「AIを使って、うちも何かできないのか?!」という愚問
「AIを使って、うちも何かできないのか?!」
新規事業開発を任されている担当者にこんな言葉がふってくる。これが、どれほど無意味な問いかけなのかは、次の言葉から分かるだろう。
「データベースを使って、うちも何かできないのか?!」
データベースでできることはいろいろある。データベースがなければできないこともある。AIもまた同じだ。大切なことは「何のために」であり、「どのような事業課題を解決したいのか」次第だ。そこがないままにデータベースを使おうとしても使いようはなく、何のビジネス価値も生まれない。当然、ユーザーが魅力を感じることはなく、ビジネスにならない。
「サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらない。この場で乗りたいのに、手をあげてもタクシーは止まってくれない。」
ライドシェア・サービスの代名詞ともなった「Uber」は、そんな創業者の実体験がきっかけだったという。
「タクシーが利用者のニーズに応えてくれないのなら、自分たちでつくってしまおう。」
そうやって2009年3月にこの会社は設立された。
いつでも、どこからでも、誰もが、すぐにスマートフォンでタクシーを呼び出すことができ、しかも既存のタクシーに比べて安い料金で利用できる。そんなUberは瞬く間に世界に拡がっていった。そして9年後の現在、世界632都市にサービスを展開し、売上高も8千億円を超えている。
Uberの創業者は自分が感じたことを「それが普通だから仕方がない」とは考えず、「もっといいやり方があるはずだ」と考えたのだろう。そして、それを実現するために「いまできるベストなやり方は何か」を考えた。そのとき「ベストなやり方」の選択肢として、その当時としてはまだ目新しいクラウドやスマートフォンに目を付け、その可能性を信じ試行錯誤を繰り返しながら作り上げたのがUberだったのではないか。
- 「困った」を解決したい。
- もっと便利に使いたい。
- もっといいやり方があるはずだ。
そんな想いが新しいビジネスを生みだすきっかけとなった。決して、ITでビジネスをやることが目的だったわけではない。目の前にある課題を解決するには、最新のITを駆使することが一番いいやり方だった。そんな原点を突き詰めていった人たちが、結果として既存の業界秩序を破壊するまでの力を持つ、誰もが注目するような新しいビジネスを生みだした。
しかし、身近な現実に目を向けると、かならずしもそうではないようです。
「AIを使って、うちでも何かできないのか?!」
冒頭の話しのように、こんな話しが経営者からふってきて、さてどうしたものかと現場が頭を抱えている。「世間でAIが話題になっているので、うちも乗り遅れてはいけない」ということなのだろうが、「AIを使うこと」が目的ではないはずだ。目の前の課題を解決したい、もっといいやり方で効率を上げたい。それが目的のはずだ。その目的に向き合うことなく、手段を使うことを目的にビジネスを考えるという本末転倒な話しは後を絶たない。
人々に受け入れられるビジネスは、直面する課題やニーズに気付き、真摯に向き合うことからはじまる。その解決策として「ITがもたらす新しい常識」にも目を向け、その可能性を最大限に活かそうという考え方が、これまでにない革新的なビジネスを生みだしている。
AIやIoTといったITの新しい常識をビジネスに活かすとは、こういう態度が必要だ。
ITビジネスは、いま大きな節目に立たされている。機器の販売はクラウド・サービスに置き換わり、開発や運用も自動化も当たり前になりつつある。モノ売りや工数のビジネスが縮小することはもちろんのこと、求められるスキルも変わる。ITの需要はこれまでにも増して高まる一方だが、収益のあげ方が変わろうとしている。
お客様がITに求めていることは、お客様自身のビジネス価値を高めることだ。売上や利益の拡大、魅力的な製品やサービスを提供し顧客満足度の向上、働き方改革による従業員満足度の向上を実現したい。ITはそんなお客様の期待に応える手段だが、これまでは手段を手に入れるために多大な手間とコストを必要とした。機器の購入、それらを設置するための設備やデータセンター、アプリケーションの開発、運用管理や保守といった手段に多大な負担を強いられてきた。しかし、クラウドの普及や自動化の適用範囲の拡大は、これら負担を無くす方法に動いている。いくら抵抗しようとも、見ない振りをしようとも、この流れに棹を立てることはできない。ならば、その流れに乗るしかない。
