「やはり、研修は対面でなきゃダメ!」では、もう講師廃業だぞ
「オンライン研修では、なかなかうまく伝わらない。やはり、研修は対面でなきゃダメ!」
研修講師をしているある方が、このような話しをされていた。確かに、現場での臨場感は、受講者の集中力を高めるには効果的だし、ディスカッションやワークショップでは、口角泡飛ばす議論や大きな模造紙に書き出すなどの身体活動が、研修効果を高めてくれることに異論はない。
しかし、オンラインでも工夫次第で、できることがいろいろある。私なりの工夫について、いくつか紹介しよう。
オーバーアクション
オンラインで講義をすると身体的な表現、つまりボディランゲージが使えず、この点に於いて、相手に伝える情報量が減少する。これを補う手段として、オーバーアクションが有効だ。話しの緩急や強弱のコントラストを意識して強調することだ。
例えば、話しのスピードを速いところと遅いところを極端にしてみるとか、とてつもない大声を発し、また、すぐにささやくようにマイクに語りかけてみる。途中に介在する会議システムが、そのコントラストを自動で調整してしまうので、相手には、こちらで自分が感じているほどには分からないものだ。ただ、それぐらいやらないと、相手には単調に感じられてしまう。
気恥ずかしいと思われるかも知れない。しかし、講師はサービス業である。受講者の集中力を維持するためには、プロとして、このような工夫をすべきだろう。
絞り込まれたビジュアル
リアルな対面講義に於いて、ボディランゲージによる情報量はかなり多い。そのため、経文のように文字が敷き詰められたプレゼンテーションであっても、ボディランゲージによって補強された話し言葉によって、要点を伝えることが比較的容易になる。しかし、オンラインではなかなか、そうはいかないだろう。
また、受講生が使うパソコン、中には、タブレットやスマートフォンは、大きなプロジェクター画面とはことなり、かなり小さく、情報を詰め込んだビジーなプレゼンテーションは、イスラムの細密画か仏教の曼荼羅のごとくになり、それを見るだけでもストレスを増す。
メッセージを絞り込み、シンプルに力強く伝えることを心がける必要がある。後でダウンロードした資料を読んでもらうことを想定し、小さめの文字で説明を書き加えるのは構わないが、講義の中で伝えるべき要素は、大胆かつシンプルに表現することを心がけるべきだ。
このチャートは、昨夜のITソリューション塾のオンライン講義で使った「モノのサービス化」を説明するためのチャートだ。講義での言葉による解説を受け止める受け皿をチャートによって提供し、言葉による説明を、お皿の中にひとつひとつ納めてもらおうというわけだ。
チャートで説明を完結させるのではなく、チャートは受け皿、言葉は中身という役割分担を意識して、絞り込んだ要素でビジュアルを作ることを心がけるといいだろう。
オンラインならではの対話
リアルな対面の講義では、受講者の傍らに移動して、声を掛けたり、質問をしたりすることができる。また、受講者の目の動きやメモの獲り具合、身体の動きから、集中度合いや、興味関心の有無、理解ができているかどうかを、おおよそ理解できる。それに合わせて、話しの展開を変更することができる。
しかし、オンラインでは、これがかなり難しい。特に、ビデオをオフにしている人が多い場合、いや、そもそもビデオが使えないシステム環境で、講義をすることも多く、受講者のリアクションを確認するのは、かなり難しい。
それを補う手段として、私が使っているのが、「sli.do」である。
「気がついたこと、驚いたこと、もっと知りたいことなど、書き込んでくださいね。ニコニコ動画みたいな感覚で構いません。みんなで講義を盛り上げましょう。」
このメッセージへの反応が、こんな感じである。このようなコメントが延々と続く。
これは、ある新入社員研修での書き込みだが、流石に若い人たちのノリはいい。そうやって、プロアクティブに講義に関わってもらうことで、受講者間のささやかなコミュニケーションが生まれる。講義の途中で、この書き込みを共有しながら、私の感想やコメントを話すことで、講師と受講者の距離を縮めるコトにも役立っている。
オンライン研修でも、やれることはいろいろとある。そういう工夫をすることなく、「研修は対面でなきゃダメ!」というのは、いかがなのか。
ちなみに、対面であっても、単調で、分かりづらい講義をする人がいる。「研修は対面でもダメ!」な人は、あらためて、オンライン環境で、自分の講義の進め方について、その課題を見直す機会にすればいい。
ここに紹介した要素はオフラインでも活かせるだろう。そして、何よりも、コロナ禍後の研修は、目的や内容によって、オンラインとオフラインを使い分け、組み合わせるハイブリッドになるだろう。だからこそ、いまはオンラインのスキルを磨く絶好の機会であると捉え、自分なりの工夫をしてみては、どうだろうか。それが、講師として、生き延びる知恵となる。
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