【図解】コレ1枚でわかる「ITの最新トレンド」
アンビエントITの時代に生きる私たち
「何台のコンピューターを使っていますか?」
あなたならはどう応えますか。
「会社と自宅でそれぞれ1台ずつ使っているので2台使っている。」
「パソコンだけじゃなくてスマートフォンもコンピューターと考えれば3台使っている。」
「会社の業務をこなすサーバー・コンピューターがあるので、10台くらいは使っている。」
このように応えられる方も多いのではないでしょうか。でも、本当にその程度しか使っていないのでしょうか。
冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機などの家電製品には、いまでは当たり前にコンピューターが組み込まれています。給湯器や照明器具などの住宅設備や自動車にもコンピューターは使われています。銀行のATMやコンビニのPOSレジなど、自分が所有しているわけではないですが、当たり前のように毎日使っているコンピューターもあります。また、インターネットにアクセスすれば、その先にある何十万台、何百万台ものコンピューターをあなたは使っているはずです。
このように私たちのまわりには膨大な数のコンピューターがあり、もはやコンピューターなしでは生活も仕事もできないくらいに、その恩恵を受けているのです。
「アンビエントIT(ambient IT)」
"自分のまわりや環境に溶け込み存在しているIT"という意味で使われる言葉です。まさに私たちはそんな世界に生きているのです。それがどのような世界なのかを、まずは見てゆくことにしましょう。
現実世界をデータ化する仕組み:IoTとソーシャル・メディア
モノに組み込まれたコンピューターは、モノそのものの使い勝手を良くしたり、機能を向上させたりするために使われています。これらがネットワークにつながり、モノ同士が、あるいは様々なサービスやシステムとつながるようになったら、いったい何が起こるのでしょうか。
例えば、最近のエアコンには室内にいるヒトの存在やその周辺の温度をセンサーで感知し、そのひとに向けて風を送り出してくれるものがあります。もし、このエアコンがネットワークにつながり、その先にあるコンピューターでそのデータが分析されれば、いま家に誰がいるのか、その家の家族構成や生活パターンはどうなっているのかが分かるようになります。そして、その情報はテレビに送られ、スイッチを入れると、いまそこにいるあなたとあなたの家族が共に楽しめそうな番組を紹介してくれるでしょう。
また自動車には100近いセンサーが組み込まれています。この情報から自動車の利用状況や不具合などを知らせてくれるだけでなく、所有者の生活圏や移動時間、丁寧なのか荒っぽいのかといった運転の特性も分かります。そんなあなたの運転の仕方や移動地域の事故の頻度に応じて、自動車保険の料金が変わるかもしれません。また、安全で燃費をよくする運転の仕方もアドバイスしてくれるでしょう。
スマートフォンを持ち歩いていれば、位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)や身体の動きや動作を読み取るセンサーから、その人の日常の生活や行動を知ることができます。さらにウェアラブル端末を身につければ、脈拍や発汗、体温などの身体の状態も知ることができます。そして、その人に趣味嗜好に合った地元のレストランを紹介してくれるかもしれません。あるいは、健康のためのスポーツや食事のアドバイスもしてくれるでしょう。
このように、モノにセンサーと通信機能が組み込まれることで、人の行動や社会活動をデータとして捉え、ネットに送り出す仕組みが出来上がります。これをIoT(Internet of Things)と呼んでいます。つまりIoTは、「現実世界をデータ化しネットに送り出す仕組み」なのです。そのデータを使い、これまでには無かった新たなサービスが生まれつつあります。
「現実世界をデータ化しネットに送り出す仕組み」は、IoTだけではありません。私たちはFacebookやLINEなどのソーシャル・メディアも同様の役割を果たしています。例えば、ソーシャル・メディアを使って写真や動画、自分の居場所の情報、流行や話題、製品やサービスの評判について会話を交わしています。また「友達になる」や「フォローする」ことで、「ヒトとヒトとのつながり」の情報を生みだしています。そのヒトの行動や意見、ヒトのつながり、世の中の関心や世論までもデータ化されています。
IoTやソーシャル・メディアは、私たちの生きるアナログな現実世界をデジタル・データとして捉えネットに送り出す巨大な仕組みになろうとしています。
