商談で行き詰まっているあなたのために、その解決策をお伝えしましょう
「お客様は、1000万円程度の予算を考えているのですが、こちらの提案は、3000万円。あまりにも開きがありすぎて、話しになりません。どうすればいいのでしょうか?」
ある営業さんからこんな相談を受けました。金額だけ見ると、国産コンパクト・カーを買いたいというお客様に高級外車を提案しているようなもので、そもそもそんな案件が成り立つとも思えません。しかし、話しを聞いてみると、そうともいえないようでした。
「お客様は、うちの製品の機能が、これからやろうとしていることに必須と考えていらっしゃるようです。他社製品や自分たちの開発では、できないとおっしゃってるんです。」
私は、彼に次のような質問をしました。
「ところで、お客様はその機能をつかって、何をしたいんだろう。確かに、その機能が優れていること、他社の製品にはないこと、自分達で作ることも容易ではないこと。それは良く分るけど、所詮その機能は何かを実現するための手段に過ぎない。それを使って、お客様は何を実現したいのだろうか?」
彼は、自分にもよく分らないし、窓口となっているシステム担当の方もはっきりしていないとのことでした。そこで次のような話しをしました。
「もし、コスト削減を考えているとすれば、いくらをいくらに削減したいのですか?それが明確でなければ、1000万円が妥当なのか3000万円が妥当なのか、お客様にもあなたも判断できないじゃないですか。」
彼はなるほどと納得し、顔がパッと明るくなり、「確認します!」と声を出しました。そんな彼に、私は次のような質問をしました。
「どうやって確認するんですか?あなたが売り込んでいる相手であるシステム担当者も知らないのなら、聞いても答えは期待できないですよ。」
再び暗い顔になりました。
「そもそも、このシステムを必要としている事業部門の責任者は、効果目標を明確に設定しているのでしょうか。もし、はっきりさせていないとすれば、どれほどの効果を期待されているのかを聞いたところで、答えてはもらえないでしょう。」
では、どうすれば、いいのでしょうか。
「お客様の業務の流れは分っている。今のシステムの使われ方も分っている。ならば、あなたが提案している製品を使ったら、業務の流れがどのように変わり、どの程度の効果が期待できるかをこちらで考えて、相手に確認してもらったらどうだろう。」
彼は、正確な情報をつかめていないから無理だというのです。
「完全な正解を出す必要なんかありません。大切なことは、お客様とあなたとの間で、この製品を利用することの価値をどのように確認するか、そのための基準や考えの枠組みを共通にすることです。そうすれば、お客様は何に答えればいいのか分るし、わかっていなければ、そのことに気付かれるはずです。彼もまた、何をすべきか理解できます。お客様にとっても価値のある話ですよ。」
「もし、あなたの窓口となっている人が分らなければ、分る人を紹介してもらったらどうですか。そして、彼に何を求めているかを確認する。この金額の差が、埋められないものなのかどうかは、それが明らかにならない限り、なんともいえないと思いますよ。」
再び、納得した顔で、「やってみます」という返事が返ってきました。
営業の役割は、「結果としてこうなりたい」という「あるべき姿」へ、お客様を導く仕事です。どのような手段を使うのか、それにいくらの費用がかかるのかは、その「あるべき姿」次第でです。お客様が、「あるべき姿」を明確に描けていないとすれば、それを描く事を手伝うのも営業の仕事です。そこがはっきりしなければ、何が適正な手段であり費用なのかが分からないままです。まともな提案などできるはずはありません。
営業活動は、「あるべき姿」を明らかにし、それをお客様と合意することが起点です。たとえ費用や手段が、お客様の想定の範囲内であったとしても、それが「あるべき姿」の実現にとって、本当に最適な手段と言えるのでしょうか。「あるべき姿」が分からないままに、自分の知識と経験の範囲でなんとなくの答えを無理やり出したとしても、のちのち「そんなはずではなかった」、「なんで、こんなことができないの」といった不満や混乱を引きずることになるだけです。
営業の仕事とは、お客様の期待する「あるべき姿」を最大のコストパフォーマンスで実現することです。そのためにはまず、お客様の「あるべき姿」を確認し合意することです。
お客様との交渉に行き詰まりを感じたときは、この原点に立ち返ってみてはどうでしょう。さらに進むか、やり方を変えるか、ここで撤退するか。その判断も、はっきりとしてくるはずです。
【募集】ITソリューション塾・第21期 2月9日 開講
次期・ITソリューション塾が、以下の日程で行われます。
次期講義では、企業システムとしてクラウドを活用するための実践的ノウハウ、IoT時代のセキュリティ対策、ビジネス・スピードに対応するためのアジャイル開発やDevOpsなど、皆さんのビジネスに直接関わる実践的な知識をしっかりと盛り込む予定です。是非、ご検討ください。
- 期間 初回2016年2月9日(火)〜最終回4月26日(木) *3月の最終週は年度末のためお休みとなります
- 時間 18:30〜20:30
- 回数 全11回(特別補講を含む)
- 定員 80名
- 場所 アシスト本社/東京・市ヶ谷
- 参加費用 9万円(+消費税)
- 全期間の参加費と資料・教材を含む
「SIビジネスはなくなってしまうのでしょうか?」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2016年1月版】
*** 全て無償にて閲覧頂けます ***
最新版【2016年1月】をリリースいたしました。
今月の目玉は、IoTと人工知能についての記述を大幅に刷新したことと、これからのビジネス戦略について、新たなチャート&解説を追加したことです。是非、ご確認下さい。
*全ての資料(529ページ)は全て無料で閲覧頂けます。
【インフラ&プラットフォーム編】(246ページ)
・見栄えや誤字の修正を行いました。内容の変更はありません。
【アプリケーション&サービス編】(199ページ)
*IoTと人工知能について、大幅に資料を刷新致しました。
IoT
・「IoTとは何か」を新規に追加しました。P.14
・CPS(Cyber Physical System)についての記述を追加、修正致しました。p.17-20
・自動運転車について新たなチャートを追加しました。p.23
・モノのサービス化について新たなチャートを追加しました。p.28
・IoTに関する事例動画を刷新しました。p.49-52
人工知能
・8ページの新規プレゼンテーションを追加し、全体のストーリーを変更しました。p.139-153
【ビジネス戦略編】(84ページ)
・「テクノロジードリブンの時代」を追加致しました。 p.3
・「ビジネスの変革を牽引するテクノロジートレンド」を2016年版に差し替えました。p.4
・「ポストSI時代に求められるスキル」を追加しました。p.5
・社会構造の変革に関する記述を追加しました。p.6-8
・「顧客価値と共創優位」を追加しました。p.9-10