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「スピード×アジリティ×スケール」の時代

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「プログラマーの数は、西暦2000年には世界人口を突破する。」

いまとなっては、出典は定かではないが、1980年代の半ば、メインフレーム全盛の時代にこんな調査レポートを読んだ記憶がある。当時は、ユーザー企業がそれぞれ個別独自にシステム開発することが当たり前で、大量の工数需要を生みだしていた。これに対処すべく標準化、ツールの整備、パッケージ・ベースのカストマイズなど、「作る工数を削減」する取り組みが積極的に行われた。その甲斐あって「世界人口突破」の危機は脱したが、IT需要はますます拡大し、工数需要の増大に歯止めがかかることはなかった。

リーマンショックなどの景気の波はあったが、これまでは全体としては工数需要拡大の基調が続いてきた。そして、ここ数年、大規模開発が集中し、人材が逼迫していた。そして、この度のコロナ禍により、この状況が一変することは、避けられないだろう。

これまでは、従来型の受託開発で、多くの工数需要を生みだしている。しかし、「作らない手段」つまり、SaaSやサーバーレスなどの普及により、インフラ構築やアプリ開発の作り方の常識は大きく変わった。また、PaaSの進化や普及は、これまでとは桁違いの開発生産性を実現する。そのため、IT需要は今後とも拡大し続けるだろうが、それとは逆に工数需要は減少する。

工数需要の減少は、開発需要を減少させることと同義ではない。むしろ、ITの適用領域が拡大し、開発需要は拡大する。つまり、ビジネスの現場のニーズにジャストインタイムでITサービスを提供し続けることへの需要が高まるわけで、これに対処するためには、これまで同様の受託開発ではなく、内製とアジャイル開発の組合せへとシフトする。そのための人材はむしろ逼迫することになる。

ITへの期待の重心は、大きく変わる。従来の生産性向上、期間短縮、利便性の向上から、加速するビジネス・スピードや変革への対応、競争優位を実現する差別化へとシフトし始めている。前者は、「コスト」であり後者は「投資」だ。このようなITへの変化は、「工数提供の対価」から「価値実現の対価」へとユーザー企業の意識を変えてゆくことになるだろう。そうなれば、「これだけの作業をしたので、その工数を払って下さい」という人月積算では通用せず、「これだけの成果をあげたので対価を支払って下さい」という成果報酬や、「継続的に成果を約束するので月額定額で支払って下さい」というサブスクリプションなどのこれまでとは異なる収益モデルへの移行を余儀なくされる。

工数需要から異なるカタチでの人材需要、すなわち「スキルフルな人材による価値提供需要」へとシフトする。つまり、工数を増やすことを狙い、その結果売上高を増やせば、利益が付いてくるという考え方ではなく、少数精鋭のチームによる利益率の高い仕事を狙い、そのチームを増やして、利益の拡大を目指す収益構造への転換が必要になるだろう。

コロナ禍は収束しても、ビジネス環境の厳しさは、当面は続く。限られた予算の中で、今後も訪れる不測の事態に備え、これまでのITのあり方と決別する企業も増えるに違いない。その厳選の基準は、「スピード×アジリティ×スケール」となる。この基準にかなうスキルを持った少数精鋭のチームが、収益の源泉となるだろう。

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そんなパラダイム・シフトが、一気に進むことを前提に、事業のポートフォリオを作り直す必要があるだろう。

いまはまだ、これまでの仕事の継続によって収益は確保されているようだが、半年後には、この状況は一変するだろう。そう覚悟を決めて、厳選の時代に対処するシナリオを描いておいた方がいい。

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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【6月度のコンテンツを更新しました】

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  • 以下のプレゼンテーション・パッケージを改訂致しました。
    ・2020年度・新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス
  • ITソリューション塾・第34期(現在開催中)のプレゼンテーションと講義動画を改訂

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【改訂】総集編 2020年6月版・最新の資料を反映しました(2部構成)。

【改訂】ITソリューション塾・プレゼンテーションと講義動画

  • デジタル・トランスフォーメーションと「共創」戦略
  • ソフトウェア化するインフラストラクチャー
  • ビジネスの新しい基盤となるIoT

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ビジネス戦略編

  • 【改訂】ビジネス発展のサイクル p.9
  • 【新規】DXはどんな世界を目指すのか p.17
  • 【新規】DXの実現を支える3つの取り組み p.50
  • 【改訂】MONET Technologies p.65

クラウド・コンピューティング編

  • 【新規】XaaSについて p.47
  • 【新規】シームレスなマルチ・クラウド環境を構築するAnthos p.110
  • 【新規】クラウド各社のOpenShiftマネージドサービス p.111

サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT

  • 【新規】IoTの定義 p.15
  • 【新規】サプライチェーンとデマンドチェーン p.44-45
  • 【新規】MaaSエコシステムのフレームワーク p.61

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI

  • 【改訂】人工知能の2つの方向性 p.12
  • 【新規】AIとAGI p.13
  • 【新規】ルールベースと機械学習の違い p.66

下記につきましては、変更はありません。

  • ITの歴史と最新のトレンド編
  • テクノロジー・トピックス編
  • ITインフラとプラットフォーム編
  • サービス&アプリケーション・基本編
  • 開発と運用編
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