あらゆるものをつなげる:インターネット
IoTやソーシャル・メディアのデータは、後ほど説明するクラウドに送られます。クラウドには、そのデータを蓄積・分析・活用するための機能が備わっていて、その結果は再び現実世界にフィードバックされます。このようなデータの流れを仲介するのがインターネットです。
インターネットは、企業や通信事業者が所有するネットワークを相互につなげ、それを利用し合うことでデータ通信の設備負担を分散し、利用料金を劇的に引き下げました。その結果、企業、さらには個人をも巻き込み、国や地域を越えた巨大通信ネットワークへと成長してゆきました。
そしていま、安価なPCやスマートフォンの普及により多くのヒトが、またIoTの登場により様々なモノが、インターネットにつながろうとしています。その数は、いますごい勢いで増えています。調査によれば、インターネットにつながる装置は2015年に180億個だったものが2020年には500億個に増えるというのです。
インターネットは、あらゆるヒトやモノをデータでつなげる仕組みとして、世界の隅々に拡がりつつあります。
ビッグ・データを蓄え処理する:クラウド
センサーの数が世界に満ちあふれ、ビジネスのIT化がすすみ、ソーシャル・メディアでの発信がますます増えれば、デジタル・データは膨大な量となります。これが、「ビッグ・データ」です。ビッグ・データは加速度的にそのデータ量を拡大し、音声や動画、いろいろな国の言葉で書かれた文章や多様なセンサー・データなど、様々な形式のデータが集まってきます。
このビッグ・データを保管し、活用するためには、膨大なデータの保管場所や計算処理能力が必要です。その役割を引き受けてくれるのが「クラウド・コンピューティング」です。「クラウド」と略して使われることもあります。
クラウドは、コンピューター機器を多くのユーザーとシェアして利用する仕組みです。個人があるいは企業が自分のためだけに占有するのではなく、多くの利用者と共同利用して利用コストを大幅に引き下ようという仕組みです。これにより、インターネットがデータ通信のコストを劇的に引き下げたように、クラウドはデータの保管や処理のコストを劇的に引き下げました。
その結果、これまではお金がかかるのでコンピューターを使うことがためらわれた業務やサービスに使ってみようという気運が高まりました。そして、インターネットと相まって利用する人たちの裾野を大きく拡げてきたのです。まさに、インターネットとクラウドの登場により、これまでのIT利用の常識が変わってしまったと言っても言い過ぎではないでしょう。
豊かで便利な社会を実現し人間の役割を変える:人工知能とロボット
膨大な「ビッグ・データ」を溜め込むだけでは何の役にも立たず、ただ巨大なデータのゴミ箱と化すだけです。一体そこに何があるのかを解釈しなければなりません。言葉を理解し、写真に何が写っているかを判断し、人々の行動や発言にどのような関係があるのかを理解しなければならないのです。しかし、そのデータ量は膨大です。人海戦術で人間が読み解き解釈を加えるなどということはできません。だから「人工知能(AI : Artificial Intelligence)」が注目されるようになりました。
例えば、日本語でのやり取りされる会話なら、その意味や文脈を理解しなければなりません。写真や動画であれば、そこに何が、誰が写っているかを読みとらなければなりません。さらに、誰と誰がどの程度親しいのか、商品やサービスについてどのような話題が交わされ、どう評価されているのかといった解釈も必要です。このようなことをビッグ・データの中から見つけ出してくれるのが人工知能です。
人工知能によって解釈され生みだされた有益な知識は、様々な業務システムで使われます。例えば、オンライン・ショップで買い物をするとき、その時々の流行や購入者の趣味嗜好から、「是非とも買いたい」と思わせる商品を紹介することができます。また、オンライン・アルバムに写真を保存すれば関連のありそうなジャンル毎に自動整理してくれたりもします。他にも、様々な用途で人工知能の活躍が期待されています。
- 膨大な医療データを学習して治療方法を見つけ出し医師にアドバイスする。
- 複雑な機械の故障原因をいち早く見つけ解決方法をサービス員に教える。
- ひとりひとりの生活習慣に合わせた予防医療やオーダーメード型医療サービスを提供する など
さらに人工知能は、ロボットにも組み込まれ現実世界をより便利なものにしてくれます。例えば、
- 運転手を必要とせず人間や荷物を運ぶ自動車や無人航空機であるドローン
