何度言っても行動しない部下を抱えているあなたのために:まずは「カタチ」から入れ
「みんな分かってるはずなんですよ。でも行動につながらない。何度言ってもダメなんですよね。」
ある営業マネージャーが、こんな愚痴をこぼしていた。
これまで稼いできた製品の販売や構築ビジネスの伸びが頭打ちになる中、この会社もサービス・ビジネスへの品揃えを増やしつつある。しかし、営業の第一線は、サービスを売ることに熱心ではないという。
「当然なことだと思いますよ。だって、御社の業績評価は、売上と利益ですよね。サービスを売ったところで、売上と利益にはたいして貢献しないじゃないですか。既存の販売や構築が頭打ちだとは言っても未だ売上や利益の大半を占めているわけですから、自分の評価につながらない仕事をやるわけないじゃないですか。」
「これからはストック・ビジネスを伸ばしてゆきたい」、「新規を開拓しなきゃいけない」、「戦略商品で市場をとりたい」などと天の声が降りてくる。その意味も重要性も理解できる。しかし、「結局は売上と利益でしか評価されないんでしょ」では現場が動くはずがない。
いまはどうか知らないが、私がIBMの営業として現役で働いていた頃は、事業戦略と評価・報酬は一致していた。むしろ、評価・報酬によって、現場の営業を事業戦略の実現のために動かしていたといった方がいいだろう。そのために、営業ひとりひとりのミッションやロールによって評価・報酬のルールがきめ細かく分かれていた。それに従うことによって、今年自分は何をすればいいのかを結果として理解できたとも言える。べき論でもなければ、精神論でもない。叱咤激励はこの仕組みが与えてくれたのだ。
我が国の多くのSI事業者やITベンダーは、ここに悪しき平等主義が入る。「評価基準を変えれば、不平等感が増し、現場の士気に関わる」ということなのだろうが、事業戦略と現場の評価が不一致のままでは、現場を事業戦略の推進力にはできないのは言うまでもないだろう。
「ぐだぐだ言うな!カタチを作れ!」
カタチができれば人はそれに従って行動し、行動すれば人はその意味を悟る。危機感や意識というものは、結果として醸成されるものであり、言葉だけで作られるものではない。まずは形を作ることだ。
例えば、こんなやり方でこれを実践した企業がある。
- ある大手SI事業者は、クラウド・サービスを推進するため、それを担当する営業の業績評価を受注時点で3年分の売上と利益を見込みで計上する。
- 経常利益を営業の評価基準としている大手SI事業者で、データセンターやクラウド・サービスを担当する事業部門は、投資にともなう減価償却費用を本社勘定にして営業の業績評価から切り離した。営業は売れば原価を引かれることなく全て利益として計上される。
- 既存顧客はデリバリー部門の業績になっていたが、そこを担当している営業の業績として評価されることはなく、事務処理役でとして担当させられていたに過ぎなかった。そこで、既存顧客であっても新規の売上については、業績評価の対象とすることで、営業は既存顧客内の新規開拓に力を入れるようになった。
カタチが人を動かす好例と言えるだろう。
「守破離」という言葉がある。千利休が残したといわれる茶道の心得だ。
規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても 本ぞ忘るな
「守」とは先人の築き上げた「型」を守ること。そこには、先人が苦労して成し遂げた経験が、織り込まれている。まずは、これを徹底してまねることで、先人の知恵を自分のものとして会得する。
この「型」を徹底的に守り通した上で、これをあえて破ってみる。自分ならではの工夫で、試してみる段階、それを「破」という。本来を知りつつ、自分なりにそのやり方をあえて破ることで、自分ならではの「型」を求める段階だ。
そして、それを他にも伝えられるほどに洗練させることができたならば、そこには、今までにはない「型」が生まれる。この段階を「離」という。
先人の知恵もまたカタチからはじめることの大切さを説いている。カタチこそ知恵の集大成なのだ。人が自然と動くカタチを作ることが、経営でありマネージメントの土台を作る。
そろそろ、来年度の事業計画を立てられる企業も多いのではないだろうか。きっと、こんなモノを売ろう、こうやって事業を伸ばそうと悩まれている方も多いのではないか。しかし、それをどのように現場のモチベーションに繋げ、かれらを行動に駆り立てるかである。
「絵に描いた餅」、いや、「説明のための計画書」にならないようにするために、そのためのカタチも合わせて計画の中に組み入れてみてはどうだろう。
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今月の目玉は、「オンプレからパブリッククラウドへの移行」について、ドキュメントを追加しています。移行をご検討のユーザー企業・情報システム部門の方は企画書や経営会議の資料として、SIerの方はお客様の提案資料としてご利用頂けると思います。
なお、今月より「テクノロジー編」を「インフラ&プラットフォーム編」と「サービス&アプリケーション編」の2つに分割致しました。(全438ページとなり資料探しに手間がかかるようになったため)
【インフラ&プラットフォーム編】(246ページ)
- ハイブリッド・クラウドについて、各社の取り組みを比較しやすいように資料を作り直しました。P44
- PaaSについての解説をわかりやすく修正しました。p.55-56
- 「パブリッククラウドへの移行の勘所」と「パブリッククラウド移行の企画書・提案書の作り方」の章を新しく追加しました。SIerにとっては顧客提案資料として、また、ユーザー企業の方は経営会議や企画会議の資料としてご利用頂けると思います。p.77-94
【アプリケーション&サービス編】(192ページ)
- 誤字・脱字等を修正しました。内容に大きな変更はありません。
【ビジネス戦略編】(74ページ)
- 「SI事業者の成功要因の変化」を追加致しました。
- 「PEST分析と5フォース分析で見るクラウド化」を追加しました。
- 「事業再構築の逆Cカーブ」と「SIビジネスへの適用」を追加しました。
- 「基幹業務のAWS適用事例」を追加しました。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン