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新入社員に未来を託す・そんな研修をやりたいと思う

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新入社員のための最新ITトレンド・1日研修」には、毎年多くの方に受講頂いている。

私が、この研修を始めたのは、1つの危機感からだ。それは、多くの企業が、ITの現在や未来を教えていないことだ。

これからは、DXだ、AIだ、IoTだと、その意味や本質を理解しないままに、多くの大人たちが、大騒ぎし、さてどのように使おうかと議論している。そんなことなど、どうでもいい話だ。デジタルが前提の世の中になり、事業を維持し、あるいは、競争を勝ち抜くためのやり方が大きく変わってしまったのだ。ビジネスの時間感覚は、かつてと比べものにならないほどに加速し、変化への即応力が問われている。それにどう対処するのかは、企業の文化やプロセスの問題であり、ITはその道具に過ぎない。しかし、道具の話しばかりが先行し、それを使うことを目的化した議論が横行している。胡散臭さも甚だしい。

ITとは業務の効率化、利便性向上のツールでしかない時代を生きてきた人たちが、その先陣を切って、胡散臭さをまき散らしているように見える。一方で、いまの若い世代は、そんな難しく考えていない。いや、難しく考えるどころか、ITの存在そのものを意識していない。当たり前の日常であり、ベッドの傍らにぬいぐるみを置いて、安らぎを得ていると同じように、スマホを置いている。そんな彼らに、古き良き時代の価値観を前提に、ITの基礎知識を学ばせることは、きっと彼らにとっては違和感であり、苦痛であろうと思う。

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何年か前のことだ。私が新入社員研修で講義をしている会場の最前列に、とても真面目そうな受講生が座った。彼は講義を始めるなり、自分のスマホをいじりはじめた。そのうち辞めるだろうと思っていたのだが、彼はそれを一向に辞めない。流石に見かねて、少し語気を荒げて、次のように彼を諭した。

「講義中に、スマホをいじるのは辞めなさい!」

すると彼はこのように答えた。

「すいません。講義のメモを取っていました。こちらの方が早いので。」

私はハッとした。そして、同時に恥ずかしいと思ったし、申し訳ないと思った。古き良き時代の価値観を押しつけるとは何事かと、偉そうなことを言っていた本人が、旧態依然とした常識を変えられないでいたことを思い知らされたからだ。まさに、ぶん殴られた想いだった。

「申し訳ない。そんなことも分からずに失礼しました。あなたのスタイルでやってください。」

「他の皆さんも、その方がやりやすければ、そうして下さい。分からなければ、講義中でも、自由にスマホで調べてください。それでも分からなければ、質問してください。」

100名ほどの受講者の顔が、一瞬に明るくなった。そして、私もまた、この現実を、身をもって理解した。

この研修を始めることにしたのも、そんなデジタル・ネイティブな人たちに、ITやデジタルの本質を伝えるためだ。そして、その本質から導かれる未来を考えてもらうためだ。

多くの人は、考えることもなく「当たり前」を当然のこととして受け入れている。しかし、ITに関わる仕事をしよう、あるいは、ITをビジネスの武器に活かしていこうとすると、「当たり前」の背景にある本質を考え、追求しなくてはいけない。そして、この「当たり前」の意味や価値を理解しなくてはいけない。それをどう使いこなすかの知識やスキルが必要だ。

彼らに未来を託すために、彼らが気付き、考える機会を提供するために、いまの自分たちの「当たり前」が、決して、所与のものではないということを、気付いてもらわなくちゃいけない。

残念ながら、多くの企業でITに関わる研修は、行われていない。IT企業であっても、40年以上も前のメインフレーム時代の「情報システムの基礎」についての講義に留まっている。メインフレームがいまのコンピューター・システムの原理原則を築いたことは紛れもない事実だし、それを教えることが間違っているわけではない。しかし、それに留まってしまい、新しいことが何も語られていない。また、原理原則を学ばせるのなら、コンピュータサイエンスやアルゴリズムの基礎的なこともやるべきだろう。しかし、「昔の最先端の教科書」に新しい言葉を継ぎ足してきただけの教科書をそのまま使っているといったことも多く、あまりにも中途半端だ。

