【図解】コレ1枚でわかるデータの価値
1990年代の前半に登場したインターネットと携帯電話の普及により、情報化の波が押し寄せ、国境を越えた情報通信ネットワークの形成が進みました。さらに2007年のApple社のiPhoneの発売をきっかけとしたスマートフォンの登場が、人々の意識や行動の範囲を、時間や場所を超えた世界的な広がりとなりました。その結果、世界中で人々の行動様式や価値観が変化し、社会や経済にも大きな影響を与えることになり、変化のスピードを加速し、不確実性を急速に拡大させることにもなりました。
我が国にあっては、2000年代からはじまるブロードバンド通信と携帯電話やスマートウォンとの急速な普及により、世界でも有数の情報通信ネットワーク基盤が整うことになり、今後、高速・低遅延・他端末接続が可能な第5世代移動通信システム(5G)の普及により、情報通信ネットワークは更なる進化を遂げることが期待さています。
この変化により、様々なヒト・モノ・組織がネットワークにつながるようになり、大量のデジタル・データの生成、収集、蓄積が進みつつあります。それらデータをAI(機械学習)で分析し、業務処理の効率化や予測精度の向上、最適なアドバイスの提供、効率的な機械の制御などに活用することが可能となり、新たな価値を生みだしつつあります。
これは現実世界の変化にとどまりません。IoTによって現実世界からより多くのデータが収集できると、サイバー空間においても、現実世界の状況をより詳細に再現することができるようになります。これが、デジタル・ツインすなわち、アナログな現実世界のデジタルな双子の兄弟であり、膨大なデータの集積/ビッグ・データです。
そんなデジタル・ツインを使えば、現実世界だけでは気付くことのできない新しい視点や考え方も生まれ、現実世界のみでは困難だった複雑な原因の解明や将来予測、最適な対策・計画を検討することも可能となります。このような現実世界とサイバー空間が一体となって新たな価値を生みだす仕組みをサイバー・フィジカル・システム(CPS)と呼びます。
デジタル・ツイン、すなわち、現実世界のものごとやできごとをデータで捉えた姿とCPSは、企業のあり方とその発展に大きな影響を与えることとなります。
ただし、デジタル・ツインを作るためにデータを多く集めればいいというものでもありません。データそのものには必ずしも価値はなく、そこから取り出される様々な特徴やパターン、そこから導かれる示唆や洞察にこそ価値があるのです。そんな価値を生みだすには、AIの分析精度向上や様々な領域での活用が欠かせません。また、その前提として、データの量だけではなく、その種類・質が重要であり、多様で高品質なデータを大量にもっていることが競争力を左右し、イノベーションの源泉にもなるのです。
そんなこれからの社会では、市場での競争力の源泉が、モノからデータへとシフトします。これは、現実世界とサイバー空間の主従関係が逆転することを意味しています。つまり、データをうまく利活用できるかどうかが、企業の死命を制することになったのです。
そんなデータを利活用すれば、企業に3つの「価値」をもたらすことができます。
1つ目の価値は「見える化」です。社内外のあらゆる事実をデータで捉え、「見える化」することです。これまで見えなかった市場やユーザーのニーズ、経営状況などが、分かりやすいカタチで「見える化」され、迅速、的確な意志決定ができるようになります。
2つ目の価値は「予測」です。データをAI技術のひとつである機械学習で分析すれば、将来を高い精度で予測できるようになります。その予測を使うことで、何をすればいいのかの最適解を見つけ出し、ビジネス・プロセスを改善することで、生産性の向上や業務の効率化を実現し、業績の向上に結びつけることができます。
3つ目の価値は「創造」です。「見える化」された事実と「予測」に基づき、競争力を高めるためのビジネス・モデル構築のための課題や要件、示唆や洞察を得ることができるようになります。
デジタル化が急速に進むいま、企業活動が生み出すデータは、増大し続けています。まさに、莫大な財宝が、どんどんと溜まりつづけているともいえるでしょう。
この財宝をうまく利活用できれば、3つの価値をさらに高め、競争力の向上や成長につなげることができるのです。