DXという魔法の杖はない
- どの産業分野で5Gが最も使われるようになるでしょうか?
- AIをどのように使うのが、最も効果的でしょうか?
- IoTを使うには、どのような用途が有効だとお考えですか?
- できれば、成功事例なども併せて教えてください。
ITのトレンドやデジタル戦略などの講義や講演をさせて頂くと、このようなご質問を頂くことがあります。大変申し訳ないのですが、いずれも、「わかりません」とお答えするしかありません。
テクノロジーを使ったからといって、ビジネスの課題を解決できるわけでもありません。優先すべきは戦略であり、その戦略を実践するには、どのようなテクノロジーの選択や組合せがいいのかは、容易には判断できません。戦略がなければ、このような質問は、知的好奇心を満たすためのエンターテイメントでしかないのです。
もちろん知的エンターテイメントが悪いわけではありませんし、そういう好奇心が、新たな気付きにつながることを否定するものではありません。むしろ、このようなご質問をされる人たちの多くは、情報の感度が高い人たちだと言ってもいいでしょう。
しかし、それを聞くことで、直ぐに役に立つことを知りたいと考え、出来合いのテクノロジーの活用方法や他社の成功事例を聞きたいというのであれば、なんとも残念なことです。
他社の成功事例を聞いても、自分たちにとっての成功のイメージがないままでは、参考にはならないでしょう。直ぐに役に立つ何かを欲しい人にとっては、「凄いけど、うちは無理だなぁ」と短絡的に結論づけてしまうことになるでしょう。
昨今のDXについての過剰なブームについても、同様に見えるのは私だけでしょうか。
- DXに取り組むことで、どのような変革が期待できるでしょうか?
- DXに取り組むには、先ず何をしなければならないのでしょうか?
- DXの実践には、どのようなテクノロジーを使えばいいのでしょうか?
DXについての講演で、こんなご質問を頂く機会が増えました。DXが流行だから乗り遅れてはいけないと焦る事業会社、このブームに乗じてビジネスのチャンスを拡大しようとするITベンダー、そんな世の中の流れに乗じて視聴率や購読者を増やそうとするメディアの三つ巴で、DXはヒートアップしています。
DXとはなにか、AIやIoTなどのテクノロジーは、どこに向かい、何ができるようになるのかを知ろうとすることは、大切なことだと思います。しかし、それらを「知る」目的は、「使うこと」ではなく、事業課題の解決や戦略の実践のための「手段の選択肢を増やす」や「現時点で最も有効な手段を見つける」、「判断や選択の視点を多様化する」ためであるということを肝に命じておくべきです。
新しいテクノロジーを知れば知るほど、DXを理解しようとすればするほど、それが魔法の杖に見えてくるのかもしれません。ただ、最新のテクノロジーを使ったとしても、それが瞬時に解決することはありません。DXという看板をかざせば、自分たちが変われるわけではないのです。
課題の定義、戦略の策定、手段の選択について、手順を踏んで行うことです。手段とは、テクノロジーだけではなく、ビジネス・モデルやビジネス・プロセス、業績評価基準や雇用制度なども含みます。ITだとかデジタルは、大切ではありますが、一連の取り組みのひとつでしかありません。
要は、自分がどうしたいかです。「こうしたい、ならば、どういうテクノロジーが一番良いのだろうか」、「こうするための最善の手段として、どのようなテクノロジーが使えそうか」というご質問であれば、何らかの視点を示すことはできると思います。
ITベンダーが、「お客様のDXの実現に貢献する」とか「お客様のDXパートナーになる」と標榜するのなら、デジタルを使うことではなく、上記の手順を実践する伴走者となることです。そして、そのためのノウハウとスキルを磨くべきです。IoTやAIを使えば、こんなことができますと魔法の杖を宣伝するのは、どうかと思います。
DXという魔法の杖はありません。自分たちが直面する課題、それを克服するため戦略への真摯でひたむきな態度こそが、全てに優先されるべきです。それが、DXを実現する最善の道であると心得ておくべきでしょう。
詳しくは、上記バナーをクリックしてください。
今年は、例年開催していました「最新ITトレンド・1日研修」に加え、「ソリューション営業の基本と実践・1日研修」を追加しました。
また、新入社員以外の方についても、参加費用を大幅に引き下げ(41,800円->20,000円・共に税込み)、参加しやすくしました。
どうぞ、ご検討ください。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
======
・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
======
研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
======
ビジネス戦略編・DX
- 【新規】データとUXとサービス p.17
- 【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
- 【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
- 【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
- 【新規】データの価値 p.129
- 【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
- 【新規】アナリティクス・プロセス p.131
- 【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
- 【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
- 【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
- 【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
- 【新規】アナリティクスのプロセス p.139
- 【新規】ETL p.140
- 【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
- 【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
- 【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
- 【新規】開発と運用 現状 p.26
- 【新規】開発と運用 これから p.27
- 【新規】DevOpsの全体像 p.28
- 【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
- 【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
- 【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
- 【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
- 【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT