森のワーキングスペース 混迷中!
森の学舎、ワーキングスペース、あるいは、研修施設を作ろうというプロジェクトが、大いに混迷している。何が混迷しているかというとこのプロジェクトの根幹となる事業価値の定義だ。
こういうことを相談する相手としては、この人しかいないと信頼している友人に相談をしたところ、まずは次のようなエレベーターピッチの形式に沿って、書いてみてはどうかとアドバイスをもらった。
- [潜在的なニーズを満たしたり、抱えている課題を解決したり]したい
- [ターゲットユーザー]向けの、
- [プロダクト名]というプロダクトは
- [プロダクトのカテゴリ]である。
- これは[重要な利点、対価に見合う説得力のある理由]ができ、
- [代替手段の最右翼]とは違って、
- [差別化の決定的な特徴]が備わっている
そこで、次のようなエレベータピッチを書いて、彼に意見を求めた。
- デジタル化によって業績を改善するためにモダンITを活かしたい、
- エンジニアやビジネス・プロフェッショナルのチーム向けの、
- 「XXX(未定)」という施設は、
- ワーキングスペースである。
- この施設は、IT環境や共同作業のための設備が充実しているだけではなく、これを活かした研修やチームビルディングなどのプログラムを合わせて提供でき、
- 都市部の研修施設やリゾート地のホテルや保養施設とは違って、
- 日常から隔絶された自然の中でありながら、モダンITを使うための設備やそれを活かしたプログラムを充実させている。
これに対して、次のようなコメントが返ってきた。
課題と解決策がフィット(合致)していないように思うのですが、大丈夫でしょうか?
「デジタル化によって業績を改善するためにモダンITを活かしたい」「エンジニアやビジネス・プロフェッショナルのチーム向け」が「IT環境や共同作業のための設備が充実しているだけではなく、これを活かした研修やチームビルディングなどのプログラムを合わせて提供できるワーキングスペース」を求めるのでしょうか?
いや、まったくその通りである。
何度も推敲を重ね、言葉を入れ替え、筋の通る文章にしたつもりだった。言葉には自信がある。うまく表現できている。それでいいのではないかとの甘えがあった。
しかし、それはエレベータピッチの形式にはめようと言葉としてのつじつまを揃えたに過ぎない。言うまでもないが、「形式」は、表現できない想いを第三者にも分かる表現に変えるためのツールだ。なによりも、自分がやろうとしていることの合理性を確認する手段である。
本来、「形式」が何を引き出そうとしているのかの「本質」に立ち返り、それを体現できなくては、意味がない。私の文章は、まさに、「形式」に囚われ、「本質」を置き去りにしてしまった典型と言える。
改めて、新しい事業を立ち上げることの難しさを実感している。たぶん、このシンプルな一文を自分が読んでも、そして第三者が読んでも「素晴らしい」と感じることができなければ、本プロジェクトの成功は覚束ない。
私は、自分が行う研修で、「課題から考えよ、手段に囚われるな、手段を使うことを目的にするな」と伝えている。しかし、いざ自分事になると、なかなかそうはいかない。そうなるのはなぜかと考えると、「手段に惚れているから」だ。場所、施設、あるいは、それを支えてくれる人たちが最高なのだ。それを大切にしたいと思っているからだ。あるいは、もうここまで来て引き返すわけにはいかない。何とかせねばとの想いが先行しているからだ。
しかし、そのことと「ビジネス合理性」は分けて考えなくてはいけない。あくまで「場所、施設、人」は手段であって目的ではない。理屈で考えれば、そんなことは簡単に分かる。しかし、並行していろいろなことが進み、課題もまた増えてくる。しかし、手段がいいから、何とかなるに違いないと安易な期待をいだいてしまう。そして、ついつい本質を見失ってしまうのだろう。いや、ここまで来ているのだから、何とかするしかないのだと、根性論が台頭する。そうやって、自分をごまかしている。
だからこそ、彼の本質を突く指摘は、痛いのだ。敵ではないかとさえ思う。しかし、本質をあきらかにすることは、事業を成功させるための要である。彼が言葉を濁さずに的確に指摘してくれることに感謝している。
「課題と解決策がフィット(合致)していない」との彼の指摘の本質は、「誰を顧客と定義し、そこにいかなる価値を提供するか」ということだ。もっとわかりやすく表現すれば、「誰に何を売り込めば買ってもらえるか」であろう。
これこそが、事業の核心である。手段に囚われることなく、そして言葉と戯れるのではなく、改めて原点に立ち返り、向きあってみようと思っている。
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