「お相手の立場に立つ」とは「自分ならこうする」を考えること
「お客様の立場になって、考えなさい!」
上司や先輩から、そんな話を聞かされた方もあるかも知れません。しかし、「相手の立場に立つ」とは、具体的に何をすることなのでしょうか?
「もし、自分が相手の立場で仕事をするなら、自分は、どう考え、どう判断し、どう行動するかを考えること」
私は、このように考えています。決して、「相手と同じように考えて、相手と同じように判断して、行動すること」ではありません。
相手の立場に立てと言われたとき、相手がどう行動するかを考えることは、なにも間違ったことではなく、相手に寄り添い、その心情を理解するためには、必要なことだと思います。しかし、自分は決して、相手と同じではありません。「相手と同じ」を前提に考え行動することには、自ずと制約があります。
自分は相手とは異なる存在であることを前提に、相手がいま置かれている立場や役職、あるいは、境遇や人間関係を想像し、そのような状況下で、自分ならばこう考え、判断し、行動すると、思い描くことです。当然、相手とは違う考えや行動になる可能性があります。それを相手に伝えることで、「相手の立場に立つ」ことができると思うのです。
言葉を換えれば、「自分ならこうする」という考えを持ち、示すことが、「相手の立場に立つ」ということです。
自分とは異なる考えや行動を示されたとき、人はその差異を考えるでしょう。その理由を説明し、さらには対話し、どのように考え行動すればいいのかを、多面的に考える機会を提供することで、相手は、最適な判断を下す材料を手に入れられるに違いありません。そんな機会を提供する行動こそ、「相手の立場になって考える」ことではないかと思うのです。
営業が案件のきっかけを掴むには、この意味での「お客様の立場になって、考え」、自分の意見を示し、相手との対話の糸口を掴むことからはじめるべきなのだと思います。
DXやビジネスのデジタル化、ITの戦略的な活用が叫ばれるいま、お客様はこの状況に何とかしたいと考えているはずです。しかし、何をすればいいのかが分からないで困っている人たちも多いのではないでしょうか。そんなお客様に、「課題やテーマを教えていただければ、ソリューションを提案させて頂きます」などと、無神経なことを平気で言う営業が現れたら、本当にガッカリでしょう。もし私が、お客様であれば、そんな営業は、直ちに出入り禁止です。
「課題やテーマが分からないから教えて欲しい」と考えているのです。それに気がつかないとすれば、営業であるかどうか以前の問題として、「なんとデリカシーのないヤツなんだ」と思うに違いありません。恋愛の失敗も、この手のケースが多いように思います。
それは、ともかくとして、「自分がお客様の立場に立つなら、こう考え、こう判断し、このように行動します!」と伝えることからはじめるべきでしょう。それが提言です。その提言が、お客様にとって、最適かどうかは分かりません。しかし、徹底して「お客様の立場になって」考え抜いた結果として、「自分ならこうします」と、自分の正解を示すことができれば、相手もまた「自分ならこうする」を考える糸口が見つかるかも知れません。そうやって、対話のきっかけを掴むことが、案件を掘り起こすことになるのです。
「お客様に何か課題やテーマはありませんか?」と問い、「実はこんなことで困っています。何とかなりませんかねぇ。」と言ってもらえる話しばかりなら、こちらが話しを聞きに行かなくても、十分な信頼関係があれば、向こうから話を持ちかけてくれるに違いありません。そのような仕事は、気の利いたWebサービスや、やがてはAIに代替されるでしょう。
人間である営業なら、「提言」を武器に、きっかけを掴むことを心がけるべきなのです。DXという言葉をおまじないのごとく唱えるのはほどほどにして、お客様の立場に立って、考え、提言することを心がけるべきです。
新人の営業たちにも、そんな営業の「あるべき姿」を伝える必要があると、私は考えています。
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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
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ビジネス戦略編・DX
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- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
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