- 基本的な動作を教えれば自分で技を磨く産業用ロボット
- 倉庫での荷物の上げ下ろしやトラックへの積み込みをしてくれるロボット
- 危険な災害現場でセンサーを駆使して用救助者を探し助け出してくれるロボットなど
が使われることになります。他にも建設現場や介護を支援したり、買い物や身の回りの世話を手伝うなどの生活支援をしたりなど、様々なロボットが使われようとしています。
ロボットは、クラウドからインターネットを介して知識の提供をうけ、自らの能力を高めてゆきます。さらに、周囲の人の動きや周辺環境をデータとして取り込み、自身に組み込まれた人工知能によって、人間の操作を受けることなく自律的に動作します。
これまでのITは情報を処理し、その結果をディスプレーに表示してヒトに伝え、その情報を使ってヒトが判断し行動していたのです。しかし、ロボットは自らがセンサーを使って情報を収集し、人工知能を使って分析・判断して行動します。さらに、インターネットを介してクラウドとつながり、クラウドにある強力な情報処理能力を使って、高い知的能力と仕事をこなす能力を持つようになります。
これまでもロボットは工場でのもの作りや倉庫での運搬など、いろいろなところで広く使われてきました。しかし、人間が与えた手順どおりの仕事をこなすものがほとんどでした。しかし、これからのロボットは、人工知能を使ってまわりの状況を自分で見極め判断し行動する自律的なロボットへと進化してゆきます。そして、これまでの人間にしかできなかったような高度な仕事をこなし、人間と協調しながらいっしょになって仕事をしてくれるようになります。
このように「人間にはできなかったこと」ができるようになり、私たちの生活はより豊で快適なものになるでしょう。ただ、一方で、「人間にしかできなかったこと」が人工知能やロボットにおきかえられることで、ヒトの役割や仕事の内容が変わってしまうことも懸念されています。
現実世界とサイバー世界が一体となって機能する:サイバー・フイジカル・システム
IoTやソーシャル・メディアによって「デジタル・データ化された現実世界(physical world)」は、インターネットを介して、時々刻々の変化をクラウドに送り出しています。このデジタル・データを受け取り処理するクラウドやそこにつながる一連の仕組みは「サイバー(電脳)世界(cyber world)」と呼ばれています。このサイバー世界と現実世界がデータをやり取りし、ビジネスの効率や質を高め、人々の生活を豊かにしようという仕組みが出来上がりつつあります。これを「サイバー・フイジカル・システム(Cyber-Physical System)」と呼んでいます。
サイバー世界には現実世界の出来事や状態が膨大なデータとして送り込まれます。このデータを使って「現実世界のデジタル・コピー」が作られてゆきます。これを人工知能で分析すれば、個人の趣味嗜好、行動特性を理解することができます。さらに、膨大な人数の人間行動や社会での出来事を分析し、未来を予測することもできるようになるでしょう。
例えば、
- 運送業務であれば道路状況やトラックの運行データを分析し、無駄のない最適な輸送経路や配車計画を作ります。
- 工場であれば個別仕様の注文を最も短納期・低コストで作る手順や設備の最適な組合せを提案することができるようになります。
- 大災害が起きたことを想定し、デジタル・コピーの中で道路を寸断し火災を起こすことができます。そのときどのように避難すればより多くの人命を救えるのか、少しでも被害を少なくするためにはどのような対策が有効かを試行錯誤で試してみることができます。
つまり、現実世界では決してできない様々な実験を、「現実世界のデジタル・コピー」を使って何度も繰り返しシミュレーション(模倣実験)し、現実世界を動かすための最適な答えを見つけることができるようになるのです。
インターネットにつながるモノの数は増加し、ソーシャル・メディアでのやり取りもますます盛んになってゆくでしょう。そうなれば、データはさらに増え、きめ細かくなってゆきます。これによって、より精度の高い現実世界のデジタル・コピーがサイバー世界に築かれてゆきます。それを使ってさらに正確な予測や最適な計画、アドバイスができるようになるでしょう。その情報を利用して現実世界が動けば、その変化は再びIoTやソーシャル・メディアによって取得されサイバー世界にフィードバックされます。いま、そんなサイクルが作られようとしているのです。
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