コンサル力と営業力に共通する2つのスキル
両者共に総合力であって、特定のスキルだけで成り立つものではない。ただ、対話力と知識力は、両者に共通する土台になるだろう。
先ず対話力であるが、これを、質問力と表現を変えてもいいだろう。質問力は、相手の知っている情報を引き出すことが目的ではない。相手に気付かせることが目的だ。例えば、次のような質問を投げかけることである。
- 御社では、未だ業務の多くが、オンプレミスで稼働しています。しかし、システムの維持管理や新たなシステム需要が増える中、いまの人員ではまかなえきれないのではないでしょうか。クラウドへの移行やシステムそのものの刷新など、ご検討されているのでしょうか。
- 社長が、DXの推進を経営課題に掲げられていますが、こちらの部門では、具体的にどのような取り組みをされようとしているのでしょうか。
- リモートワークを推進されるとのことですが、サイバー・セキュリティについては、いまのVPNやファイヤーウォールを介したやり方では、御社の全社員をカバーできる能力はないように思います。既存の回線能力やファイヤーウォールの能力強化にたよるとなると、コスト的にも運用管理的に相当負担が増加するように思うのですが、この点についての懸念はないのでしょうか。
相手にとっては言われて欲しくないことかもしれない。あるいは、課題を抱えていて、どうすればいいのか、分からないので困っていることかもしれない。それを指摘し、相手の心を揺さぶり、困らせ、考えさせ、本心を引き出す事が、質問の醍醐味であろう。
こちらが知らない情報を教えてもらうのに、質問力は不要だ。項目を列挙し、それを差し出せばいい。しかし、そういう情報だけでは見えてこない、「何とかしたいができないで困っている」が、まさに案件や提案の核心であるわけで、それを引き出せないでは、仕事にならない。
昨今、DXやデジタル化という言葉が、巷を賑わしている。そして、お客様もまた、これをどうにかしたいと思ったっている。しかし、何をすればいいのか分からない。そんな相手に、「何をすればいいのか教えて頂ければ、ふさわしいソリューションを提案させて頂きます」と問いかけようものなら、きっと相手は困ってしまうだろうし、そもそも、分かっていないヤツだと、信用を失うだろう。
もちろん、御用聞きがわるいのではない。ただ、そんなことは、こちらからわざわざ伺いに行かなくても、人間関係を絶やさない努力さえしておけば、向こうからお呼びがかかるだろう。
- こうすればいいのではありませんか?
- 御社のあるべき姿はこういうこことではないですか?
- ならば、まずはここからはじめるべきです!
このように提言し、相手との対話の機会を見つけることも、必要になるだろう。
対話力や質問力の本質は、相手に課題の存在に気付かせ、整理させ、是非とも解決したいという意欲を引き出す事にある。その意欲に対して、協力を申し出ることで、案件や提案のきっかけを掴むことができる。
知識力については、言うまでもないだろう。対話力の土台となるのが、知識力だ。様々な常識に広く精通し、それら知識を相手の言葉に関連付けて、話しを繰り出すことができて、対話は深まり、質問の鋭さも磨かれる。
もちろん、人間は全知全能ではない。知らないことの方が遥かに多い。だからこそ、日々学び続けるしかないわけで、これは一生続くだろう。
ただ、そんな一般論を語っていても、分かりきった話だし、正論である以上否定の余地はない。ならば、どのように学べばいいのか。
「アウトプットすること」
私は、これに尽きると思う。文章やプレゼンテーションを作りまくることだ。営業もコンサルも、相手との対話が武器である。ならば、武器を磨き、高性能化することは、基本だ。そのためには、アウトプットの数をこなし、その能力に徹底して磨きを掛けることであろう。
アウトプットとインプットの比率は、1対10の割合だ。もちろん感覚的な尺度に過ぎないが、1のアウトプットを作ろうとすると、様々な情報を集めて、それを自分意図に沿って整理し、まとめ上げなくてはならない。この過程で、インプットは増え、伝えるべき言葉は磨かれ、頭の中に知識のデータベースが築かれる。そしてそうなれば、いかなる質問に対しても、的確に応えられる能力を身につけることができるだろう。
世間では、未だ営業とコンサルは違う職種だという人たちがいる。しかし、こと、ITに関わる仕事をしている人たちにとっては、もうこの区別をすることに意味がない。唯一違うとすれば、営業はサービスや製品を販売することで対価を得る、コンサルはお客様のための物語を描くことで対価を得るということかもしれない。ただ、営業について言えば、自社で一から製品を作っているのではないケースも多いわけで、唯一絶対の差別化は難しい。また、ビジネスの主役がサービスへと大きくシフトする中、益々この傾向が強まっている。
そう考えれば、お客様が買うのは製品やサービスではなく、物語だ。製品やサービスはそれに付随する。そう考えれば、両者を区別することに、もはや意味がないように思う。
対話力と知識力は、いずれにしても、両者に共通する武器であることに違いはない。AIが劇的に性能を進化させているが、クロスオーバーな知識を土台に、相手に反応して、その意図を理解し、的確な質問を投げかけるには、まだまだ時間がかかるだろう。いや、その仕組みを考えれば、"それらしい質問"はできても"本質を貫く質問"は原理的に不可能だ。まさにこの点にこそ、人間が営業やコンサルであることの価値があると言えるだろう。
今年は、例年開催していました「最新ITトレンド・1日研修」に加え、「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」を追加しました。
また、新入社員以外の方についても、参加費用を大幅に引き下げ(41,800円->20,000円・共に税込み)、参加しやすくしました。
どうぞ、ご検討ください。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
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研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
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ビジネス戦略編・DX
- 【新規】データとUXとサービス p.17
- 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
- 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
- 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
- 【新規】データの価値 p.129
- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
- 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
- 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT