説教!講師の選び方
先日、ある大手企業の人材育成担当者から、社員のITリテラシー向上のための研修を行いたく、講師を探しているので、打ち合わせの時間を頂けないかとのメールをいただいた。まだ、どこに頼むかは分からないが、それを決めるために話しを聞きたいというのだ。
もちろん、大歓迎である。ただ、少し不安もよぎった。「ITリテラシーの向上」や「DX」についてという、流行のバズワードが並べられているだけであり、「1時間」という時間の制約も気になった。ただ、いずれにしても、話をしたいとのご依頼であり、オンラインでの打ち合わせになった。
さて、打ち合わせとなって、案の定、不安が的中した。おおよそ、次のような話があった。
- チャートを見せながら、自分たちは、こんな研修カリキュラムを行おうとしている。
- そのなかで、最新のITトレンドとDXについて話して欲しい。ITリテラシーがないので、事例などで分かりやすく、とにかく知識の底上げをしたい。
- いろいろな部門から参加するので、それぞれの部門の立場で、何をすればいいのかも話して欲しい。
それができるかという質問だった。それ以外の質問はなかった。
相手の話は、5分くらいで終わった。ただ、これでは、講師を選ぶにも、何を選定基準にすればいいのか分からないだろう。また、若い人たちであったし、とても真剣で、一生懸命だった。そこで、まだ5分ほどしか立っていなかったので、余計なお世話ながら、オヤジの説教をかますことにした。
私は、次のように問いかけた。
「何をされたいかは分かりました。しかし、この研修の結果として、どのような"あるべき姿"つまり、研修をうけられた方の行動や意識をどのように変えたいのでしょうか。つまり、研修の達成目標ですね。それについて、教えてもらえないですか?」
「最新のトレンドやDXについての知識を底上げするのもいいのですが、流石に1時間という制限の中では、無理があります。ならば、"知識の底上げ"ではなく、"意欲の底上げ"を目指したらどうでしょうか。知識をインプットすることではなく、自分たちの現状と世の中の変化のギャップを伝え、このままでは大変なことになる、自分たちも何とかしなければと感じてもらうのです。知識を網羅してもこの時間では消化不良でフラストレーションを生みだすだけですし、知らない言葉に圧倒されて終わってしまいます。それよりも、このままでは大変なことになると言うことに気付いてもらうことのほうが、受講者にとっては、満足度も高いと思いますよ。」
「営業部門や製造部門、スタッフ部門と、幅広く参加されるわけですよね。だとすると、当然に、それぞれの求める成果は、違います。そういう人たちそれぞれについて、何をすべきかを説明するとなると、1時間という時間の中では、あまりにも窮屈な気がします。ではコンパクトに一般論を説明しても、意識や行動の変化にはつながりません。ならば、もっと、焦点を絞り込んだ話しにして、個別の話しは、別にしたほうがいいのではありませんか?」
そして、さらに余計なお世話を続けた。
「講師を選ばれるのであれば、研修の結果としての"あるべき姿"を皆さん自身が、明確に定義し、その上で、その達成にふさわしい話ができる人かどうかを考えるといいですよ。AIやIoT、DXなんてしょせん手段です。むしろ大切なのは、いまに満足せず、この時代の変化に対応することへの意欲をかき立てることこそ、大切なのではないかと思うのです。そういう話ができる人を講師に選ばれるといいかもしれませんね。」
これについての意見も質問もありませんでした。そして、最後にこう付け加えました。
「皆さんの取り組みが、成功されることを願っています。そのためにも、まずは、皆さん自身が、めざす"あるべき姿"を徹底して議論し、その実現に貢献できる講師は誰かという選び方をされるといいですよ。最新トレンドやDXを話せるかどうかではなく、自分たちの"あるべき姿"の達成に役立つかどうかです。そんな基準で、講師を選定されることをおすすめします。それは、必ずしもITに関わる仕事をしている方とは限りません。もっと、広い視点で、選択肢を持たれる方がいいかもしれませんね。」
ああ、また余計なお世話をしてしまった。歳を重ねると、確実に説教じみた話しが増える。でも、こうやって若い人たちが頑張っているのは、心から応援したい。成功を祈るのみである。
今年は、例年開催していました「最新ITトレンド・1日研修」に加え、「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」を追加しました。
また、新入社員以外の方についても、参加費用を大幅に引き下げ(41,800円->20,000円・共に税込み)、参加しやすくしました。
どうぞ、ご検討ください。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
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研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
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ビジネス戦略編・DX
- 【新規】データとUXとサービス p.17
- 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
- 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
- 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
- 【新規】データの価値 p.129
- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
- 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
- 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT