「経営者によるIT部門への根深い不信感」と「本来の役割を果たせない名ばかりのCIO」
「全ての予算はIT予算になってゆく」
経営や業務はIT無しには今後考えられず、業務のための予算はITを活用するための予算になってゆくでしょう。世界を見れば、経営にとってITの存在感は益々高まっています。また、競争力を高める武器としてITを戦略的に活用していこう意欲も高まっています。
その一方で、我が国においては、ITの戦略的な活用には及び腰で「必要ではあるが最低限の投資ですませたい」、言葉を換えれば、「必要悪としてのIT」との意識に留まっている企業も少なくありません。
なぜ、我が国では、このような事態を招いてしまったのでしょうか。その理由として、私は経営者によるIT部門への根深い不信感があるものと考えています。
「他社ではITを使ってこんな事をやっています」
「ITを使えば、我が社の業務が改革できます」
「ITを使わなければ時代遅れで生き残りも難しくなります」
かつて、IT部門は、ビジネス・プロセスの革新やイノベーションのためとの大義名分を掲げ大きなプロジェクトを起ち上げてきました。しかし、十分な成果を見せられないままに、経営者の不信感を募らせてしまいました。経営者は、「自分達の存在感を高めるためだけにやったのではなかったのか」と受け取ったかもしれません。「それをそそのかしたのはITベンダー」という想いもあるのではないでしょうか。
その結果、IT投資に厳しい目を向けるようになったというのは、すこし考えすぎでしょうか。
少し前のJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)のレポートですが、2013年度の売上高に占めるIT予算の比率は単純平均で1.2%、IT装置産業である金融を除けば、1%未満という現実です。この数字は過去10年間に半減しています。この原因を「IT部門への積もり積もった不信感」と言い切ってしまうことは言い過ぎかもしれませんが、少なからざる要因ではないかと考えています。
結果として、IT部門は守りの姿勢に入ってしまいました。裏方に徹し、システム基盤やオフィス系アプリケーション、既存の基幹業務系システムの保守や運用に自らの役割を絞り込み、競争力の源泉であるビジネス・プロセスの革新やイノベーションを自分達の役割から遠ざけてしまったように見えます。
「おまえ達は業務に口出ししなくていいから、しっかり安定稼働させてくれ!」
あるユーザー企業の情報システム部門長が現状に憂い、業務効率の改善のために業務プロセスの変更とそれにあわせたシステムの刷新を業務部門の担当役員に提案に行ったところ、こんなことを言われてしまったと嘆いていました。
また、このような事態を打開するにしても、本来の役割を果たせるCIOがなかなかいないことも、大きな課題といえるでしょう。
本来CIOの役割は、経営者に対してIT活用の可能性や戦略的価値を理解させ、ITを使ってビジネス・プロセスの革新やイノベーションを実現させることにあります。しかし、現実をみれば、CIOとは名ばかりに総務や財務などの管理部門担当の役員が兼任している場合が少なくありません。ITについての正しい理解もなく、むしろIT部門を予算的に牽制することを役割としているようにも見えます。このような状況で、本来のCIOとしての役割を果たせるわけはありません。
「経営者によるIT部門への根深い不信感」と「本来の役割を果たせない名ばかりのCIO」という現実を抱えたままでは、ITの戦略的活用は望むべくもありません。
この現状を変えてゆくためには、どうすればいいのでしょうか。簡単に解決できることではありませんが、この現実を真摯に受け止め、IT部門もベンダーも、現状を変えてゆくことに取り組んでゆかなければ、共に自らの存在意義を失ってゆくことだけは確かです。
ベンダーやSI事業者として取り組むべきことについて、私なりの考えをご紹介したいと思います。
「お客様(経営者)に対してIT活用の可能性や戦略的価値を理解させ、その実践をマネージメントできる人材を育成すること」
言葉を換えれば、お客様のCIOの役割を果たし、経営者の良き相談相手となれる人材を育てていくことです。具体的には、以下の3つのことができる人材です。
- テクノロジーと経営について正しく理解し、ITを組み入れたビジネス・プロセスの改革やイノベーションを実現するための施策を組み立てることができる。
- IT活用の可能性や価値を経営者に理解させ、上記施策を提案し実行についてのネゴシエーションや説得ができる。
- 施策を実施するためのチームを組織し、その運営をマネージメントできる。
このような人材は、以下の特性を持てなくてはならない。
- テクノロジーや経営についての飽くなき好奇心
- お客様の価値向上に対する意識の高さと実現への情熱
- 様々な助言や新しい知識への素直さ
「そんなことは理想論だ。簡単にできる話じゃない。ましてやうちにはそんなことができる人材はいない」
そんな言葉が返ってきそうですね。でも、本当にそうでしょうか。まず、ここに掲げたような「あるべき姿」を明確にしたことはありますか。そういう人材を育てようと真剣に考え、そのための取り組みを模索されたでしょうか。そんな人材はいないと決めてかかってはいないでしょうか。
簡単にできるとは思いませんが、明確なビジョンを持ち、そのための施策を積み上げればやがてはそういう人材も育ち、その魅力に惹かれて外からも集まってくるかもしれません。
こういう人材が、IT部門の責任者を支え、また経営者の良き相談相手になるならば、我が国のビジネス・カルチャーを変えてゆけるかもしれません。当然のことではありますが、これができれば、しっかりとお客様を囲い込み、確実で安定したビジネスにつながることは言うまでもありません。
「できない」と決めてかかる前に、まずは、そのための一歩を踏み出すことだと思います。
新入社員のための最新ITトレンド・1日研修
「お客様の話しに、ついてゆけません。言葉が分からないんです。」
こんな話をする新入社員は少なくありません。もちろん経験のない彼らが仕事をうまくこなせないのは当然のことです。しかし、「言葉が分からない」というのは別の問題です。