例えば、仮想化は「サーバー分割の技術」程度にしか教えず、クラウド・コンピューティングも辞書の解説程度に語られるに過ぎない。GitHubSlack、アジャイル開発やDevOpsといった、もはや常識になろうとしていることなど、ひと言も語られていない。ゼロトラストなどという言葉すらない。本当に、それでいいのだろうか。

「仕事で必要な知識は実践で身につければいい」という研修担当者もいる。しかし、古い知識と古いやり方を守ろうとする現場が、新しいことを学ぶ「実践の機会」を彼らに与えてくれるはずもなく、結局は古いやり方がそのまま伝承され、新しいことを生みだす力を押さえ込んでしまう。

未来を彼らに示すことだ。会社でやっていることだけではない、広い世界があることに気付かせるべきだ。そして、自分たちの会社の現実を批判的に見る目を養わせることだ。そういう視点を与えることが、若い人たちに次代を託す力を与えることになる。

私が、毎年行っている「新入社員のための最新ITトレンド・1日研修」は、多くの企業にとって、毒薬かも知れないと思っている。それは、彼らのいまの会社の現実と、世の中の常識のギャップに気付かせることになるからだ。

だからこそ、意味があると思っている。彼らがそれに気付き、彼らが会社を変えてゆく。そのきっかけを提供することが、この研修の役割であろうと思う。

*追加開催決定!9月1日(火)

新入社員のための 「最新ITトレンド・1日研修」

ご要望多数により、「最新ITトレンド・1日研修」を9月1日(火)に追加開催することとなりました。
新入社員の皆さんはもとより、ITの最新トレンドやDXなどの基本的知識を整理したいとお考えの方には、お役に立つと思います。

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1万円(税込)/2021年度の新入社員と2年目の方
2万円(税込)/上記以外の方
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オンライン( zoom)にて開催します。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【8月度のコンテンツを更新しました】
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・新入社員のための最新ITトレンド1日研修・2021年版 改訂
・SI事業者のための最新のITトレンドとビジネス戦略・1日研修パッケージ 改訂
・DXに関連したチャートを充実
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研修パッケージ
・【改訂】総集編 2021年8月版
・【改訂】DX基礎編 デジタルトランスフォーメーションの本質とビジネス戦略
・【改訂】SI事業者のための最新のITトレンドとビジネス戦略 1日研修パッケージ
・【改訂】新入社員のための最新ITトレンド1日研修・2021年版・パッケージ 
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ビジネス戦略編・DX
【改訂】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以前 p.9
【改訂】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以降 p.10
【改訂】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/社会構造の変化 p.11
【新規】レイヤ構造と抽象化とは何か p. 12
【新規】デジタル化とデジタル技術の役割p.13
【新規】DXとデジタルとアーキテクチャーの関係 p.14
【新規】DXの構造 p.109
【新規】DXのメカニズム p.110
【新規】DXの公式 p.111
【改訂】ビジネスを生みだすための着眼点 p.194
【改訂】デジタル戦略の3つの公理 p.196
【新規】課題とは何か p.197
ビジネス戦略編・その他
【新規】作らない技術を前提としたシステム p.60
【新規】ITの変化とビジネス対応 p.61
【新規】技術力の転換 p.62
【新規】求められる戦略転換p.63
【新規】SI事業者の3つの戦略オプション p.64
【改訂】コロナ禍を見据えた3つの変革施策 p.65
ITインフラとプラットフォーム編
【改訂】攻撃サービスの低価格化と攻撃機会の増加 p.100
【改訂】対症療法では問題は解決しない p.101
【新規】APT攻撃による境界型防御の限界 p.102
下記につきましては、変更はありません。
 ITの歴史と最新のトレンド編
 サービス&アプリケーション・基本編
 サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
 サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
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 開発と運用編
 テクノロジー・トピックス編

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