「お客様のDXに貢献する」とは何をすることか 1/2
「お客様のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の実現に貢献します。」
SI各社は、このような言葉を掲げ、ビジネスのチャンスを窺っている。
DXとは、デジタルが前提の社会に適応するために「企業の文化や風土の変革」とすることであろう。「お客様のDXに貢献する」ためには、お客様の経営や事業に深く関与しなくてはならない。それにふさわしい能力と信頼を求められる。当然のことながら、自らが実践し、そのノウハウを磨かなければ、そんなことができるはずもない。
お客様のDXに貢献するためには、SI事業者は、次の3つに取り組まなくてはならないだろう。
最低限の常識を維持する
テクノロジーは進化し続けている。かつては最先端であり、あるいは常識であったことが、直ぐに陳腐化してしまう。だから、テクノロジーやビジネスのトレンドを見極め、その時々の常識に対応することが、最低限の前提となる。
例えば、PPAP(暗号化+zip添付とパスワード)の廃止、クラウド・サービス利用の制約を撤廃、VDIをやめ高性能なPCを使わせる、ゼロトラスト・ネットワークへの移行などがそれに当たる。
PPAPがセキュリティ・リスクを高める行為であることは、もはや周知であり、いまさら申し上げるまでもない。また、クラウドやVDIについての常識も数年前とは大きく変わっている。VPNやファイヤーウォールが、セキュリティ上の脆弱性を生みだすことも、もはや常識となった。ゼロトラスト・ネットワークは、そんな状況に対処するための有効な考え方となっている。
このような、最低限の常識さえできていないままに、お客様にDXを語ろうというのは、おこがましい。
DX実践の土台を築く
DXを実践するには、徹底した現場の見える化とオープンな情報共有が欠かせない。また、心理的安全性に支えられた組織の風土を醸成し、企業と個人、個人と個人の相互信頼を前提に、自律した現場チームに、権限を大幅に委譲することで、圧倒的なビジネス・スピードを手に入れる必要がある。例えば、業務プロセスのデジタル化を徹底、リアルタイム・データによる進捗把握や評価、オープンな情報共有とコミュニケーション環境の整備、働く場所を問わないデジタル・ワークプレイスの実現などだ。
このような企業の文化や風土を自ら醸成し、社員ひとり一人が、これからの当たり前を実感できなければ、お客様に説得力のある説明や提案などできないだろう。
DXを実践する
DXとは既存のビジネス・プロセスやビジネス・モデルの破壊、変革、創造を伴う。そのためには、既存事業と戦略事業の定義と目標設定、現場への大幅な権限委譲と業績評価基準・KPIの設定、人事・雇用制度の整備などといった、経営の根幹の変革にも向きあわなくてはならない。そんな取り組みを自ら実践し、その体験によって培われた感性やノウハウを、模範を通して提供することができて、始めてお客様のDXに貢献することはできる。
おわかり頂けたと思うが、DXとはデジタルを使うこと以外に、やるべきことが多い。デジタルを使うことが、ゴールではないのだ。
こうやって培ったDX実践のノウハウをメソドロジー化することができれば、お客様のDXに貢献に大いに役立つ違いない。
ただ、常識は常に変化し続けることを忘れてはいけない。感度を落とすことなく変化を捉え、自分たちの実践を改善し続けなくてはならない。DXとは、そんな終わりのない旅である。
また、そもそもの話しであるが、このような取り組みの前提として、常に問い続けなくてはならないのが、存在意義/Purposeであろう。社会がどれほど大きく変化しようが、ぶれることのない自社の社会における価値や役割を常に認識し、存在意義を貫くことができなくてはならない。また、そんな会社に勤める個人も、その会社での自分の存在意義を自覚し、それを確かめ、役割を果たすために、自らの能力を磨いてゆくことも、忘れてはいけない。誰かにおんぶに抱っこでは、生きられないことを覚悟すべきだ。
理想論であり、きれい事だと思う方もいらっしゃるだろう。その通りだ。だからこそ、目指すべき価値がある。
ただ、上記の実践は、現実的かつ戦略的でなくてはならない。エライ人が号令を掛けても、できることはない。ならば、3つに分けて、取り組んではどうだろう。
【明日に続く】