デジタル化とデジタル技術がビジネスにもたらす本質的な役割について
週末に何枚かの絵を描いてみた。もちろん、画才のない私なので、風景画を描いたとか、自然の中でスケッチを楽しんだわけではない。研修の教材として使えそうな絵を書いたに過ぎない。このチャートは、そんな中の1枚だ。
DXやデジタル・ビジネス、デジタル戦略などと世間は喧しい。では、なぜ「デジタル」でなければならないのかということであるが、その答えは、「レイヤ構造化と抽象化」である。
このチャートに描いたように、複雑な現実世界の業務プロセスをレイヤ構造化する。さらには、その機能を抽象化された要素へと分解する。デジタル化の本質は、ここにあると言ってもいいだろう。
社会の変化が緩やかであれば、個別最適化された縦割りの機能組織や、属人化した個人のノウハウは、大きな問題にならなかった。緩やかに、時間をかけて、社会の変化に合わせて変えていくことができたからだ。しかし、いまやそのような悠長なことを言っている余裕はない。
社会環境の変化は、かつてとは比べられないほどに加速し、将来を予測することは容易なことではない。この状況に対処するために、圧倒的なビジネス・スピードを手に入れ、変化に即応することが、企業が生き残る前提となった。
そのためには、業務プロセスや、これを構成する機能が、組織や個人に固定化されているようでは、変化に対応して、直ちにそれらを組み替えることは容易なことではない。そこで、デジタル化によって、業務プロセスをアプリケーション、業務共通基盤、統合データベースといった階層構造に整理し直し、さらには機能をコンテナやマイクロサービスに分解することで、それらの組み替えや新たな組合せが容易にできるようにする。
また、そうしておけば、高度に専門化された企業が提供するクラウド・サービスを、APIを介して組み入れることもできるようになり、自分たちだけでは実現できない、機能を自分たちの業務プロセスに組み入れ、変化への対応力を高めることもできる。
このようなレイヤ構造化、抽象化された業務の機能を、アジャイル開発やDevOpsによって、俊敏に組み替え、あるいは、新たな組合せ作ることができれば、変化への即応力を確実にできるわけだ。
このようなデジタル化の本質を企業活動のメカニズムに組み入れることをデジタル・トランスフォーメーションと考えることは、妥当な解釈ではないだろうか。
いまだ世間では、DXで業務を改善するとの言説は多い。あるいは、AIやデータを活用した新規事業を立ち上げることといった話もある。それが間違っているわけではないが、それだでは、これまで幾度なく現れては消えていったITのバズワードの類と何が違うのかを説明することはできない。
X=Transform=変革であるとすれば、その変革をD=Digital=デジタルと結びつける解釈が必要だ。まさに、その変革をもたらす本質こそ、デジタル化による「レイヤ構造化と抽象化」にあると言えるだろう。
この解釈は、私のオリジナルではない。西山圭太氏の著書「DXの思考法」からの借用だ。それを私なりの解釈を加えて、このようなチャートに描き直してみたにすぎない。以下の記事にも、別の視点から詳しく解説したので、よろしければお読みいただきたい。
明日は、さらに経営とアーキテクチャについて、チャートを書いたので、そちらを解説しようと思う。