お客様を感動させられる提案の描き方
「あの会社はこちらが言ったことはやってくれるのですが、あちらからの提案はありません。こちらが頼んだことは、それが一番良いやり方なのかどうか、こちらとしても意見を聞きたいのですが、それさえもありません。」
あるユーザー企業の情報システム部門長から、そんな愚痴を聞かされた。
先日、その方からの依頼で、その会社の方たちとの打ち合わせに同席することとなった。データーセンターに預けている自前のサーバーやストレージをパブリッククラウドに移したいというユーザーの依頼に対して、提案を持ってゆくという。
私は彼らの提案を聞いて驚いてしまった。どう考えても費用がかかりすぎる。そもそも、既存システムを移行するわけで、アプリケーションに新たな付加価値が加わるわけでもない。それなのに、そんな金額をユーザーが納得するはずのないことは容易に想像できる。
「なぜ、こんなに費用がかかるのですか?」
そのシステム部門長は当然の質問をした。
「既存のシステムを移したいというご要望でしたから、同じ台数の仮想マシンを起ち上げ、その作業費用を積み上げてみるとこのようになりました。」
なるほど、それは当然の結果だと思った。しかし、もう少し知恵を使えないのだろうか。
既存のシステムは数年前に構築されたため当時の技術や製品で構成され、運用管理の仕組みもそのままだ。新しい技術や製品を組み合わせればもっとシンプルになる。クラウドが提供する様々なサービスを仕えばもっと運用費用を抑えられるのではないか。また、全てを定額インスタンスにする必要があるのだろうか。稼働率のデータがあるのだから、そのあたりを見直せばコストは抑えられるではないか。そんなことを質問してみると次のような答えが返ってきた。
「既存のシステムを移行したいと言われたので、構成や運用を変えてはいけないと思いましたので・・・」
ユーザーが求めているのは「移行」することではない。「移行」の結果、設備に関わる費用を減らし、運用管理負担を減らしたい。特にストレージに関しては年々劇的にコストパフォーマンスが改善しているわけで、所有してしまえばそのメリットを享受できない。新たなアプリケーションを追加するにもその都度設備投資が必要な現状を改善したい。そんなこんなの「あるべき姿」を実現したいと考えている。ならば、その「あるべき姿」いいかえれば、「結果として実現したいこと」をまずは明らかにして、「ならばこういう方法ではどうでしょうか」と持ってくるのが当たり前のことではないのだろうか。
あるいは、「既存システムをそのまま持っていってもメリットは得られないので、いま無理して移行せず、クラウドでメリットがでるやりかたを改めて考え、アプリケーションや運用管理の方法も見直すことからはじめませんか。」と提案しても良いはずだ。
同じサーバー構成である必要も無ければ、運用のやり方も同じにする必要などない。「あるべき姿」を実現する一番良い方法を提示することが、相手の期待していることだ。
そもそも、彼らは「あるべき姿」をどう考えていたのだろうか。自分たちの工数規模を減らさないこと、これまで請け負っていた運用業務の工数を減らさないことが「あるべき姿」だったのだろうか。
確かに新しいやり方で効率を高めれば、仕事の工数は減る。自分たちだけでできないこともあるだろう。それでも、「あるべき姿」を追求することだ。なぜなら、それが相手の幸せだからだ。それを提案できれば、また次にも仕事をお願いしたいと思うはずだ。たとえこれまでの仕事は減っても、結果として、新しいことでの仕事を増やしてゆくことができるだろう。
まず「あるべき姿」を明らかにして、それをお客様と合意すること。そして、その「あるべき姿」を実現する一番良い方法を考えることだ。お客様が感動する提案とは、そんな手順を経て描くものだと思う。
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- 従来の機械学習とディープラーニングの違いを図表に組み込みました。p.149-150
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