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることなく現場に送り出されてしまいます。そのため、お客様が何を話しているのか分からないままに、曖昧な応対しかできず、自信を無くしてしまう、外に出るのが怖いなどの不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、ITの最新トレンドを教え、ITがもたらす未来への期待、そこに関わることへの誇りを持てるようにと企画しました。
参加費が1万円なら、懐の寂しくても自腹で参加できるはずです。また、既に新入社員研修の予算を使い切った企業でも、何とかやりくりして頂けるのではないでしょうか。そんな想いで、この金額にしてみました。また、100ページを超えるテキストは、パワーポイントのままでロイヤリティフリーで提供させて頂きます。
実施内容
- 日時:下記日程のいずれか1日間(どちらも同じ内容です)
- 【第1回】8月28日(月)10:00〜17:00
- 【第2回】9月04日(月)10:00〜17:00
- *昼休み1時間、休憩随時
- 会場:株式会社アシスト・本社1階セミナールーム/市ヶ谷
- 定員:50名/回
- 費用:1万円(税込10,800円)
- 新入社員以外(例えば、他業界からIT業界に転職された方や人材開発・研修担当の方)で参加されたい場合は、3万8千円(税込 41,040円)でご参加いただけます。
- 内容:
- ITビジネスの歴史と最新トレンド
- クラウド・コンピューティング
- ITインフラと仮想化
- サイバーセキュリティ
- IoT
- AIとロボット
- アジャイル開発とDevOps
- これからのITとITビジネス
詳しくはこちらをご覧下さい。
ITソリューション塾・福岡・第2期 募集中!
知っているつもりの知識から、説明できる、実践に活かせる知識へ変えてゆく。そんな研修がスタートします。
東京で9年目を迎えるITソリューション塾には、既に1500名を超える卒業生がいらっしゃいます。また、昨年より大阪と福岡でも始まりました。特に福岡では、他の会場にはない「自分のビジネスを成功させるためのワークショップ」もあわせておこないます。
ITについての体系的な知識を身につけたい、提案力を高めたい、コンサルや交渉の力を高めたい。そんな皆さんのための実践的プログラムです。ふるってご参加下さい。
日程 | 2017年7月11日〜10月3日 全7回 13:30〜17:30 |
---|---|
回数 | 全7回 |
定員 | 40名 |
会場 | 福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター |
料金 | ¥65,000 (税込み¥70,200-) 全期間の参加費と資料・教材を含む |
詳細 | ITソリューション塾[福岡] 第2期 講義内容/スケジュール |
申し込み | 上記リンクのパンフレットをご参照ください。 |
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 増強改訂版
- 何ができるようになるのか?
- どのような価値を生みだすのか?
- なぜ注目されているのか?
「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる
- IoT とインダストリー4.0
- AR とVR
- 人工知能と機械学習とディープラーニング
- サーバ仮想化とコンテナ
- ネットワーク仮想化とSD-WAN
- アジャイル開発とDevOps
- マイクロサービスとサーバレス
キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?
最新版(7月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年7月】をリリースいたしました。
==========================================
今月度は、AIとIoTを中心に大幅に資料を追加しています
==========================================
ビジネス戦略編
【新規】3つのIT:従来のIT/シャドーIT/バイモーダルIT p.23
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.4
【新規】人工知能の3つの役割と人間の進化 p.12
【新規】自動化から自律化への進化 p.16
【新規】スマートマシンの必要性 p.16
【新規】人工知能のロボットへの実装 p.24
【新規】専門家と人工知能 p.26
【新規】人工知能は知的望遠鏡 p.27
【新規】ITと人間の関係の変遷 p.33
【新規】これまでの学習とディープラーニング p.42
【新規】ルールベースと機械学習 p.43
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
【新規】従来のやり方とIoTの違い p.18
【新規】LPWAとは p.51
クラウド・コンピューティング編
変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
【新規】ERPシステム/パッケージとクラウドでの利用形態 p.11
【新規】SOAの狙いと成果 p.27
開発と運用編
【更新】ウォーターフォール開発とアジャイル開発 p.17
インフラ&プラットフォーム編
【新規】認証基盤 p.117-118
【新規】認証に関わる課題 p.119
【新規】シングルサインオンとフェデレーション p.120
【新規】Apache Spark p.179
トピックス編
変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
変更はありません
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4Amazonで購入