コロナ禍は、あなたの会社の実態と自分の現実をあからさまにしてしまった
「モノが主役」の時代は終焉を迎え「サービスが主役」の時代を迎えている。それにもかかわらず、「モノが主役」の時代の思想が未だ引きずられている企業も少なくない。それが、リモートワークで「始業時と終業時に上司にメールを送る」や「PCに監視ソフトを入れる」であったり、「"働き方改革"のKPIは"時短"」という考え方だったりする。つまり、成果ではなく時間を管理する思想だ。
「サービス」の本質は、「効用や満足という価値を直接顧客に提供すること」だ。「モノ」は、その効用や満足を提供する手段のひとつに過ぎない。一方、「モノ」の本質は、「効用や満足という価値を顧客が手に入れるための手段を提供すること」だ。効用や満足を手に入れる責任は、モノを使う顧客側にある。
5Gがサービスを開始しようとしている。回線のスピードが速くなることは、もちろんだが、それ以上に大きな変化は、「モノがつながることが当たり前」という社会が到来することだ。つまり、モノが様々なサービスを提供するためのインターフェースになるということ。
家電製品、住宅、設備機器、自動車などのモノが、サービスを使うためのデバイスとして、私たちの日常に深く入り込もうとしている。4Gによってスーマートフォンがサービスを使うデバイスとして広く普及したように、あらゆるモノがサービスを利用するためのデバイスになろうとしている。そう考えると、「サービスが主役」の時代とは何かを想像しやすいだろう。
「モノが主役」の時代には、企業はモノに価値をつくり込み、顧客に手渡す時点で1円でも多くの価値を認めてもらうために機能や性能を高めることを目指す。そして顧客は、企業がつくったモノに対して、その対価を支払い、消費する主体となる。この考え方に立つと、顧客の手に製品やサービスが渡る瞬間に発生する価値、すなわち「交換価値」(value in exchange)=「販売価格」を最大化することが経営活動のゴールとなる。すなわち、企業による価値生産と顧客による価値消費が分業される考え方ともいえるだろう。このような考え方を「グッズ・ドミナント・ロジック(Goods-dominant Logic)」と言う。
一方、「サービスが主役」の時代には、世の中で行われる経済活動をすべてサービスとしてとらえる考え方だ。顧客がサービスを使う過程において企業が行う活動や顧客が取る行動が価値を生み続けるという前提だ。企業のみでは価値の最大化を実現することができず、企業と顧客が一緒になって価値を共創する(co-creation of value)という考え方が必要となる。すなわち、経営活動のゴールは、交換価値の最大化ではなく、その後の「使用価値」(value in use)を最大化することになる。このような考え方を「サービス・ドミナント・ロジック(Service-dominant Logic)」と言う。
まさに時代は、後者に移り始めている。例えば、トヨタがソフトバンクと提携し、Monet Technologiesを設立し、自動車メーカからモビリティサービスを提供する企業へ変わると宣言したのは、2018年のこと。さらにトヨタは今年の1月、静岡県に独自のスマートシティWoven Cityを建設することを発表し、3月24日にはNTTと資本提携してスマートシティのプラットフォームを作ることを発表している。世界でもトップクラスの「モノを作る会社」が、自らのビジネス・モデルを「モノが主役」から「サービスが主役」へと大きく舵を切ろうとしている。
サービスは、顧客の「使用価値」を最大化することであるとすれば、顧客と対話し、顧客のニーズやその変化に即座に対応して、サービスを実現しているソフトウェアを改善し続けなければならない。そんな顧客との対話の手段が「データ活用」であり、改善する手段が「モダンIT」である。
顧客のニーズが多様化し、変化が加速する時代には、「データ活用」も「モダンIT」も圧倒的なスピードが必要であり、それが顧客満足を維持するために不可欠だ。品質は、バグが少ないことでなくバグを直ちに修正できることであり、顧客のニーズの変化に直ちに反応して改善し、顧客の最適を維持し続けること。
このような価値を引き出すために必要なことは、従業員の質とパフォーマンスを最大限に引き出すしかない。そのために必要なことは、現場を信頼して任せることだ。彼らの自発的なコミットメントを信じて、その障害となるものを取り払い、自律的に成果をあげられるチームを育てることだ。リモートワークもまた、その前提がなければうまく機能しない。
「モノが主役」の時代の思想をそのままに、カタチばかりを「サービスが主役」の時代に当てはめようとする時代錯誤的な無理は破呈する。自分たちが変わりたくなくても、社会は変わる。それが自然の摂理であるとすれば、もはや抗いようはない。コロナ禍は、この現実を露わにし、変化のアクセルを踏み込むことになるだろう。
コロナ禍は、未曽有の不況をもたらすことになった。そして、社会構造の転換を加速することになるだろう。その転換の軸のひとつが、「モノが主役の時代からサービスが主役の時代への転換」だ。これに伴いテクノロジーの重心も変わり、働き方や求められスキルも大きく変わる。
もし、あなたが、この現実に気付いているのなら、会社を変えるべく行動を起こすべきだ。それでも会社が変われないなら、転職すべきだ。大切なのは、あなた自身の人生だ。100年人生を生き抜くためには、自分の考えで会社を見極め、自分にふさわしい選択をすべきだろう。会社があなたの人生に責任を持つことはない。あなたの人生の選択はあなた自身に委ねられている。
コロナ禍は、あなたの会社の実態、そして自分の現実をあからさまにしてしまった。それを自分に都合が良いように解釈し元の鞘に収めることもできる。あるいは真摯に見据えて冷静に判断し行動することもできる。それを選ぶのは自分自身だ。
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【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代の最新ITトレンドと「共創」戦略(241ページ)*講義時間:6時間程度
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