お客様が求めるのは今も昔も「ビジネスの成果」だ。ただ従来は事業課題の明確化はお客様の役割で、それをうけて手段を提供するのがSI事業者の役割だった。しかし、手段の提供はこれから縮小する。一方で、テクノロジーの進化と適用範囲の広がり、ITとビジネスの一体化が進み、ITを前提に新しいビジネス・モデルやビジネス・プロセスを創出しなければならない。
SI事業者はITの専門家として、業務に責任を持つお客様と一緒になって、何をすればいいのかを探索し、最適なやり方を見つけ出してゆくことが求められるようになる。従来のようにお客様が何をして欲しいのかを教えてはくれない。それは前提となる既存のビジネス・プロセスがなく、まったく新しい仕組みを作らなければならないからだ。「共創」という言葉が叫ばれているのは、そんな背景があるからだ。AIやIoTは、そんな取り組みなくして、ビジネスにすることはできないだろう。
しかし、「共創」はワイガヤだけでは難しい。カタチにするためのメソドロジーが必要です。それが、「デザイン思考」だ。
それを具体的なシステムへ実装するには、ビジネスの成果に直結するプロセスだけを作り、変更に柔軟な「アジャイル開発」が前提となる。
変更に柔軟であるとすれば、システム資産を所有することは足かせ以外の何者でもない。だから「クラウド」もまた前提となる。
デザイン思考、アジャイル、クラウドはひとつの物語だ。それを実践できるスキルがこれからのSI事業者には求められる。
「そんなことができる人材はいないよ。」
それは、何処でも同じだ。だから、そういう人材を育ててゆくしかない。どう教えればいいか分からないというのも言い訳にすぎない。自分で新しいことにチャレンジし、学びを楽しめる人材は、少数ながらどんな企業でも必ずいる。そういう人に任せてみてはどうか。
もしかしたら、そんな人材を火事の火消し役に回してはいないだろうか。旧態依然としたプロジェクトのプロマネにアサインしてはいないだろうか。そんなことをしている限り、彼らは力を発揮できない。
自分たちの未来を手に入れるために、できることはいろいろとあるはずだ。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 9月度版リリース====================
RPAのプレゼンテーションを作りました。(ITソリューション塾の最後にむに掲載)
他にもいくつかのプレゼンテーション・パッケージを新規追加・更新致しました。
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プレゼンテーション・パッケージ
【新規】RPAについてのプレゼンテーション(25ページ)
【更新】新入社員のための最新ITトレンドとこれからのビジネス(187ページ)
【更新】ビジネスリーダーのためのデジタル戦略塾・最新のITトレンド(203ページ)
【更新】フィン・テックとブロックチェーン (40ページ) *テクノロジー・トピックスより分離
ビジネス戦略編
【更新】デジタル・トランスフォーメーションの実際 p.16
【新規】デジタル・ディスラプターの創出する新しい価値 p.17
【更新】もし、変わることができなければ p.18
*人材開発・育成編をビジネス戦略編より分離し、新しくパッケージし直しました。
ITの歴史と最新のトレンド編
【新規】人類の進化と知識 p.12
【新規】自然科学発展の歴史 p.13
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】インターネットに接続されるデバイス数の推移 p.10
【新規】新規事業の選択肢とモノのサービス化 p.44
【新規】IoTのビジネス戦略 p.47
【更新】LPWAネットワークの位置付け p.72
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】AI導入/データの戦略的活用における3つの課題
開発と運用編
【更新】DevOpsとコンテナ管理ソフトウエア p.57
【新規】開発と運用の方向性 p.58
テクノロジー・トピックス編
*変更はありません。ただし、FinTechとブロックチェーについては、別資料としてまとめました。
ITインフラとプラットフォーム編
【更新】仮想化の役割 p.70
【新規】仮想化の役割/解説 p.71
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません