現場が「最新」を教えられない3つの理由
新入社員研修が始まった企業も多いだろう。それぞれに知恵を絞り、いまの時代に、あるいは、いまの若い人たちの感性に適応しようと努力している研修担当者のご苦労は、大変なことだと思う。また、コロナ禍という制約の中で、講義方法の工夫が求められているが、これもまた、悩ましい。
研修担当もかつては新入社員だったわけで、そんな時代に思いを馳せてやればいいじゃないかという人もいる。しかし、研修をうける身と研修を施す身では、自ずと思考回路が違うわけだし、そもそも、時代背景が、短期間で大きく変わってしまう時代に、それもまたままならない。
それでも、社会人として、独り立ちさせるためにと、知恵を絞り、工夫を重ねている研修担当者も少なくはない。その想いは、新入社員たちにも伝わるに違いない。
そんな彼らをして、どうしようもないことがある。それは、いま、この時のビジネスの最前線を教えることだ。
多くの企業で、人事担当は基本や基礎を教え、部門配属後に現場で最新のことを学ばせるという、不文律のようなものがある。一見理にかなっているようではあるが、これは間違っている。
これは、大変に残念な事実である。例えば、彼らがお客様に行けば、直ちにDXという言葉に向きあわなくてはならない。AIやIoTもまた、頻繁にやり取りされている。昨今のお客様の内製化に向けた積極的な取り組みを考えれば、アジャイル開発、DevOps、クラウド、さらには、コンテナやサーバーレス、マイクロサービスと言った言葉も、会話に出てくるであろう。5Gやゼロトラストは、お客様に取って、大きな関心事であることは言うまでもない。
そんな言葉が、当たり前に使われているのに、何を言っているのか分からないままに、現場に送り出すというのは、竹槍を持ってB29を撃墜せよと言うに等しい。事実、話しについていけないとか、お客様に行くのが怖いとか、そんな話も耳にする。
お叱りを受けることを覚悟で申し上げれば、人事担当者の本音としては、そこは仕事に直結することだから、現場の自分たちでやってくれと言うことなのだろう。
しかし、私は、長年、IT企業の事業コンサルや人材育成に関わっているが、現場が、そんなITの最新事情を教えることことができる企業は極めて少ない。だからこそ、人事がその役割を引き受けるべきなのだ。
現場が「最新」を教えられないのは、次の3つの理由があるからだ。
現場が最新のITに関わっていない
現場の仕事の大半は、「最新」から遅れているのは当然のことだ。技術が枯れて、お客様にもなじみ、確固たる世の中の常識になったものが、ルーチンワークとなり、やっと収益を稼げるようになるのは世の常だ。だから、現場が最新のITに関わっていないのは、当然のことだろう。
体系的に教えるスキルを持っていない
実践で体験を積み上げても、それを経験として一般化し、人に伝えられるカタチに整えるには、それなりの感性と努力がいる。残念ながら、現場で忙しい日々を送っている人たちのだれもが、できるわけではない。断片的な体験から、教訓を伝えることに意味がないとは思わないが、それは、新入社員に、「先輩は凄い、オレも頑張ろう」という情動は呼び起こしても、知識やスキルとして、定着するわけではない。
体系的に整理して教えるには、現場で仕事をこなすことに求められるスキルとは異なるスキルが求められる。それを誰しもが持っているわけではないと言うことだ。体系的に教えることで、彼らのスキルに下駄を履かすことができれば、即戦力、あるいは、未来の担い手として、まずは頭でっかちでも、動き出す力が芽生えるのではないか。
現場の管理者にモチベーションがない
「若い人たちには、新しいことにチャレンジして欲しい」といった言葉をよくきくが、「まずはいまの仕事をちゃんとこなせるようになってからね」との前提がつく。当然ではあるが、自分たちの部門の稼ぎ手として配属させられたのだから、いま稼げている仕事でしっかりと稼いでくれなければ意味がない。もちろん、「新しいことにチャレンジして欲しい」に嘘はないのだろうが、優先順位は下がる。
冷静に考えて欲しい。ビジネス環境の趨勢を見れば、変化のスピードは加速している。先取りこそが、ビジネス成長の原動力だ。新入社員にその担い手を期待すべきではないか。いまはベテランに預け、新しいことに彼らを積極的に投入してこそ、自分たちの未来は明るい。
現場のいまの当たり前に、彼らを染める前に、世の中の次を教えておくべきであろう。それは、経営の意志であるべきだし、人事の大切の役目ではないのか。
若い人には勢いがある。その勢いを、将来の事業の資産に変えるためには、彼らに未来を教え、変革の担い手としての意識と意欲を高めるべきだ。それは、間違えなく楽しい仕事である。たぶん、抵抗勢力は沢山いる。そういう連中に打ち勝つためにも新入社員たちをしっかり理論武装させるべきだ。
「ITは凄い、自分が未来を創るんだ」
そんな思いを持たせることである。もちろん、全員がそうはならないだろうが、そういう人たちを少しでも増やすことに、私は自分の役割を果たしたいと思っている。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【4月度のコンテンツを更新しました】
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・「AIとロボット」を「AIとデータ」に変更し、データについてのプレゼンテーションを充実させました。
・戦略編をDXとそれ以外の内容に分割しました。
・開発と運用に、新しいコンテンツを追加しました
・テクノロジー・トピックスのRPA/ローコード開発、量子コンピュータ、ブロックチェーンを刷新しました。
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研修パッケージ
・総集編 2021年4月版・最新の資料を反映
・DX基礎編 改訂
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ビジネス戦略編・DX
【新規】データとUXとサービス p.17
【新規】デジタル×データ×AI が支える存続と成長のプロセス p.68
【新規】DXとは圧倒的なスピードを手に入れること p.72
【新規】IT企業とデジタル企業 p.155
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
【新規】データの価値 p.129
【新規】情報とビジネスインテリジェンス・プロセス p.130
【新規】アナリティクス・プロセス p.131
【新規】データ尺度の統計学的分類 p.135
【新規】機械学習とデータサイエンス p.136
【新規】アナリティクスとビジネス・インテリジェンス p.137
【新規】ビジネス・インテリジェンスの適用とツール p.138
【新規】アナリティクスのプロセス p.139
【新規】ETL p.140
【新規】データウェアハウス DWH Data Warehouse p.141
【新規】データウェアハウス(DWH)とデータマート(DM) p.142
*「AIとロボット」から「AIとデータ」に変更しました。
開発と運用編
【新規】クラウドの普及による責任区分の変化 p.25
【新規】開発と運用 現状 p.26
【新規】開発と運用 これから p.27
【新規】DevOpsの全体像 p.28
【新規】気付きからプロダクトに至る全体プロセス p.29
【新規】アジャイル開発のプロセス p.37
【新規】アジャイル開発の進め方 p.39
*ローコード開発については、RPAの資料と合わせてひとつにまとめました。
テクノロジー・トピックス編
【改訂】ブロックチェーン、量子コンピュータの資料を刷新しました。
【改訂】RPAとローコード開発を組合せた新たな資料を作りました。
下記につきましては、変更はありません。
- ITインフラとプラットフォーム編
- クラウド・コンピューティング編
- ITの歴史と最新のトレンド編
- サービス&アプリケーション・基本編
- サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT