DXは何を売ればいいのか 1/2
私たちはいま、正解のない時代に生きている。しかし、正解がなければ、私たちは何を頼りに判断し、行動を起こせばいいのだろう。
昨今、巷では、DXが声高に叫ばれている。IT企業は、これを千載一遇のチャンスと捉え、「お客様のDXに貢献します」や「お客様のDXパートナーとして、お役に立ちます」と喧伝し、「DX案件」の獲得に躍起になっている。では、具体的に何をすることが、「DX案件」なのだろうか。
「うちもDXに取り組まなければならない。このままではまずい、何とかしなければならない、でも何をすればいいのか分からない。」
お客様は、いまこのような状況に置かれているのではないか。そんなお客様を相手に、IT企業は、何を売ろうというのだろう。
「課題を教えてください。何をすればいいのかを教えください。そうすれば、最適なソリューションを提案します。」
お客様は、それが分からないから困っている。そんなお客様の想いをスルーして、こんなことを平気で言っているとすれば、お客様も困ってしまうだろう。いや、頭にくるだろう。
「なるほど、確かに大変ですね。ならば、まずはRPAの導入からはじめてはどうでしょう。業務の効率化、省力化ができますから、そこで実績を上げて、次のステップへ進みましょう。」
発熱して頭も痛く、咳も止まらない相手に、まずは「かゆみ止め」で、虫に刺されたところの痒みを取りましょうといっているようなものだ。
売る側からすれば、痒み止めの薬が売れるので、いいではないかというかもしれない。お客様にしても、上からの命令で、成果を見せなきゃと切羽詰まった担当者は、この話に乗ってくれるかも知れない。しかし、こんな問題のすり替えは、すぐに見抜かれてしまい、やがては信頼を失うだろう。
あるIT企業は、DX実現のためのコンサルをするという。何をすべきかを洗い出し、そこにシステムの構築や製品提供のビジネスのチャンスを見出すのだという。
ちょっとまってくれ!貴方たちは、DXを実践し、体験しているのか?例えそれができてないとしても、お客様のDX実践に関わる経験をどれだけ積んでいるのか。
自動車を運転したことのない自動車ディーラーの営業が、お客様に「この自動車は本当に素晴らしいですよ」と売りに行くようなものではないのか。
ましてや、コンサルではお金はもらわないというIT企業もあるようだ。自分たちは、システムの構築や製品提供で儲ければいいから、コンサルは営業ツールだというわけだ。
考えてみて欲しい、「DXはシステムの構築や製品によって実現する」という前提になるのだから、そうならない結論は、排除されるだろう。例えば、何らかの課題を解決したい、あるいは、こんな「あるべき姿」を実現したいとなり、そのための最善の策が、業務の手順を変えること、あるいは、そもそも事業価値に結びついていない事業を辞めることだとの結論に至っても、それは、システムの構築や製品提供とは無関係だから、コンサルの報告としては、排除されるだろう。あるいは、自分たちには関係がないので、その具体的な詳細は、お客様にお任せしますとなるのではないか。それは、ほんとうにお客様のためなのだろうか。
前提となる実践がないから有効な方法論は作れない。結論ありきでは、最適解は見いだせない。そんな、「コンサル」なる営業ツールにつき合わされるお客様にしてみれば、いい迷惑であろう。
そんなことはない。お客様だって、真剣につき合ってくれているという人もいるだろう。ならば、そこには、お客様の経営トップや幹部は、参加しているのだろうか。
「何とかしなさい」と、上から降ってきた指示や命令に、担当者が、追い詰められ、何をすればいいのかわからないままに、あるいは、何とかしたいがないままに、「カタチ」を作るために、付き合っているだけではないのか。
冷静に、そして客観的に現状を捉えて欲しい。本当に、そのコンサルは、案件につながるのだろうか。手間を掛けて、優秀な人材を割いて、コストを掛けて、お愛想程度の売上にしかならないとすれば、営業ツールとしても、効率が悪い。そんなことにはなっていないだろうか。
じゃあ、どうすればいいのかと、イライラしている人もいるだろう。そういう方には、大変申し訳ないのだが、「こうすればいい!」という正解はない。お客様にも正解はなく、こちらにも正解がない。DXとは、まさにそんな現実に向きあうことからはじめるべきなのだと、私は思っている。
では、どうすればいいのかと、ますますイライラが、増しているはずだ。そういう方は、明日の続きを、ご覧頂くしかない。