【図解】コレ1枚でわかるリスク・マネージメント
「リスク」とは、事業活動に損害を生じさせる可能性のことです。例えば、お客様から預かっている顧客情報や企業活動に関わる機密情報が漏洩する、不正アクセスやマルウェア(悪意のあるソフトウェア)によって、システムが停止させられるなどのインシデント(セキュリティに関わる脅威となる事象)が起こると、業務の停止、信用失墜や顧客離れ、売上の減少や競合他社に対する競争力の低下などの損害が生じます。
このようなリスクを低減し、事業活動の健全性を維持しつつ継続させるための取り組みが、サイバー・セキュリティ(以下断らない限り、「セキュリティ」とします)におけるリスク・マネージメントです。
事故の発生
インシデントの発生は、「脅威」が、きっかけとなります。「脅威」とは、「リスク」を引き起こす要因です。そんな「脅威」は、2つに大別できます。
人為的脅威:人間によって引き起こされるもの。意図的脅威と偶発的脅威に分けられる。
「意図的脅威」とは、悪意を持つものによる攻撃(不正侵入、マルウェア、改ざん、盗聴など)や盗難、破壊など。
「偶発的脅威」とは、人的ミス(紛失、操作ミス、会話の盗み聞きによる情報漏洩など)やシステム障害(ストレージの破損、ネットワーク機器の故障など)。
環境的脅威:地震、洪水、台風、落雷、火事などの災害。
「脅威」は、なくせませんし、自分たちでコントロールもできません。例えば、「うちには不正侵入はしないでくれ、ウイルスは送らないでくれ」とお願いすることができないからです。しかし、どのような脅威が存在するかについては、徹底して洗い出して、事業への影響を分析しておくことは、必要です。
一方、「脆弱性」とは、人為的脅威によって利用されるおそれのある、あるいは、環境的脅威によって影響を与えるかも知れない、以下のような弱点です。
- ソフトウェアの欠陥(バグやセキュリティ・ホールと呼ばれる)
- システムを運用管理する手順や方法の不手際
- システムに関わる従業員の知識やスキルの不足、モラルの欠如や実践不足
技術的要素だけではなく、人間的要素も少なくありません。
これら「脆弱性」を完全になくすことはできませんが、「脅威」とは異なり、自分たちの努力で減らすことはできます。例えば、「泥棒(脅威)を世の中からいなくすることはできませんが、家の出入り口や窓(脆弱性)には鍵をつけて、外出時には必ず鍵をかける(脆弱性対策)」ことはできます。
「脅威」と「脆弱性」が一致するから事故になります。ですから、自分たちでは、どうにもしようのない「脅威」ではなく、対策が可能な「脆弱性」を排除することが、事故をなくすための基本となるのです。
事故の影響と受容
徹底した「脆弱性対策」を行えば、事故はなくなりますが、その分コストもかかります。では、どこまで対策すればいいのでしょうか。
まずは、「何を護るか」を選別することです。護る対象についての「情報セキュリティの3要素(機密性、完全性、可用性)が、脅威にさらされたとき、それが事業の継続や事業価値の維持に、どの程度の影響があるかを評価します。その影響度や重要度に応じて、どのような対策を行うべきかを、コストとの兼ね合いで、判断します。重要度が低いにもかかわらず、「セキュリティが心配だから、何でも対策する」という思考停止は、厳に慎むべきです。
また、コストをどれだけかけるかは、「受容レベル」によって決まります。例えば、「電子メールが停止した場合、利用者はどれだけの時間なら許容できるか」について、「①1秒たりとも止まっては困る/②10分なら許容できる/③半日なら許容できる」といった、「許容レベル」によって、対策にかかるコストがまるで違います。感覚的な数字ですが、①なら10、②なら5、③なら1くらいの金額差は生じるでしょう。
対策を行うにも、このような許容レベルの合意を取り付けて、妥当な対策コストをかけなければ、費用対効果の高い対策は、見込めません。
さらに対策が、適正に行われ、有効に機能しているのか、あるいは、想定外の「脅威」や「脆弱性」はないかを、常に検証し改善するために、全ての記録をとって説明責任を果たせるようにしておくことも必要です。
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