「コレ1枚」の描き方:私流「情報整理術」のご紹介
ヒトに伝えることが仕事の私にとって、1枚の絵にまとめることは、それ自体が仕事です。また、何を、どのように伝えるかを考え、言葉を磨くための訓練でもあります。
このやり方が一番良いかどうかは分かりませんが、試行錯誤の結果として、行き着いた私流「情報整理」の方法が、「コレ1枚」なのです。では、どうやって、描いているのかを、ご紹介しましょう。
情報を収集し記憶にとどめる
テクノロジーやビジネスのキーワードを理解し、整理することは、本業である企業向けの研修や事業戦略策定のコンサルティングを行う上で、欠かすことのできない基礎的な作業です。「コレ1枚」は、そのための情報整理の手段です。
例えば、ユーザー企業のIT施策をまとめなければならない場合、そのお客様に関わる業界や業務について、あるいは、関連しそうなテクノロジーについて、書籍や雑誌、Webサイトを調べ情報収集します。
そして、気になったことは、「手書き」で文字や絵にして、記憶にとどめるようにしています。ここでは、どういうアウトプットを描くかを追求せず「使えそうなネタ」を集めること、そして、自分の記憶にインプットすることが目的となります。
そのとき「手書き」であることは、とても重要です。「手描き」は、自分の理解をカタチにする、簡単、自由な試行錯誤する手段です。その試行錯誤こそが記憶にとどめてくれるのです。
手描きで原稿を作る
殴り書きの汚いメモ書きがある程度そろったところで、アウトプットのイメージを、白紙の上に、やはり手描きしてみます。絵を描く上で最も大切な素材は、先ほど集めた自分の記憶です。その記憶を総動員しながら、箱を並べ、言葉を書き込み、矢印で結んでみます。そして、殴り書きしたメモを見返しながら、記憶を呼び出します。
ああでもない、こうでもないと、ボールペンを使い、描いてはぐしゃぐしゃと消し込み、あるいは上書きしてゆくうちに、自分でも何が描かれているのか分からないくらい真っ黒になってしまいます。そうなったら紙を換えて、また描き直します。そんなことを何回か繰り返す打ちに、「これ、いいかも」という絵が見えてきたら、また新しい紙を用意して、「最終版」を手描きします。
「最終版」を描き終え、改めて見直してみると、改めて気になるところがいくつも見えてきます。そこを手直しして、最終原稿の完成です。
パワーポイントで清書する
今度は、この最終原稿をもとにパワーポイントで描いてゆきます。まずは、全体のレイアウトを描きます。図形はシンプルな四角形をベースに、必要最低限の円や角の丸い四角形をアクセントとして加えることがあります。それらを矢印でつないでレイアウトを完成させます。
図形は、原則として塗りつぶしにしています。そうすることで、図形の存在感を際立たせることができます。ただ、できるだけ原色を避け、中間色や白の入ったパステル系の色をよく使います。目立たせたいときは、原色を組み合わせることもありますが、使いすぎると品のない絵になってしまうので、できるだけ控えめにしています。
図形は、影付きにしています。それは、図形の前後関係をはっきりとさせるためです。これによって、主従や順序といった関係を説明できるようになります。
そこに文字やイラストを入れてゆきます。文字は、原則として「イメリオ」を使い、強調にはそのボールド体を使うようにしています。以前は、MSゴシック系をよく使っていたのですが、すっきりとした美しさという点で、最近はもっぱらイメリオが多くなりました。
図形に文字を入れるときは、図形の色を活かすために原則として白抜き、背景が淡い場合は、少し濃い青や灰色を使うようにしています。黒は、汚く浮き上がってしまうため、できるだけ避けています。背景に文字を入れるときも同じやり方です。
イラストは、できるだけシンプルな図形要素の組み合わせて作るようにしています。灰色の階調に変化を付けて立体感や特徴を描くようにしています。以前は、既存のクリップアートを多用していましたが、デザインの統一感やシンプルさが失われてしまうので、できるだけ自作のイラストを使うように心がけています。
こうやって、描いているうちに手描きの最終原稿よりも、もっとしっくりする表現に巡り会うことがあります。そういうときは、そちらに変更します。また、一旦出来上がっても再度見直し、必要とあれば細部に手を入れて完成です。
文章を書く
絵を描いているうちに基本的なストーリーは出来上がっています。それを頼りにMS Wordで文章を書き始めます。テキスト・エディターでも良いのですが、表現のチェックや校正が容易なので、MS Wordを使うようにしています。
こうやって書き出してみると、理解が曖昧であったことに気付くことがよくあります。そういうときは、資料となった書籍やWebサイトを確認したり、キーワードで検索したりして、裏付けをとるようにしています。
そんなことをしていると、チャートの内容が間違っていたり、不十分に気付いたりすることもよくあります。そのときは、再びチャートを見直し、修正を加え、文章との整合性を確保するようにしています。
文章を書かずにチャートだけで終わらせることもあるのですが、文章を書くとこのようにチャートの誤りに気付いたり、自分の理解を深めたり、確かなものにしてくれますので、できるだけ書くように心がけています。
こうやって、「コレ1枚」が完成します。
言葉についての理解を深めようとするとき、絵を描いてみると、とても助けになることは、誰もが経験されていることではないでしょうか。これをさらに一歩進めて、「誰かにわかりやすく伝えるために」絵を描こうとすれば、思考はさらに深まり、何が幹で何が枝葉かが見えてきます。つまり、ものごとの本質に気付かされるのです。私は、こういうやり方を「アウトプット思考」と呼んでいます。「コレ1枚」もそんな「アウトプット思考」の結果です。
このやり方が、一番良い方法だと申し上げるつもりはありません。それぞれに、もっと自分にあったやり方があるだろうと思います。ただ、もし情報整理の良い方法に巡り会われていないのであれば、こんなやり方も1つの方法として、試されてみては如何でしょうか。自分にふさわしい情報整理のやり方を見つける切っ掛けになるかもしれませんよ。
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目次
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- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン