntel製品の上で動作する基本ソフトウェア(OS: Operating System)を販売するようになりました。

その結果、IBM以外の企業でもIBM PCと同じ動作をするPCを製造できるようになったのです。これが、IBM互換PCの誕生の背景です。

価格が安く本家のIBM PCよりも高性能で同じ周辺機器が使え、同じアプリケーションが動作する互換PCは広く支持され、ユーザーを増やしていきます。

IBM互換PCメーカーは増え、価格競争も熾烈を極めました。こうしてIBM PC互換機は市場を席巻し、現在のWindows PCへとつながってゆきます。

Wintelの隆盛とTCAの低下

皮肉なことに互換機に市場を奪われたIBMPC関連の売上は伸び悩み、利益率も悪化しました。その結果IBMPC事業を売却してしまいました。

そんなPC市場の拡大でIntelはより高性能なCPUを開発し、Microsoftは個人使用を前提としたOSだけではなく、複数ユーザー同時使用を前提としたサーバーOSを開発、コンピューター市場はMicrosoftOSであるWindows Intel CPUとの組合せが市場を席巻し、Wintel(ウインテル)時代になります。

それまで乱立していたアーキテクチャはWintelに収斂し、さらなる技術の進化と大量生産によって、コンピューターの調達に必要なコストは、大幅に下がりました。1990年代も半ば頃になるとPCは一人一台、一社でメインフレームや多数のサーバー・コンピューターを所有する時代を向かえたのです。

TCOの上昇とクラウドの登場

企業に大量のコンピューターが導入されるようになり、コンピューターを置くための設備やスペース、ソフトウェアの導入やバージョンアップ、トラブル対応、セキュリティ対策などの所有することに伴う維持、管理のコスト(TCO: Total Cost of Ownership)が大幅に上昇しました。その金額はIT予算の68割に達するまでになりました。そんな時代にクラウドが登場したのです。

コンピューティング資源を所有せず、必要な機能や性能を、電気料金のように、使った分だけ支払えばいいというのは、変化への俊敏性が求められる時代には、実に都合が良い使い方です。しかも、最新のテクノロジーがいち早く使え、巧妙化するサイバー攻撃に対する高度なセキュリティ対策も任せられるクラウドは、DXを推し進めようとする企業には、前提と考えておくべきでしよう。

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【2月度のコンテンツを更新しました】
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・総集編を「ITベンダー企業向け」と「ユーザー企業向け」に再編しました
・インフラ編の「セキュリティ」を刷新しました
・DXについての解説を充実させました
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DX編
【改訂】デジタルな業務基盤と働き方 p.11
【新規】ITの変化とビジネス対応 p.179
ITインフラとプラットフォーム
【新規】セキュリティの区分と脅威 p.103
【新規】情報セキュリティの3要素と7要素 p.104
【新規】セキュリティとセーフティ p105
【改訂】リスクマネージメントの考え方 p.108
【新規】サイバーハイジーン p.109
【新規】動的ポリシー p.122
【改訂】セキュリティの考え方が変わる p.124
総集編(再編集)
【改訂】総集編/ITベンダー企業向け
【改訂】総集編/ユーザー企業向け
【改訂】DXの本質
下記につきましては、変更はありません。
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