【図解】コレ1枚でわかる人工知能研究の2つのアプローチ
1950年代に入りコンピューターが使えるようになると、「数を操作できる機械は記号も操作できるはず」との考えから、コンピューターを使った思考機械の研究が始まります。そして1960年代に入り、記号処理のためのルールや数式をプログラム化し思考や推論など人間が行う論理的な「知的活動」と同様のことを行わせようという研究も広がりを見せました。しかし、当時のコンピューター能力の低さ、また、記号処理のルールを全て人間が記述しなければならず、限界が見え始めました。その結果、実用に使える成果をあげることができないまま1970年代に入り、人工知能研究は冬の時代を迎えることになります。
1980年代に入り、「エキスパートシステム」が登場します。これは、特定分野に絞り、その専門家の知識やノウハウをルール化し、コンピューターに処理させようというものでした。例えば、計測結果から化合物の種類を特定する、複雑なコンピューターのハードウェアやソフトウェアの構成を過不足なく組み合わせるなど、特定の領域に限れば、実用で成果をあげられるようになったのです。
また、このルール処理を効率的に行う「推論コンピューター」の研究も始まります。1981年、日本の通産省は、「第五世代コンピュータプロジェクト」としてこの取り組みを支援しました。これに対抗するように、イギリスや米国でも同様のプロジェクトが始まります。
1984年、エキスパートシステムの延長線上で、人間の知識を全て記述しようというプロジェクトが米国でスタートします。例えば、「日本の首都は、東京だ」、「インド建国の父は、ガンジーだ」、「鯨は、ほ乳類だ」といった、知識をルールとして記述し、人間と同等の推論ができるシステムを構築することを目指したのです。しかし、知識は常に増えてゆきます。また、そもそも人間の知っていることが多すぎることやそれをどう表現するか、また、解釈や意味の多様性に対応することは容易なことではありません。そして、「知識やルールを入れれば賢くなるが、知識はすべてを書ききれない」という限界に行き当たり、この取り組みも下火となっていったのです。
2000年代に入り、様々な、そして膨大なデータがインターネット上に集まるようになりました。また、コンピューターの性能もかつてとは比べられないほどに性能を向上させてゆきました。そこで、特定の業務や分野でのデータを解析し、その結果から分類や区別、判断や予測を行うための規則性やルールを見つけ出す手法「機械学習」が登場します。
「機械学習」以前は、先にも説明の通り人間がルールを記述し「論理的に思考」させようというアプローチが主流でした。しかし、「機械学習」はデータの相互の関係から規則性あるいはパターンを見つけ出そうというもので、「感覚的に思考」させようというアプローチと言えるでしょう。
例えば、ある子どもが、その母親より父親に似ているとします。それを完璧に論理的に説明することは容易なことではありません。精々、鼻のカタチがよく似ている、目元が似ている、笑顔がそっくりといった理由を付ける程度であり、「笑顔がそっくり」を論理的に説明することはできません。それでも、私たちはそれを瞬時に識別できるのは、特徴のパターンを感覚的に捉えることができるからです。これを機械にやらせようというのが、「機械学習」です。
「機械学習」の考え方は以前からありました。しかし、コンピューター性能が不十分であり、その能力を発揮するには至らなかったのですが、コンピューター性能の向上と手法の進化と共に、その能力を高めてゆきました。
現在、最新の脳科学の研究成果を取り入れ、感覚的思考の精度を高めようという機械学習のアプローチ「ディープラーニング(深層学習)」に注目が集まっています。この新たな取り組みは、これまでの人工知能の研究成果の限界をことごとく打ち破っています。そして、実用においても、これまでにない多くの成果をあげつつあります。
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