アウトプットに悩み、インプットのモチベーションも沸かないと嘆いているのなら、まずはアウトプットしてみることだ
「どうしたら、そんなに沢山のアウトプットが作れるんですか?」
「インプットを増やすこと。それに尽きると思うよ。」
「じゃあ、どうしたらインプットを増やせるんですか?」
「それは、徹底的にアウトプットすることだね。」
禅問答のような話だが、両者はそんな関係にあることは間違えない。
たぶん多くの人が経験していることだと思うが、本を読めば、あるいはセミナーやイベントで話を聞けば、新しいことを知り、新たな気付きも得られるだろう。しかし、それは果たして自分の知識と言えるだろうか。整理する前のノートやメモを机に積み上げておくようなもので、いつか忘れてしまうだけだ。
また、本を読む、人の話を聞くにしても前提となる知識、あるいは、何らかの知識の枠組みがなければ、記憶にも残らない。つまり何が幹で、何が枝葉なのかを判断できないままに、メモさえも残せないこともあるだろう。
私は、そんなときに次のようなことを考える。
「この内容を他人に分かるように伝えるには、どう表現すればいいのだろうか。」
そんなことを考えながら、資料を読み、人の話を聞き、頭の中で自分なりの説明方法を考える。「他人に分かるように」が特に大切だ。自分だけが分かる表現やイメージではダメだ。他人にもわかりやすくなくてはならない。そんなことを考えながら話を聞いていると、幹と枝葉が少しずつ見えてくる。物事の本質が見えてくる。これは、単に受身としての読書や聴講ではなく、自分からとりにゆくインプットであり、これまでの自分の知識との連携作業とも言えるだろう。
そして、近くにあるノートや裏紙に、思いついたセリフやチャートを走り書きをする。そんなことを繰り返すうちに、これまでの自分の知識や以前聞いた話がつながりはじめ、そして再びセリフやチャートを書き直す。気がつけば、「なるほど!そういうことだったのか。」ということになる。
アウトプットを意識しながらインプットをとりにゆくことを私は「アウトプット思考」と呼んでいるが、インプットとアウトプットを一体化させる私なりのやり方だ。
そうやって描いたメモやチャートを講演資料やブログ用に書き起こす。もっとわかりやすく、もっと美しくと、アウトプットの完成度を上げようと試みると、改めて曖昧であったことや論理的な矛盾に気付かされることがある。「わかりやすく、美しく」を追求してゆくというのは、自分の知識の欠落を探す取り組みでもある。改めて資料やメモを読み返し、新たな情報を探して、その欠落を埋めなくてはならない。そういう行為が結果として知識の定着につながってゆく。
以前にもプログに書いたが、「美しい」資料は、相手のためでもあるが、何よりも自分の理解のレベルを客観的に評価する尺度だ。つまり、「美しい」は「理解している」と同義語なのだ。「美しい」という感覚はとても主観的なものであって、自分がそう思っても他人がそう思わないこともある。それは仕方の無いことだが、少なくともいまの自分にとって「美しい」を「理解している」を客観的に評価する最低限の基準として持ち続けることは必要だろう。言い換えれば、自分でも「汚い」と思う資料は、自分でも理解できていないし、相手にも伝えられない。世の中には、「中身が肝心」といって説明資料を適当に仕上げてしまう人もいるが、それは自分の曖昧さや矛盾をごまかす行為に過ぎない。
万人が受け入れてくれるであろう「美しい」を追求し、自分もそれを「美しい」と感じられるように試行錯誤を繰り返しながら感性を磨いてゆ苦ことも大切だろう。それは、内に秘めていてもできることではなく、自らアウトプットの場を作ることで実現する。例えば、打ち合わせでの発言やお客様への提案、勉強会やブログなどといった機会を自分で作り、他人の目に晒すことだ。それがアウトプットというものだ。そうすれば、いろいろなコメントや批判に晒される。それをまずは素直に聞き入れ、斟酌し、自分の美しさを磨く砥石にすればいい。
だだ、黙々と読書にふけることや話を聞くことがダメだというわけではない。そうやって、自分の中に潜在的な知識の広がり、あるいは概念の形成とでも言うか、混沌で曖昧な世界を拡げることは、大切なことだろう。それは、疑問や好奇心といったインプットのエネルギーを生みだす燃料になる。また、アウトプットをしようとするときインプットされた知識の断片をつなぎ合わせる接着剤の役割も果たす。
ただ、ビジネスの現場ではアウトプットすることが優先されるべきではないかと思っている。アウトプットしなければ、ビジネスにおいては自分の存在を証明できない。そして、アウトプットすればするほど、以降使える知識は枯渇する。一度使ったネタはそう何度も使えないと言うことだ。さらに曖昧や矛盾を思い知らされるから、インプットへのモチベーションが高まる。
アウトプットに悩み、インプットのモチベーションも沸かないと嘆いているのなら、まずはアウトプットしてみることだ。「カタチからはじめる」のだ。一生懸命勉強してからアウトプットするのではなく、アウトプットというカタチを作って、恥を掻き、己の未熟を人前に晒すこと。そうすれば、インプットへのモチベーションは高まり、インプットは増やさなくてはと思うようになるだろう。そうやって、知識というものは、自分の身体の一部になってゆく。
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