セカンドステージを模索される皆さんへ:知ってはいても伝わらなければ価値がない
「クラウドについて知らない人は手を挙げて下さい。」
新入社員研修の冒頭で、こんな質問を投げかけた。手を挙げる人はひとりもいない。ならばと、一番前に座りやる気満々そうな男性に質問をした。
「では、説明して下さい。」
かれは、「えっ」といった顔をして渋々答え始めるのだが、「クラウドとはネットワークの・・・」と、知っている単語をつなぎ合わせて説明しようとするのだが、まともな説明にはなっていなかった。
「"知っている"という言葉には、責任を伴います。つまり、"知っている"とは、"説明できる"ことだと自覚して下さい。相手に説明できない"知っている"は、自己満足に過ぎず、相手に影響も与えられないし、価値も提供できません。」
経験を積んだベテランでも、この当たり前ができない人はいる。ましてや、他の会社への転職を目指す人、セカンドステージとして企業顧問や一人事業主として独立しよう言う人たちにとっては、改めて見据えて欲しい原理原則だ。自分の価値を高く売りたいと考えているのであれば、なおさら意識すべきことだろう。
こんな仕事をしてきた、こんなプロジェクトを立ち上げた、こんなシステムを作ったといったことは、その人にとっては、大変な苦労であり、人生における貴重な経験でもあっただろう。しかし、その価値が、相手に「伝わらない」では、価値がないに等しい。価値がなければあなたを採用しよう、仕事を任せようと言うことにならないのは当然だ。
では、どうすれば伝わるのだろうか。それは、次の3つに整理できるだろう。
まず大切なことは、自分ができることを相手のコンテクストに当てはめて、その会社の課題やニーズに自分の経験から得た「成功の方程式」がどのように当てはめられるかを説くことだ。「こんな経験をした」という事実を伝えるだけでは、先のクラウドの説明と同じことで、相手の価値向上にどれだけの貢献ができるか分からない。そして、「きっと、お役に立てると思います」という根拠のない推測を示し、「精一杯やらして頂きます」という精神論で締めくくる。これでは、相手には何も伝わらない。
自分の経験から教訓を読み取り、そこに一貫する「成功の方程式」を理論化する。それをどのように相手に適用すれば、相手に価値をもたらすことができるのかを説明できることが、相手に自分の価値を伝えることである。
次は、説明資料の美しさだ。美しさを実現するには、「選ばれた文字」、「考え抜かれたレイアウト」、「バランスのいい配色」の3つの要件を満たさなくてはならない。
まず、「選ばれた文字」だが、プレゼンテーション資料には文字は少ない方がいい。だからといって、禅問答のような「一文字」は演出としては面白いが、なかなか使い方が難しい。普通はそこまで極端に考える必要はない。
悪い例から上げれば、これでもかというくらいに、1枚のチャートに文字を敷き詰めている資料を見掛けることがあるのだが、あれでは何を伝えたいのかがまるで分からない。見方を変えれば、何が幹で枝葉なのかを整理できていない証拠でもある。以下に相手のことを考えていないかの証拠だ。
このページで伝えたいメッセージは何かを明確にすることだ。その上で、そのメッセージを伝えるに必要な最低限の言葉を添える。そして、あとはあなたの話す言葉で補えばいい。
「選ばれた文字」を繰り出せる人には、プレゼンテーションの結果として「何を伝えたいのか」のゴールが明確に定まっている。そしてそこに確実に、分かりやすく至るための全体を貫くしっかりとしたストーリーがある。「選ばれた言葉」はそのストーリーを構成する部品であり、ひとつひとつの言葉には品格がある。
そんな言葉を紡ぎ出すことを通じ、また新たな学びの機会を与えられる。そんな繰り返しが、言葉を磨いてゆく。
ふたつ目は、「考え抜かれたレイアウト」である。
アメリカの建築家のルイス・ヘンリー・サリヴァンは、「形態は機能に従う(Form Follows Function)」という言葉を残している。「何かを実現するための機能を追求すれば、自然にその形は決まる」という意味だ。
スティーブ・ジョブスもまた、「デザインとはどう見えるかではなく、どう機能するかである」という名言を残している。アップルの洗練されたデザインは、美しさを追求したから生まれたわけではなく、目的を達成するために必要な機能を追求した結果として生まれたのだという。
プレゼンテーション資料のレイアウトも同じだ。そのチャートで何を伝えたいのか、この文章で相手にどう動いてもらいたいのかを追求することだ。自ずと、それを表現するレイアウトが描かれてゆく。
簡単なことではないが、この本質を常に意識し、試行錯誤を続けることが基本だろう。そして、自分で作った資料を他人になったつもりで眺めてみる。そして、その美しさを「いまの自分の基準」で判定してみる。「許せる」のであれば、それでいい。もし、「汚い」とか「気持ち悪い」と感じるのであれば、改めて基本に立ち返り、手を加えてゆくことだ。そんな繰り返しが、「いまの自分の基準」を高め、レイアウトを洗練させてゆく。
自分でも「汚い」と感じる資料は他人に出してはいけない。それは汚物をばらまくようなものだ。それを見たり聞いたりした人は、二度とあなたの話をまた聞きたいとは思わなくなるだろう。もし自分がそんな仕打ちをされたならどう思うかを考えて欲しい。
最後は、「バランスのいい配色」だ。
色は人間の感情にじわりと影響を与える。キツさや優しさ、騒々しさや穏やかさ、暑さや寒さなど、様々な感情を引き出す力を持っている。それらをうまく組み合わせることで、言葉ではないところで、人の感情をコントロールできるのが「配色」だ。
私は、基本的に意識して次の3つの原則を守っている。ひとつは、全体として淡い色調、言うなればパステルカラー調を好んで使う。なぜそうするかと言えば、無難だからだ。誰が見るか分からないので、いろいろな人に使い回しできるようにと考えているからだ。原色系は騒がしい、モノクロ系は落ち着きすぎている。そんな中間的な色合いは、毛嫌いされることはない。
次は、色のカテゴリーを増やさない。例えば、階層を表すような表現の場合、一番下には濃紺を置く、階層が上がるに従い徐々に薄くしてゆき、地位上部は明るい、あるいは淡いオアにする。そうやって、色のカテゴリーを増やさないようにしている。これは、相手に階層を自然と意識させるには効果的な手法だ。
最後は、赤やオレンジをコントラストとして使うこと。ただ、赤と言っても原色ではなくサーモンピンクなどがお気に入りだ。全体として比較的淡い色の色調の中に、どちらも目に飛び込んでくる。そこが重要であること、ぜひ読んで欲しい、気付いて欲しいをその色で誘導する。
他にもいろいろとノウハウはあるがキリがないので、この辺にしておく。ただ、「どうすれば伝わりやすいか」を追求し、自分なりのノウハウを極め続けることだろう。それが、自分のスタイルになり、やがてはブランドになる。
「伝えた」という自分の真実ではなく、「伝わった」という相手の真実を求めよ
「私は間違えなく伝えました。でも、相手の頭悪くて、伝わらなかったのです」なんて、言い訳は最低だ。伝わらないには自分の側に理由がある。そんな自分に対する真摯な向き合い方がつたえる力を磨いてゆく。
大阪開催決定!新入社員のための最新ITトレンド・1日研修
「お客様の話しに、ついてゆけません。言葉が分からないんです。」
こんな話をする新入社員は少なくありません。もちろん経験のない彼らが仕事をうまくこなせないのは当然のことです。しかし、「言葉が分からない」というのは別の問題です。
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そんな彼らに、ITの最新トレンドを教え、ITがもたらす未来への期待、そこに関わることへの誇りを持てるようにと企画しました。
参加費が1万円なら、懐の寂しくても自腹で参加できるはずです。また、既に新入社員研修の予算を使い切った企業でも、何とかやりくりして頂けるのではないでしょうか。そんな想いで、この金額にしてみました。また、100ページを超えるテキストは、パワーポイントのままでロイヤリティフリーで提供させて頂きます。
*大阪での開催のご希望が多数寄せられたこともあり、大阪でも開催させて頂くこととなりました。
実施内容
- 日時:下記日程のいずれか1日間(どちらも同じ内容です)
- 【東京・第1回】8月28日(月)10:00〜17:00
- 【東京・第2回】9月04日(月)10:00〜17:00
- 【大阪】 9月07日(木)10:00〜17:00
- *昼休み1時間、休憩随時
- 東京会場:株式会社アシスト・本社1階セミナールーム/市ヶ谷
- 大阪会場:株式会社アシスト・大阪セミナールーム/グランフロントタワーA
- 定員:50名/回
- 費用:1万円(税込10,800円)
- 新入社員以外(例えば、他業界からIT業界に転職された方や人材開発・研修担当の方)で参加されたい場合は、3万8千円(税込 41,040円)でご参加いただけます。
- 内容:
- ITビジネスの歴史と最新トレンド
- クラウド・コンピューティング
- ITインフラと仮想化
- サイバーセキュリティ
- IoT
- AIとロボット
- アジャイル開発とDevOps
- これからのITとITビジネス
詳しくはこちらをご覧下さい。
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 増強改訂版
- 何ができるようになるのか?
- どのような価値を生みだすのか?
- なぜ注目されているのか?
「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる
- IoT とインダストリー4.0
- AR とVR
- 人工知能と機械学習とディープラーニング
- サーバ仮想化とコンテナ
- ネットワーク仮想化とSD-WAN
- アジャイル開発とDevOps
- マイクロサービスとサーバレス
キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?
最新版(7月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【8月版】を更改しました!
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大きな変更はありませんが講演資料を2本追加しました
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ビジネス戦略編 116ページ
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの実際 p.8
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット 127ページ
【更新】コレ1枚でわかる人工知能とロボット p.10
【更新】人工知能の3つの役割と人間の進化 p.11
【新規】自動化と自律化の領域 p.15
【新規】人工知能が奪っていくのは、労働ではなく定年かもしれない p.93
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT 105ページ
【新規】Wi-SUN p.56
サービス&アプリケーション・開発・運用編 70ページ
【更新】ウォーターフォール開発とアジャイル開発(2) p.17
サービス&アプリケーション・基本編 52ページ
変更はありません
クラウド・コンピューティング編 119ページ
【新規】クラウド・コンピューティング 3つの誤解 p.24〜28
誤解1:調達の手段が変わるだけ?
誤解2:ガバナンスが効かない?
誤解3:コストは下がらない?
【新規】クラウドの見積り方(1) 訂正版 p.85
インフラ&プラットフォーム編 228ページ
【最新】セキュリティ対策対象の変化 p.112
トピックス編 60ページ
変更はありません
ITの歴史と最新トレンド編 15ページ
変更はありません
【講演資料】まだ自前でシステムを持ち続けるのですか? クラウドにまつわる3つの誤解と新しい常識
ITベンダー・クラウド利用促進イベントでの講演資料
実施日: 2017年7月06日
実施時間: 60分
対象者:中堅・中小企業 CIO/情報システム部門長
【講演資料】最強の営業とは
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